域市様(復活×黒バス)

――場所は変わり、東京のとあるホテル。
進められたソファーに座って、居心地悪そうにしているのは、霧崎第一のメンバー達。
そしてその目の前に座って、各々好き勝手に寛いでいるのはヴァリアーのメンバー達。

「……と、言うわけだぁ。
お前らちょうど良いし、ヴァリアー入れ。」
「話が飛躍しすぎだろ!
何でそうなったんだよ!!」
「ZZZ…………。」
「寝るなよ瀬戸!」
「チューイングガムないー?」
「しし、王子の分けてやんよ。」
「原、お前は大人しくしてろ!」
「ベル!テメーも大人しくしてろぉ!」

寝ている瀬戸と、原、ベルの頭が、二人のまとめ役によってボカリと叩かれる。
少し静かになったところで、スクアーロが長い脚を組んで、花宮に向けて高圧的に話し掛ける。

「オレ達の仕事を見られて放っておく訳にゃいかねぇ。
そしてお前の頭脳、そしてお前らのチームプレーはオレ達からしてみてもなかなかのモノだったぁ。」
「つまり?」
「マフィアになれぇ!」
「まあ確かにオレ達は優秀だからその気持ちもよくわかる。



……訳ねぇだろーがバァカ!」
「あ゙あ!?」

いや、彼らが言っていることがわからないわけではない。
云わば犯行の目撃者たる自分達を、口封じも何もなしに帰すわけにはいかない。
しかし、かといって、目撃者を仲間に引き入れようと言うのは些か考えが突飛すぎる。

「オレ達はただパーティーに参加してただけだぞ。
それが何でオレ達まで犯罪者の仲間入りしなくちゃならないんだよ!」
「才能があるからだぁ。」
「ねーよ、犯罪者の才能なんざ!」
「ある!」
「ない!」
「なくても連れて帰る!」
「あったとしても絶対に行かねぇ!」

もはやただの水掛け論である。
二人が言い争いを続けるなか、原とベルは、部屋の端に座ってのんびりと話始めた。

「オレ達さー、口封じで殺されちゃったりするわけ?」
「しし、平気じゃね?
9代目のジジイが、あんたら守れって言ってオレ達のこと寄越したんだもん。」
「9代目?」
「ボンゴレのボス。
まー、記憶消去とかは受けっかもしんねーけどなー。」
「なにそれチョー物騒じゃん。」

何気に楽しそうにしていた。
前髪で目が隠れている同士で、何か感じるものがあったのかもしれない。
そしてその横では、古橋とマーモンが向き合っていた。

「赤ん坊って喋るのか。」
「普通は喋らないと思うけど。」
「……。」
「……。」
「腹が減ったな。」
「君パーティーで食べてきたよね?」

惚けた会話を交わしている。
あまり相性は良くないようだ。
そしてその横で、一人冷や汗をかいてる者がいた。

「せ、瀬戸……!」
「やだぁー、あんたもなかなか良い体してるじゃないの~。」
「瀬戸起きろって……!」
「ふん!オレの方がずっと……」
「あんたは筋肉付けすぎなのよぉ。」
「瀬戸起きてくれ!」

一番の色物二人に逃げ場を塞がれて、寝息をたて続ける瀬戸に助けを求めているのは山崎である。
命の危機ではなく、貞操の危機を感じる。
しかし山崎の必死の助けに、瀬戸が応じることはない。
気持ちの良さそうな寝息が、山崎の耳に届いている。
心の中で瀬戸を呪いながら、山崎はこの危機的状況を抜け出そうと、今度は花宮に助けを求める。

「は、花宮ー!」
「だーもう!オレ達は帰る!
良いか!金輪際オレ達には関わるなよ!!」
「はーぁあ゙!!?オレ達がんな簡単に諦めるわけねーだろぉがっ、バァーカ!!」
「そりゃオレの台詞だバァカ!
オレ達がそう簡単に折れるわけねーだろバァカ!」
「バカバカうるせぇぞバカがぁ!」
「はーあ!?お前の方がずっとバカだっつーのバァカ!」
「バカバカうるせぇぞドカスどもが。」
「なっ……ぐはっ!?」
「な、なんだ!?」

山崎の助けも気にかけず、罵り合いを続ける二人に、突然声が掛けられ、そしてスクアーロの側頭部を酒のボトルが吹っ飛ばした。

「カスが。うるせぇ。帰れ。」
「ぐっ……花宮ぁ、帰れ。」
「手のひら返したな、あんた!?」

まあ、彼に向けてボトルを投げる人物など、一人しかいない。
のっそりと現れたXANXUSを見た途端、スクアーロは顔色を変える。

「ま、ありがたく帰らせてもらう。
おい、帰るぞ。
誰か瀬戸起こせ。」
「はいよー。
またねん、パツキンー。」
「しし、またなー。」
「じゃあまたな、赤ん坊。」
「……もう会う気はないよ。」
「やぁーん寂しいわぁ!」
「清々するな!」
「オレがな!一刻も早く帰るぞ花宮!!」
「お邪魔しZZZZ……。」
「どんだけ寝るんだぁソイツ。」

ラスボス、XANXUSの登場によって、事態は終息へと向かい始める。
荷物を取って立ち上がった霧崎第一のメンバーがエレベーターホールに向かうのを見て、スクアーロもまた逃げるように彼らに着いてくる。
ベルもまた、彼らを見送りに着いてきた。

「……さっきの何?」
「ししー、うちのボス。」
「オッサン髪ぐっちょぐちょじゃん。
ウケるー。」
「オッサ……!?」
「ぶふっ!オッサンって!!ししし!
スクアーロ、オッサンかよ!」
「るせぇ!オレぁまだ22だぁ!」
「え、マジ?」
「しし、マジマジ。」
「スカウト失敗して酒瓶投げられて、挙げ句の果てにオッサン呼ばわりされて今どんな気持ち?ねえねえ、今どんな気持ち?」
「うるせぇぞクソガキぃ!!」

帰れる、と言うことがわかったからか、軽口を叩く彼らは、少し安心したような顔色をしていた。
……瀬戸はうつらうつらとしていたが。

「お゙い、うちに入る気になったらいつでも連絡しろよぉ。」
「しねぇよバァカ!」
「んじゃ、今度こそまたねん。」
「しし、またこっち来たら遊ぼーぜ。」
「もう2度と会いたくない……。」
「世話になったな。」
「ぐ……ぅ……Z、ZZZ……。」
「本当に寝てばかりだなぁ。」

と、そんな会話を交わしてから、彼らはエレベーターに乗り込む。
片や、一般人の高校バスケ選手達。
片や、裏社会の暗殺部隊の幹部達。
本来ならば、決して交わるはずのない彼らの、ほんの少しだけ擦れあった縁。
エレベーターの扉が閉じる。
がこん、という機械質な音が、彼らの縁を再び引き離す。

「しし、残念だったなー。
あいつらのスカウト失敗して。」
「そんなに気に入ってたのかぁ?」
「まあねん。」
「ふん。」

原のような話口調で答えたベルに、不機嫌そうに鼻を1つ鳴らして、スクアーロは踵を返した。

「で、うちのボスさんは、どこに行きたいんだぁ?」
「あー……確か、別府の温泉で上手い日本酒が飲みたい、……じゃなかったっけ?」
「だぁあー!ダリぃ!」

スクアーロの叫びが、エレベーターホールに木霊する。
そしてエレベーター内では、こんな会話が。

「何だかんだで楽しい人達だったねん。」
「はー?ただのバカだろ、バァカ。
あー、面倒な目に遭った。」
「まあ、こうやって無事に帰れるんだし、良かったんじゃねーか?」
「……まあ、そうかもな。」

ふん、と花宮が鼻を鳴らして、開いたエレベーターから出る。

「ま、また会ったら、からかってやるくらいはしてやるよ。」

……本来ならば、決して関わることのないはずの彼ら。
しかし一度関わってしまった彼らの運命が、再び交わり合う事も、……もしかしたら、あるのかもしれない。
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