このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

柘榴様その2(群青if)

「なんで、死んでも良い、なんて、言ったんですか」

あの後、いくら考えても、彼の気持ちはわからなかった。
死ぬのがどれだけ苦しいのか、一度死にかけた僕にも、少しはわかるつもりだ。
彼だって、餓えるのが苦しかったから、僕の血を飲んだのだ。
死んで良いなんておかしい。
そう考える僕に、スクアーロさんの気持ちはわからなかった。
ならば直接、彼に聞くしか、その気持ちを知る方法はない。
だから彼と食事をしているときに、僕はストレートに訪ねてみた。

「……言っただろう、オレは充分生きた。もう、疲れたんだよ」
「疲れたから、死にたいんですか……」
「死にたい、とは、少し違う」
「?」
「死にたいんじゃなくて、もし今ここで、死んだとしても構わない、ってだけだ」
「……えっと……?」
「自分から、死にたい訳じゃない。自分が、生きてようが死んでようが、どっちでも良いんだぁ」
「……?」
「お前にゃ、まだまだ、わからねぇよ」
「……はあ……」

やっぱり、彼の気持ちはわからなかった。
というか、聞いて余計にわからなくなった。

「難しかったです」
「そうかぁ」
「……スクアーロさんは、自分のことにも、興味がないんですか?」
「まあ、そんなとこなんじゃねぇのか?」
「それって……スゴく、寂しいです」
「なんでだぁ?」
「スクアーロさん、優しくて、料理も上手で、カッコいいのに、生きてても死んでてもどっちでも良いって言われてしまうのは、寂しいんです」
「……他人に、そんなこと言われたのは、初めてだなぁ」
「……スクアーロさん、今までどんな人生送ってきたんですか?」
「はあ?」

僕の何気ない言葉で、スクアーロさんは首を傾げて考え込む。
まあ、ここに住んでいるだけで300年以上だと言うのだから、一言で表すのは難しいと思うけれど。

「……まあ、色々と」
「纏めきれなかったんですね……」

結局、ざっくりとした説明をされる。

「どこで産まれたんですか?」
「捨て子だったから、知らねぇ」
「は……」

この人は、色んなとこに地雷があるな……。
本人は、全く気にしていないようだから良いけれど、僕は少し気まずくなる。
咳払いをして気持ちを切り替え、別の質問をした。

「どこで育ったんですか?」
「ここから遠く離れた国だぁ」
「ざっくり、ですね」
「橋の下に住むばあさんが育ててくれた」
「この国には、いつ頃来られたんですか?」
「……500年以上前、かな」
「僕には想像もつかないですよ、500年前なんて……」
「まあ、500年っつったら、オレでもだいぶ昔だと思うしなぁ」

なら、もう彼は500年以上この国に住み着いている、って言うわけか。
ここに来るまでの200年は、何をしていたのだろう。

「こっちに来てからは、何してたんですか?すぐに、この屋敷に来たわけじゃないんでしょう?」
「しばらくは、あちこちを点々としていたなぁ」
「ああ……やっぱり、長居ってしづらいですよね」
「まあなぁ」

いつまで経っても歳を取らない人間なんて、怪しまれるよなぁ。
きっと、嫌な思いもたくさんしてきたのだろうな。

「どうして、ここに来たんですか?」
「……たまたまこの屋敷見つけたからなぁ。誰も知らない場所で、一人ひっそり生きるのには、ちょうど良いなぁ、と、思ってなぁ。色々と手入れして、住み着いて、気付いたら300年経っていたぁ」
「またもや、ざっくりですね……」

説明するのが面倒なのか……。
かなり中身を省かれた話を、頷きながら聞いていたら、僕はまた、寂しさを感じる。

「一人で生きたかったんですね……」
「……結局、またその話に戻って来ちまったなぁ」
「あ、はは……」
「……一つ、話をしてやるよ」
「へ?」

そう前置いて、スクアーロさんはゆっくりと話し出した。
それは、とある一人の人間が、死んで、生きたお話……。
5/8ページ
スキ