mono様(群青)

会場の中心部は、それはもう酷い有り様になっていた。
椅子や机はひっくり返り、その幾つかには弾痕が見受けられる。
壊され尽くした机と椅子の群れの中には、黒いスーツの男達の背中が転がっている。
しかし何よりもディーノが驚いたのは、その惨状を取り囲む、ギャラリーだった。

「ヒュウ!カッコいいぞネーチャン!!」
「やれ!右だ右!!」
「うおっ!今の蹴り、際どい!!」
「どこ見てんだお前は?」
「おい!オレ達は何もしなくて良いのか?」
「……むしろ、出来る事ってあるのか?」

歓声を上げて、円になっいる人々。
その内の何人かの顔は、ディーノも知っているような有名マフィアで、恐らくこのパーティーに参加していた客達だろうと予測できた。
そして彼らの視線の先にいたのは、暴れまわる一人の女だった。

「な、何やってんだ……アイツ!?」

事の始まりは、10分程前に遡る。


 * * *


「着いてきてもらおうか」

脅しの言葉と、鈍色に光るナイフ。
それらを認識した途端、オレはすぐに行動を起こしていた。

「何とか言……ぅ、ごぁ……?」
「てめぇら、何者だぁ?」
「か……ふっ……!?」

男の喉仏を掌底で打つ。
『何者だ?』なんて聞いたは良いが、これじゃあ答えることも出来ないだろうな。
喉を押さえようとする男の手からナイフを奪い、鳩尾に膝蹴りを叩き込んで意識を奪う。

「きっ……さまぁ!!」
「こいつの仲間、だなぁ?」
「ぶっ殺して……ぐわぁ!?」

掛かってきた男を伸す。
倒れたそいつの体を蹴っ飛ばした時には、オレは既に何人もの敵に囲まれていた。

「チッ、人質を取って穏便に済ませようかと思っていたのだが、致し方ない。少し手荒にいくとしようか」
「……ふん、面倒なことになったな」

ざっと見ただけでも3、40人はいるだろうか……。
さっき奪ったナイフを、手の中でくるりと回して、オレは口の端を吊り上げて笑った。

「正体、バレないように気を付けねぇとなぁ……!」

そしてその後30分間。
ギャラリー達の歓声を浴びながら、オレは存分に暴れまくり、敵を一人残らず倒し尽くしたのだった……。
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