ケイ様(群青の鮫)

裏口から屋敷に入って、ヤクザの構成員をこっそり潰していたスクアーロ率いるヴァリアーの隊員達。
そして、正門から正々堂々と入って、構成員を次々と潰していく雲雀恭弥。
彼らが出会ったのは、ヤクザの頭の目の前での事だった。

「て、テメーら何者だ!!
オレ達の組を潰しに来たのか!?」
「僕はただ、並盛を荒らす奴らを咬み殺しに来ただけだよ。」
「オレ達はボスの命令であんたらを潰しに来たぁ。」
「くそっ!こんなふざけた奴らに……!!」
「まあ、僕には新しい目的が出来たからね。
あなたの事は後にしてあげる。」
「……は?」
「そこの銀髪、この犯罪者達を並盛に連れてきたのはあなたでしょう。
僕が、直々に潰してあげるよ。」
「は……なにぃっ!?」

お互いがヤクザの頭に向かい合っていたのは、ほんの数秒のこと。
突然スクアーロに向かって牙を剥いた雲雀に、ヴァリアー達は武器を向け……。

「邪魔だよ。」
「ぐぁあ!?」
「っ!テメーらは下がっとけぇ!!」
「ですがスクアーロ様!」
「まだ仕事残ってんだろう、がぁ!」
「は、はい!」

嵐の目のごとく、隊員達を吹き飛ばした雲雀のトンファーを、何とか弾き返したスクアーロに言われて、隊員達だけは頭に再び視線を向ける。
こうして、ヴァリアーの仕事は終了し、並盛の平和を脅かす者もいなくなった……訳だが、その後、冒頭のように、二人の戦闘が本格的に始まってしまった訳である。

「良いね、愉しいよ。
やっぱりあなた、強いねっ……!」
「はっ!そう言うテメーもっ、やるじゃねぇかぁ!!」
「うわぁ……隊長もノってきちゃってるし!
誰か止めろよ!」
「あのモンスター二人止められる奴が、ここにいるわけないだろ……。」
「ボスか跳ね馬連れてこいよ……。」
「つーかもう誰でも良いから助けてくれ!」

非力な隊員達には、彼らを遠巻きに見守ることしか出来ない。
リーチは短いものの、素早さで勝るトンファーに、スクアーロは既に大剣を捨ててナイフで応戦をしていた。
中、遠距離戦にも優れたスクアーロに、雲雀は距離を取ることなく、凄まじい勢いでトンファーを打ち込み続けていく。
それを鞘付きのままのナイフで防ぎながらも、スクアーロは雲雀に攻撃をしていく。
彼女の体術は足技が基本だ。
防御する時のバランスは崩れるが、上手くタイミングを計って雲雀へと攻撃を繰り出していく。

「っらぁ!!」
「ワオ、体術もなかなかのものだね。
優れた暗殺者は万に通ず、ってところかな?
ま、結局は僕に負けるんだけどねっ!!」
「うぐっ!……いってぇな、このカス!!」
「な……!?」

雲雀が蹴り上げた瓦礫が、スクアーロの頬を掠める。
続けて飛んできたトンファーが、彼女の腹に深くめり込んだ。
呻き声を上げるスクアーロ、しかし、間髪入れずに、雲雀のトンファーを彼の腕ごと捕まえた。
一瞬動揺を見せた雲雀の脇腹に、スクアーロの鋭い回し蹴りが炸裂する。
肉を切らせて骨を断つ。
言葉にすれば格好良いものだが、かなり捨て身の攻撃だ。
持っていたナイフを放り投げ、動きを止めた雲雀に、今度はスクアーロの猛攻が始まる。

「オラオラオラァ!」
「ぐっ!」

急所目掛けて飛んでくる安全靴や鉄製の拳に、雲雀も流石に堪えかねて呻き声を上げる。
トンファーを使って拳を弾き、雲雀が数メートル退いたその途端、スクアーロは口角を吊り上げてニヤリと笑った。

「甘ぇんだよぉ、クソガキぃ!!」

背に仕舞っていた、組立式の槍を素早く取り出して振り上げる。
このリーチの差で先手を取れば、雲雀にとっては不利になる。
しかしそれを見た雲雀もまた、にぃっと凶悪な微笑みを浮かべた。

「そっちこそ、甘いよ。」

カチッと硬質な音がする。
トンファーから出てきたのは、錘付きの丈夫そうな鎖だ。
これで一気にリーチは逆転。
だが雲雀が動き出すより早く、スクアーロが先手を取った。
槍の穂先が雲雀の肩を掠める。
すぐに反転させて、次には槍の柄がしなって、彼の首を狙った。
ガァン、と大きな音が響く。
自分と槍の間にトンファーを捩じ込ませて、ギリギリで防いだらしい。
そして防いだのとは反対側のトンファーを使い、雲雀がスクアーロの腕を狙う。
槍を構える彼女の腕に、重たい鎖が絡み付いて締め上げた。
もしも生身の腕ならば、この時点で勝負は着いていたかもしれない。
しかし雲雀が捕らえたのは義手の部分。
スクアーロは捕らえられた己の腕を後ろに引き、雲雀の体を引き寄せた。

「くっ!」
「終わりだぁ!」

再び半回転した槍の柄が、彼のがら空きの胴に迫り……。

「ちょっと待っ……へぶっ!!」
「な……!?」
「さ、沢田ぁ!?」

そして、突然間に入ってきた綱吉の顔面に命中した。
雲雀もスクアーロも、先程の攻撃でバランスを崩している。

「ちょっ……!」
「うわっ!?」
「どわっ!!」

3人は縺れ合うようにして、床に倒れ込んだのであった。
3/5ページ
スキ