夏目鬼灯様その2(群青×)

●一回戦 スクアーロ VS XANXUS



真っ白な空間に立ち込めた土煙(どこに土があったのかは謎だ)が晴れるより早く、ぼふっと煙の中からスクアーロが飛び出してきた。

「おーっと!スクアーロ選手、あのXANXUS選手の憤怒の炎を至近距離で当てられたにも関わらず無事!無事です!!
解説の沢田さん、どう思われますか?」
「どうもこうもないよ!
オレ解説じゃないし!
つーかあの炎でよく無事だったよね!?」
「なるほど、どうやらこの勝負、予想以上に接戦となりそうですね。」
「今のどこになるほど要素があったの!?」

二人のコントは端に置いておき、スクアーロは煙の中から現れて、再び銃口を向けてきたXANXUSに顔を青くした。

「何で突然攻撃してきてんだよザンザス!!」
「オレが肉を食おうとしたら肉がなくなり、テメーがいた。
犯人はテメーかカス。」
「お前飯の最中にここに連れてこられたのかぁ!?
つーかオレは盗んでねぇ!無実だぁ!!」
「……クフ、今のわかりましたか?」
「日本語でおK。」
「クフフ、XANXUS、その白髪頭を倒せば肉は手元に戻ってきますよ。」
「理解した。
カッ消えろカスザメ。」
「何を理解させやがった六道ぉお!!」

コォ……とXANXUSの手元に赤い炎が宿り、スクアーロに向けて憤怒の炎が射出される。
スクアーロは慌てて横に跳んでギリギリでそれを避けた。
先程もその優れた反射神経を駆使して逃げおおせたのだろう。
しかしいくら彼女の逃げ足が早かろうと、XANXUSの憤怒の炎から逃げるのは難しい。
なんと言ったって憤怒の炎の攻撃は、スピード、威力、範囲、全ての分野で優れている。

「ちょ……ゔお゙ぉおおお!!!??」
「くたばれ!肉の為に!!」
「嫌だ!お前の為にくたばるならまだしも肉の為にくたばるのは嫌だぁ!!」

スクアーロも必死で逃げている。
だがXANXUSの一声によって彼女の足は簡単に止まったのだった。

「おすわり!」
「ぎゃぅん!?」

走っている途中で突然スクアーロが飛び上がって、宙に浮いたまま正座の姿勢をとる。
そのままの姿勢で地面を滑って止まった、その直後……。

「そのまま待て、だ……!」
「え……ちょっマジかゔぉお゙!!?」

当たり前だが、動きを止めたスクアーロを真っ赤な炎が襲う。

「来ました!読者の皆様、お待ちかねの展開ですよ!!」
「実況者はもうちょっと公平に実況してよ!
てかスクアーロが死んじゃう!!」

迫る炎に覚悟を決めて、スクアーロは顔の前で手をクロスさせ、雨の炎で全身を覆う。
これでギリギリ……!ギリギリで死なずに済むはずだ。
ぎゅっと目をつむり炎の攻撃を待つ……。
しかし、痛みも熱さもスクアーロを襲うことはなく、彼女の耳には代わりに、骸達の驚く声が聞こえてきた。

「な……!なんで良いところで……!!」
「良いところってどこが!?
って言うかどうしたんだろ、XANXUS……?」

え?っと思って目を開け、前を見たスクアーロはハッと息を飲む。
すぐ近くにはXANXUSが来ていた。

「な……今度は何……」
「黙れ。」
「お、おう……。」

言われた通りに黙って、緊張したような顔でXANXUSに視線を向ける。
そんな彼女に手を伸ばしたXANXUSは、突然額の前で手を構えると、バヂリコン!っと物凄い痛そうな音を出しながら彼女にデコピンをしたのだった。

「っ~~っ!~っっ!」
「オレの勝ちだ。
肉を返せ。」
「今凄い音鳴ったけど!?
スクアーロが無言で転がりまくってんだけどーっ!!!」
「……チッ、納得はいきませんが、契約不履行は術士の恥……。
仕方ありません、返してあげましょう。」
「オレ骸の価値観がわからない!
と言うか、スクアーロまだ痛がってるんですけど!」
「クフフ、ザマァないです。」

骸が手を一振りすると、途端にXANXUSの姿が溶けるように消えていく。
一体どんな能力を使っているのか、スクアーロにも綱吉にもまるで検討がつかない。
1分ほどして、ようやく復活したスクアーロは、涙目のままフラフラと綱吉に近付き、こそりと耳元で問い掛ける。

「お゙い!何なんだよさっきのは!?」
「オレも知らないよ!
なんか骸の奴、異様に張り切ってるし……。
次は何が起こるかわからないから、スクアーロ気を付けて……」
「クフフ、どうやら次の対戦相手が気になるようですねぇ、沢田綱吉。」
「「ぎゃぁあ!?」」

こそこそと話す二人の間に、突然骸が割って入ってくる。
叫んで飛び退いた二人を尻目に、骸はカメラ目線で明るく言い放ったのだった。

「1回戦スクアーロ VS XANXUSはXANXUSの圧倒的勝利と言う輝かしい結果に終わりました!」
「輝かしくねぇだろうがぁ!」
「と言うかどこ見て言ってるの!?
ねぇ、どこ見てるの骸!?」
「2回戦はまさかのこの人!
スクアーロVSレヴィ・ア・タン!!」

こうご期待です!と言った骸の背後で、再び誰かが落ちてくる音。

「ぐは……ボ、ボス……オレは肉など盗んでいない……。」
「既に瀕死じゃねぇかぁ!」
「ザ、XANXUS VS レヴィ……XANXUSの勝利……。」
「がふっ……。」

2回戦、スクアーロVSレヴィ戦は、スクアーロの不戦勝となったのであった……。
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