mono様(群青)

「……初めに会ったのが沢田だったから不安だったがぁ、気付かないもんだなぁ」
「気付かれないための変装だろうが、カス。それより酒を持ってこい」
「あ゙ー、はいはい」

ボンゴレ主催のパーティーなだけあって、顔見知りの人間とすれ違うことも多かったのだが、全員面白いほどに気付かない。
山本が数センチ隣を気付く素振りもなく通り過ぎて行ったのには、柄にもなくちょっと笑った。

「ねえ、お嬢さん。可愛いね、どこのファミリーの娘?誰と来たんだい?」
「……ヴァリアーの、ザンザス様と」
「そ、そうなんだ……!いや、ゴメンね。気になっただけなんだ」

男に声を掛けられて、素直に話す。
途端に慌てて逃げていく男を見て、感嘆の息を吐いた。
やっぱりザンザスの名前はでかいな……。
口に出しただけで人払いが出来るんだから、便利便利。

「おい、女。ちょっと止まれ」
「……はい?」

突然背後から話し掛けられて、足を止める。
またザンザスの名前で追い払えば良いか、なんて考えていたオレは、たぶん調子に乗ってたし、ついでに油断しまくっていた。

「あのザンザスの連れなんだろう?少し、着いてきてもらおうか」
「……」

背後にいた男は、穏やかな笑みを浮かべながら、オレの鼻先に小振りなナイフを突き付けていた。


 * * *


「……なんだ?パーティー会場の方、なんか騒がしくねーか?」
「ん?そうか?」
「ほら、今銃声が……」

パーティー会場へと続く道の途中。
遅れてきた跳ね馬ディーノは、遠くから聞こえる騒音に気付き、顔を曇らせた。
せっかく落ち着いてきて、弟分の仕事も楽になるかと思っていた、その矢先にこの騒ぎ。
嫌な予感しか、しなかった。

「急ぐぜ、ロマーリオ。ツナ達に何かあったのかもしれねぇ!」
「あいよ!」

車のスピードが上がる。
そして5分後、会場に着いたディーノが目にしたものは、惨状と呼ぶに相応しい光景だった……。
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