柘榴様その2(群青if)

「年寄りの話っていうのは、総じて長いですよね」

話をすべて聞き終わった、僕の最初の感想はそれだった。

「ぶっ!ははははは!!」
「わ、笑うとこでしたか今の!?」

僕の言葉に、スクアーロさんは噴き出すようにして大笑いし始めた。
予想外の反応に、僕は驚く。
そのまましばらくの間、笑いが収まらないスクアーロさんの傍で、僕はおろおろしている事しかできなかった。

「くくっ……、そうかぁ、確かに長かったなぁ」
「あ、その、はい……、長くて、最初の方とか軽く忘れてしまいました」
「ふふっ、そうかぁ、そりゃあ悪かったなぁ」

僕の反応に、スクアーロさんはニヤニヤと笑っている。
机に肘をついた手の上に顎を乗せて、いつもとは違う崩した態度で僕を見る。

「で?聞いてどう思ったぁ?」
「そう、ですね……。気にしすぎなんじゃないのかな、って、思いますけど。でも、それは実際にそのことを体験した本人にしかわからないことだと、思うから、僕には何も言えません」
「ふうん」
「……でも、そうですね、世の中には、そういう人もいるんだなって、思いました」
「ドライな感想だなぁ」
「そうですかね……。あの、だからもう、どうしてとか、聞かないと思います。……それで、その、逆に聞きたいんですけど」
「ん?」

まるで子供のように無邪気に首を傾げて、僕の言葉を待つ彼。
僕は、彼の赤い瞳を覗き込むようにして尋ねる。

「スクアーロさんは、僕にどうしてほしいですか?」

しばらくの間、考えるような素振りをして、スクアーロさんは答える。

「お前に、お前の使命を果たしてほしい、かな」

彼は、抜け殻のような吸血鬼。
僕は、落ちこぼれたハンター。
僕の使命なんて、わかりきっている。

「やるなら、早い内に決着つけてもらいてぇなぁ」
「やるなら、僕は正々堂々と戦いたいです」
「……やり方は、お前のやり方で構わねぇよ」

僕たちは、まるで旧友のように微笑みあう。

「スクアーロさんって、強いんですか?」
「強いぜ、めちゃくちゃなぁ」
「……そうですか。それは、僕もやりがいがあります」
「くくっ、いつ、かかってきてもいいぜ」
「頑張りますね」
「ああ、応援してやる」

彼は寂しい吸血鬼。
僕は変り者のハンター。

「……その人が、いつか幸せになれるように、願ってます、ね」
「……そうかぁ。そいつも、喜ぶだろうよ」

彼は独り。
僕は一人。
僕達は可笑しなふたり。
いつかまた、ひとりきりになるかもしれないけれど、今だけはふたりきりで、笑いあった。
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