mono様(群青)

「いやー、盛り上がったね」
「……」

戦いの舞台の目の前、特等席とも呼べる見晴らしの良い席に、XANXUSは優雅に脚を組んで座っていた。
そこに近付いてきたのは、このパーティーの主催者である、沢田綱吉だ。
にこやかに笑いながらXANXUSに近付いていけるのは、ヴァリアー幹部か彼くらいのものだろう。

「やっぱりXANXUS達のこと、呼んで良かったよ」
「……」
「お客さん達も無事で、それに加えて怖がらせることなく、必要以上に血を見ることもなく敵を倒すことが出来たんだもん。ほんと、良かった」

最後の一人を倒し、数多のギャラリーに囲まれたスクアーロを見ながらそう言った綱吉は、倒れている男達を捕縛するように仲間に指示を出した。
倒れている敵のほとんどは、意識を失っているだけで、死ぬほどの重傷者はほぼいない。
恐らくは、客に汚いものを見せまいという心遣いと、後々彼らに聞かなければならないことがたくさんある事を考えての結果だろう。
しかし、例え考えたからと言って、その通りに戦える、そんなことが出来る人間は数少ない。
その数少ない内の一人であるスクアーロ、そして彼女がパーティーに来る切っ掛けとなったXANXUSを呼んだのは、やはり綱吉の超直感が理由であった。

「……カスが。オレ達を利用したのか」
「あー……ごめん、結果的にはそうかも」
「まあ…………今回は良いものが見れた。許してやる」
「え!?」
「白か。はっ、悪くねーな」
「白……?」

いつもと変わらない仏頂面で、しかし心なしか満足そうな顔のXANXUSは、徐に立ち上がるとスクアーロを呼ぶ。

「おい、カス。興が冷めた。帰るぞ」
「あ、はい」

XANXUSの声にすぐさま反応したスクアーロが、悠然と歩いていくXANXUSの背に従って、会場の外へと姿を消す。
途中でディーノと合流していたようだったが、綱吉は別の事が気にかかっていた。

「白……って、なに?」

そんなとき、近くを通った男達の会話が耳に飛び込んできた。

「いや、良いものが見れたな」
「ああ?……ま、確かにエキサイティングな戦いだったな」
「そうじゃなくて、あの女の子だよ。中、白だったぜ」
「……下世話な奴だ」
「そんなこと言ってお前、本当は見損ねて悔しいんじゃねーのか?」
「ばーか、そんなわけねーだろ」

また出てきた、『白』の文字。
そこでようやく、綱吉はなんの事か理解して、顔を引き攣らせた。

「白ってまさか、下着の事……!」

XANXUSの奴、『利用したのか』なんて聞いてきてたが、利用したのはそっちじゃないか。
綱吉は大きく肩を落としながら、心の底からスクアーロに同情した。
まさか彼女も、パンチラ見るために女の格好で連れてこられたなんて、思いもしないだろう。

「アイツ本当にオープンスケベだな……」

綱吉の一言は、誰にも聞かれずに喧騒の中に消えていく。
ただなんとなく、ちょっとだけXANXUSが身近に感じられたような気がしたのだった。
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