ユハレイン様(海を越え)
「はあっ、はっ……」
一時間。
立て続けに戦いまくって、ついに妖怪はいなくなった。
相手の空気に飲まれるな、という助言はまさにその通りで、何度も相手の術中に陥り掛けては、超直感に助けられた。
彼は一体どうなっただろう。
荒く息を吐きながらその姿を探す。
少し離れた場所に雷の光が見えた。
あそこにいる。
大空の炎で天高く舞い上がり、彼の元へと急ぐ。
雷の根本、辿り着いた場所には、ボロボロの二人組がまだ戦っていた。
彼のヘルメットは一部が壊されてしまっており、そこから銀色の髪の毛が零れている。
そして彼の死角、背後の建物の角から、別の妖怪が一人、彼に迫ろうとしていた。
思わず彼の名を叫ぶ。
「危ないスクアーロ!後ろだ‼」
「っ‼」
迷わず右に跳んで避けたスクアーロは、間一髪刀が肩を掠めるだけで済んだみたいだ。
彼の隣に着地して、背中合わせになる。
「ほう、逃れたか」
「チッ、しょうけらか……」
「こいつ……!一人であの数を倒してきやがったのか!?……くそ、一旦引くぞしょうけら!」
「ああ」
妖怪達は夜の闇の中に溶けるように消えていく。
気配が無くなったと、超直感が告げるまで、オレも、スクアーロも立ち尽くしていた。
ようやく超直感が身の安全を告げて、オレはズルズルとスクアーロの背中から崩れ落ちる。
というか、思わず叫んじゃったけど……。
「……あ、あのさ。スクアーロ、なんだよね?」
「……」
「オレが知ってるより若いけど……でも分かるんだ!だからあの時、信じてくれたんでしょ!?」
「……超直感がそう言ってんのかぁ?」
「うん。君はスクアーロだ。でも……」
なんで、だ?
ヘルメットを取ったスクアーロは、オレと大して変わらない年頃に見えた。
でも、オレの知ってるスクアーロは成人済み20代の女性で、妖怪なんて縁もゆかりもない人だ。
「沢田、お前がどうやってこんなところに来たのかはわかんねぇ。だがなぁ、せっかくここまで来たんだ。ひとつ、伝言を頼まれてもらっても良いかぁ?」
「へ?伝言?って言うか本当にこれどう言うこと!?」
「ったく、肝心なとこでてめぇは鈍いなぁ。まあいい、ちゃんと伝えてくれよぉ?」
「へ?え?ちょっと……」
悪戯っぽく笑ったスクアーロは、オレの耳元で伝言を呟いた。
……ってそんな恥ずかしいことをオレに言えって!?
「頼んだぞぉ」
「いや勝手に頼まないでよ!」
「それと、お前なかなか陰陽師のセンスあんじゃねぇの?全部物理だったけどよぉ」
「いや陰陽師なにー!?オレそんなの知らないから‼」
「じゃあま、……頑張れ、沢田」
「え、わっ!」
額にキスを落とされた。
完全にガキ扱いされてることに、ちょっと腹が立つ。
見た目は同い年くらいなのに。
でも文句を言おうと顔を上げたとき、目の前にいたのはスクアーロではなく……。
「え?あれ!?獄寺君!山本!」
「じゅ、10代目ぇ~‼」
「ツナ!良かったのなー!」
「わっ!わー!?」
獄寺君は泣きながら、山本は笑いながらオレに抱き着いてきた。
もしかして、元の世界に戻れた……?
「ちゃおっス、ツナ。どうやら無事帰ってこられたみてーだな」
「5分過ぎても帰ってこなかったときにはどうなることかと思ったぜー」
「リボーン!……ディーノさん」
ディーノさんを見てはっとした。
彼に伝えて、とスクアーロは言ってなかったけれど、あれは絶対に、ディーノさんに言いたかった言葉だ。
なんでオレに頼んだのか。
わからなかったけれど、伝えなくてはと思ってディーノさんを呼んだ。
「ディーノさん!あの‼」
「ん?なんだ?」
「『いつまでもずっと想い続けているから』って、スクアーロからの伝言!」
「……へ?」
「なんすかそれ?」
「わかんないけど、10年バズーカで飛んだ先で、オレとおんなじ位の歳のスクアーロに会って……。よくわからないけど、その伝言を頼まれたんだ」
「……それは、不思議な話だな」
あれは一体、何だったんだろう。
スクアーロに会って、その伝言をもらったという証拠はない。
夢でも見ていたかのような、そんな気分だ。
「よくわかんねーけど、ありがとなツナ」
「は、はあ……でもなんでスクアーロはそんな伝言したんだろう……」
「アイツは、無駄なことはしない。大事なことだったんだよ、たぶんな」
「……はい」
にかっと笑ったディーノさんを見て、ちょっとだけ安心した。
スクアーロ、ちゃんと伝えたよ。
心の中であのスクアーロに向けて呟くと、心の中からふぅっと何かが抜けていくような気がした。
あの不思議な場所で、スクアーロはディーノさんのことを想い続けながら、戦い、生きている。
一人で戦っていたけれど、心の中にはちゃんとディーノさんが、仲間達が残っていたはずだから。
「うん、きっと大丈夫」
「ん?なんか言ったのな?」
「何でもない!」
でも次にスクアーロに会ったとき、『何頼んでもねぇ伝言してんだ』と殴られた。
うぅ……理不尽だ……。
一時間。
立て続けに戦いまくって、ついに妖怪はいなくなった。
相手の空気に飲まれるな、という助言はまさにその通りで、何度も相手の術中に陥り掛けては、超直感に助けられた。
彼は一体どうなっただろう。
荒く息を吐きながらその姿を探す。
少し離れた場所に雷の光が見えた。
あそこにいる。
大空の炎で天高く舞い上がり、彼の元へと急ぐ。
雷の根本、辿り着いた場所には、ボロボロの二人組がまだ戦っていた。
彼のヘルメットは一部が壊されてしまっており、そこから銀色の髪の毛が零れている。
そして彼の死角、背後の建物の角から、別の妖怪が一人、彼に迫ろうとしていた。
思わず彼の名を叫ぶ。
「危ないスクアーロ!後ろだ‼」
「っ‼」
迷わず右に跳んで避けたスクアーロは、間一髪刀が肩を掠めるだけで済んだみたいだ。
彼の隣に着地して、背中合わせになる。
「ほう、逃れたか」
「チッ、しょうけらか……」
「こいつ……!一人であの数を倒してきやがったのか!?……くそ、一旦引くぞしょうけら!」
「ああ」
妖怪達は夜の闇の中に溶けるように消えていく。
気配が無くなったと、超直感が告げるまで、オレも、スクアーロも立ち尽くしていた。
ようやく超直感が身の安全を告げて、オレはズルズルとスクアーロの背中から崩れ落ちる。
というか、思わず叫んじゃったけど……。
「……あ、あのさ。スクアーロ、なんだよね?」
「……」
「オレが知ってるより若いけど……でも分かるんだ!だからあの時、信じてくれたんでしょ!?」
「……超直感がそう言ってんのかぁ?」
「うん。君はスクアーロだ。でも……」
なんで、だ?
ヘルメットを取ったスクアーロは、オレと大して変わらない年頃に見えた。
でも、オレの知ってるスクアーロは成人済み20代の女性で、妖怪なんて縁もゆかりもない人だ。
「沢田、お前がどうやってこんなところに来たのかはわかんねぇ。だがなぁ、せっかくここまで来たんだ。ひとつ、伝言を頼まれてもらっても良いかぁ?」
「へ?伝言?って言うか本当にこれどう言うこと!?」
「ったく、肝心なとこでてめぇは鈍いなぁ。まあいい、ちゃんと伝えてくれよぉ?」
「へ?え?ちょっと……」
悪戯っぽく笑ったスクアーロは、オレの耳元で伝言を呟いた。
……ってそんな恥ずかしいことをオレに言えって!?
「頼んだぞぉ」
「いや勝手に頼まないでよ!」
「それと、お前なかなか陰陽師のセンスあんじゃねぇの?全部物理だったけどよぉ」
「いや陰陽師なにー!?オレそんなの知らないから‼」
「じゃあま、……頑張れ、沢田」
「え、わっ!」
額にキスを落とされた。
完全にガキ扱いされてることに、ちょっと腹が立つ。
見た目は同い年くらいなのに。
でも文句を言おうと顔を上げたとき、目の前にいたのはスクアーロではなく……。
「え?あれ!?獄寺君!山本!」
「じゅ、10代目ぇ~‼」
「ツナ!良かったのなー!」
「わっ!わー!?」
獄寺君は泣きながら、山本は笑いながらオレに抱き着いてきた。
もしかして、元の世界に戻れた……?
「ちゃおっス、ツナ。どうやら無事帰ってこられたみてーだな」
「5分過ぎても帰ってこなかったときにはどうなることかと思ったぜー」
「リボーン!……ディーノさん」
ディーノさんを見てはっとした。
彼に伝えて、とスクアーロは言ってなかったけれど、あれは絶対に、ディーノさんに言いたかった言葉だ。
なんでオレに頼んだのか。
わからなかったけれど、伝えなくてはと思ってディーノさんを呼んだ。
「ディーノさん!あの‼」
「ん?なんだ?」
「『いつまでもずっと想い続けているから』って、スクアーロからの伝言!」
「……へ?」
「なんすかそれ?」
「わかんないけど、10年バズーカで飛んだ先で、オレとおんなじ位の歳のスクアーロに会って……。よくわからないけど、その伝言を頼まれたんだ」
「……それは、不思議な話だな」
あれは一体、何だったんだろう。
スクアーロに会って、その伝言をもらったという証拠はない。
夢でも見ていたかのような、そんな気分だ。
「よくわかんねーけど、ありがとなツナ」
「は、はあ……でもなんでスクアーロはそんな伝言したんだろう……」
「アイツは、無駄なことはしない。大事なことだったんだよ、たぶんな」
「……はい」
にかっと笑ったディーノさんを見て、ちょっとだけ安心した。
スクアーロ、ちゃんと伝えたよ。
心の中であのスクアーロに向けて呟くと、心の中からふぅっと何かが抜けていくような気がした。
あの不思議な場所で、スクアーロはディーノさんのことを想い続けながら、戦い、生きている。
一人で戦っていたけれど、心の中にはちゃんとディーノさんが、仲間達が残っていたはずだから。
「うん、きっと大丈夫」
「ん?なんか言ったのな?」
「何でもない!」
でも次にスクアーロに会ったとき、『何頼んでもねぇ伝言してんだ』と殴られた。
うぅ……理不尽だ……。