域市様(復活×黒バス)

「美味いもん食えるのは良いけどよ、やっぱこういう服って肩凝るよな。」

ジュースのグラスを傾けながら、山崎が居心地悪そうに足踏みをした。
霧崎第一高校バスケ部のレギュラーメンバー達は、昨日花宮に、突然このパーティーに誘われた。

『親父が友達と一緒に行け、ってよ。』

花宮いわく、ドレスコードはあるが、衣装は全部借りられるし、有名なシェフが料理を作っているらしく、美味いタダ飯を食べに来い、なんて誘われたからには、成長期の男子には断ると言う選択肢などはなく、原、山崎、古橋、瀬戸の四人は、誘われるままにこのパーティーへと来たわけである。

「でもマジで美味いし、服が着づらいくらい全然気になんなくない?」
「……ZZZ」
「料理とか関係なしに、気にしてねぇ奴がいたな。」
「瀬戸がいつも通り過ぎるほどいつも通りで、安心するな。」
「オレは服や料理よりも、客の方が気になるけどな。」

立食のパーティーにも関わらず、壁に凭れて眠る瀬戸を、山崎と古橋が呆れたように眺めている。
と言っても、古橋の死んだような目はそれこそ『いつも通り過ぎるほどいつも通り』だったが。
花宮はそんな彼らに冷めた視線を向けた後、会場を蠢く人々の中でも、特に目立っているグループを然り気無く観察し始めた。
どうやら外国人らしい彼らは、自分達からそう遠くないところのテーブルに屯している。

「確かに、めっちゃ派手な連中だよねん。」
「銀髪金髪、カラフルモヒカンにフードに針ネズミ頭……って、外国の芸人か?」
「うわ、カラフルモヒカンとかキモ。」
「なんか、奴らの方からたまに視線感じる気がする。」
「はあ?視線?オレ達に?」
「花宮って確かにそういうの鋭いけどさー、流石に気のせいでしょー。」
「……まあ、そうだな。」

最後にもう一度、彼らに視線を向ける。
瞬間、パチリ、偶然その内の一人と花宮の視線がかち合った。
銀髪ロン毛の、背の高い男だ。
不機嫌そうに鼻を鳴らして、男はすぐに視線を外したが、遅れて仲間の元へと視線を戻した花宮を、クスクスという忍び笑いが追い掛けてくる。

「……チッ、感じ悪いな。」

小さく舌打ちをして、花宮は仲間達の方へと脚を踏み出す。
その直後の事だった。
寝ている瀬戸を、いい加減起こそうと口を開いた。
しかし出そうと思っていた言葉は、ガラスの割れる音に掻き消されてなくなる。
ガツンっと言う音、視界を跳ねる火花。
後頭部がカッと熱くなるのを感じながら、花宮は意識を失ったのであった。
3/7ページ
スキ