鴇様(群青)
「名前は?」
「王子お前なんかと話さない」
「何処から来たぁ?」
「しし、下民が一端の口きいてんじゃねーよバーカ」
「……何故ヴァリアーに侵入したぁ?」
「お前王子の話きーてる?」
数十分後、オレは個室で少年と二人、向かい合って話そうと試みていた。
まあ、少年は口ごたえするばかりで、とても話にはならなかったが。
「なあ、それよりさっき王子のナイフ弾いた技教えろよ!しし、それ身に付けて今度はお前のこと殺してやる!」
「……知りたいかぁ?」
「知りたい!」
この少年、ほんの一時間にも満たない間に、精鋭揃いのヴァリアー隊員達、十数名を負傷させている。
ヒットアンドアウェイの戦法は、粗削りだし単純だが、有効でかつ少年の戦闘方法によく合っている。
まあやられた隊員達が弱かったっつー可能性は大いにあるわけだが、それについては過酷なトレーニングメニューを与えてやることで解決するだろう。
……もしかしたらアイツら、トレーニングが嫌でオレに報告を上げなかったのか?
それはそれで、根性鍛え直してやらなけりゃならないと思う。
「……1つ提案があるんだが」
「は?」
提案を持ち掛けたオレに、少年は首を傾げて返してくる。
こういうとこだけ見てれば、愛嬌のある少年だと思うのだが。
「ヴァリアーに来ねぇかぁ?そうしたら、オレがお前に、面白い技たくさん教えてやる」
「……なんで王子がこんなとこに入んなきゃなんねーんだよ。しし、悪いけど王子、嫌なことはぜってーしねーからっ!」
「あっ、おい!」
そう言い捨てて、少年はイスから飛び降りて駆け出した。
扉を開けて出ていく少年に、オレは大きくため息を吐く。
まずいな、今外にはアイツがいるって言うのに……。
「うわぁ!?」
予想通り聞こえてきた悲鳴に、慌ててドアを抜けて隣の部屋へと出る。
部屋の中には、少年の首根っこを詰まんで持ち上げている、ザンザスの姿があった。
「カス……何だこれは」
「……子どもだぁ」
「…………お前のか?」
「ちげぇ!アホかぁ!!どこの子どもか知らねぇが、勝手に侵入してきた上に、隊員を十数人負傷させたぁ」
「……ふん」
「一応聞くがぁ、どうする?育てりゃあなかなか使えそうな奴だが」
「勝手にしろ」
「わかったぁ」
勝手にしろってこたぁつまり、殺さないってことだ。
無造作に投げてきた少年を受け止めて抱え、執務室を出ていくザンザスを見送った。
ちなみにオレがこいつと話していたのは補佐官執務室。
普段はオッタビオが使っているのだが、今は丁度いないから借りていたのだ。
「……し、しし。あいつ、なに?」
「ここのボスだぁ。オレの主……一番偉い奴」
「お前よりも強いの?」
「強い。当たり前だろぉ」
「じゃあアイツと遊んだ方が強くなれる?」
「……やめとけぇ。遊びじゃ済まなくなる」
ナイフの1つでも投げようもんなら、途端にチリ1つ残さずカッ消されて終わりだ。
少年を地面に下ろしてやり、自分もしゃがんで視線を合わせる。
「無理にうちに入隊しろとは言わねぇが……、うちに入ればお前を強くしてやる。どうだぁ、入るかぁ?」
「……んー、ま、良いぜ。あんたもまーまー強そうだしな。しししっ!」
……イラっと、イラっとした。
だが子ども相手に怒るわけにもいかなくて、ただただ、大きくため息を吐いて気持ちを収めた。
そんなこんなで、その少年、ベルフェゴールは、ヴァリアーへと入ることになったのだった。
「王子お前なんかと話さない」
「何処から来たぁ?」
「しし、下民が一端の口きいてんじゃねーよバーカ」
「……何故ヴァリアーに侵入したぁ?」
「お前王子の話きーてる?」
数十分後、オレは個室で少年と二人、向かい合って話そうと試みていた。
まあ、少年は口ごたえするばかりで、とても話にはならなかったが。
「なあ、それよりさっき王子のナイフ弾いた技教えろよ!しし、それ身に付けて今度はお前のこと殺してやる!」
「……知りたいかぁ?」
「知りたい!」
この少年、ほんの一時間にも満たない間に、精鋭揃いのヴァリアー隊員達、十数名を負傷させている。
ヒットアンドアウェイの戦法は、粗削りだし単純だが、有効でかつ少年の戦闘方法によく合っている。
まあやられた隊員達が弱かったっつー可能性は大いにあるわけだが、それについては過酷なトレーニングメニューを与えてやることで解決するだろう。
……もしかしたらアイツら、トレーニングが嫌でオレに報告を上げなかったのか?
それはそれで、根性鍛え直してやらなけりゃならないと思う。
「……1つ提案があるんだが」
「は?」
提案を持ち掛けたオレに、少年は首を傾げて返してくる。
こういうとこだけ見てれば、愛嬌のある少年だと思うのだが。
「ヴァリアーに来ねぇかぁ?そうしたら、オレがお前に、面白い技たくさん教えてやる」
「……なんで王子がこんなとこに入んなきゃなんねーんだよ。しし、悪いけど王子、嫌なことはぜってーしねーからっ!」
「あっ、おい!」
そう言い捨てて、少年はイスから飛び降りて駆け出した。
扉を開けて出ていく少年に、オレは大きくため息を吐く。
まずいな、今外にはアイツがいるって言うのに……。
「うわぁ!?」
予想通り聞こえてきた悲鳴に、慌ててドアを抜けて隣の部屋へと出る。
部屋の中には、少年の首根っこを詰まんで持ち上げている、ザンザスの姿があった。
「カス……何だこれは」
「……子どもだぁ」
「…………お前のか?」
「ちげぇ!アホかぁ!!どこの子どもか知らねぇが、勝手に侵入してきた上に、隊員を十数人負傷させたぁ」
「……ふん」
「一応聞くがぁ、どうする?育てりゃあなかなか使えそうな奴だが」
「勝手にしろ」
「わかったぁ」
勝手にしろってこたぁつまり、殺さないってことだ。
無造作に投げてきた少年を受け止めて抱え、執務室を出ていくザンザスを見送った。
ちなみにオレがこいつと話していたのは補佐官執務室。
普段はオッタビオが使っているのだが、今は丁度いないから借りていたのだ。
「……し、しし。あいつ、なに?」
「ここのボスだぁ。オレの主……一番偉い奴」
「お前よりも強いの?」
「強い。当たり前だろぉ」
「じゃあアイツと遊んだ方が強くなれる?」
「……やめとけぇ。遊びじゃ済まなくなる」
ナイフの1つでも投げようもんなら、途端にチリ1つ残さずカッ消されて終わりだ。
少年を地面に下ろしてやり、自分もしゃがんで視線を合わせる。
「無理にうちに入隊しろとは言わねぇが……、うちに入ればお前を強くしてやる。どうだぁ、入るかぁ?」
「……んー、ま、良いぜ。あんたもまーまー強そうだしな。しししっ!」
……イラっと、イラっとした。
だが子ども相手に怒るわけにもいかなくて、ただただ、大きくため息を吐いて気持ちを収めた。
そんなこんなで、その少年、ベルフェゴールは、ヴァリアーへと入ることになったのだった。