継承式編

シモンは、誇りを取り戻すために。
沢田達は、仲間のために。
両者の戦いが始まる。
オレはそれを、背後から観察する。
古里が顔の前に手を構えると、沢田の守護者達が先程と同じ、見えない力に吹き飛ばされる。
床が凹むほどの力……、そして「大地の7属性」。
大地……見えない力……。
まさかあれは、重力操作の能力なのか?
重力に押し潰される守護者達の、ボンゴレリングが割れる。
ボンゴレリングでも敵わねーってのか……!!
沢田が助けに入るが、呆気なく飛ばされた。

「脆いなボンゴレ。これでもまだ、未完の力だぞ」
「未完!?」
「シモンリングと初代シモンの血は7日ほどで完全に馴染む。つまり今の能力は完全なる覚醒状態の1/7に過ぎない」

つまり一週間後には今の7倍の力に……。
殺すなら、今……。

「ツナ!!」
「スクちゃん、ベルちゃん!!」
「マーモン!!」
「外野はひっこんでろ」

駆け付けた跳ね馬とルッスーリア、レヴィが、鈴木アーデルハイトの氷に足止めされる。
クロームが、加藤ジュリーに連れていかれる。
アイツ、何が目的なんだ……?
だが少なくともこれで、加藤ジュリーの手がふさがった。

「クローム!!」
「ツナ君は自分の心配をした方がいいよ」

天井に押し付けられた沢田の、ボンゴレリングが破壊される。

「今日この日が、ボンゴレ終焉のはじまり。そして新生シモンの門出だ。帰りましょう、聖地へ」

振り向いたシモン達が、壁を壊して……壊した壁に、襲われた。

「なっ!?」

青い炎が、壁全体を覆う。
後から来た奴らを足止めしていた氷が砕けた。
鮫の形をした炎がシモンファミリーを襲い、一瞬奴らに隙ができる。

「逃がさねぇぞ」
「!!」

剣を、振る。
目の前には古里炎真の首。
防がれるよりも前に、一瞬でも、早く。
だが、オレの刃が届くことはなく、横から来た何かに体を吹っ飛ばされた。
……加藤、ジュリー……!!

「ダーメだってエンマぁ~。油断したらガットネロに暗殺されちゃうぜー?」
「ガットネロ……そうか、やっぱりこの人が……」

壁にぶつかったと同時に、身体中に見えない力が押し付けられる。
クソ、最後のトラップは効かねーし、殺し損ねたし、挙げ句、正体さらっとバラされたし……。
雨の炎を出して抵抗するも、有り合わせのリングで大した抵抗ができるはずもなく、バキバキと音をたててリングが壊れた。

「あの時のお兄さんも、僕達を監視してたのも、あなただったんですね」
「グ、ガァッ……!!」
「なっ!!スクアーロ!?」
「僕達を知ろうとしてくれたの、あなただけだった。嬉しかったけど、あなたはここにいる誰よりも、罪深い。……ジュリーから聞いたんだ。ボンゴレに敵対する組織を、たくさん殺してきたんだってね」
「かはっ、……オレ、を、裁く、つもり……かぁ……!?」
「……ボンゴレは、みんな殺す」
「おまえ、に……できんのか、よっ!?」
「……僕がやるんだ」

更に、力が強くなる。
喉から血が込み上げてきて、吐血する。
体が、潰れそうだ……!

「スクアーロ……!!ぐあっ!?」
「あなたのことを、心配してくれる人がいるんだね……。あなたが殺した人たちも、誰かに心配されて、誰かを心配してたかも知れないこと、わかっている?」
「でぃ、いの……!!」

飛び出したディーノが、重力に押し潰されて地に膝をつく。
バカ……なんで飛び出してきやがったんだ。
目の前の、わかりきったような顔で語るガキに、初めて怒りが湧いた。
仕事ではなく、殺したい。
殺気に気圧されたのか、少し重力が弱まった。
腕を伸ばし、その赤髪を掴む。

「……!!」
「偉そうに、語んな、クソ、ガキ……!!オレぁ、全部背負う覚悟、して、この仕事、……してんだよ。誇り、取り戻す、だぁ……?テメーに、人殺してでも、守りたい誇り、あんのかよ……」
「僕は……!!」
「テメーに、人の命なんか……背負えねえ!!」
「!!」

古里の瞳が揺れる。
だがその瞳は突然オレの視界から消え、オレは肩に走る激痛と共に壁に突き戻されていた。

「くっ!ゔぐぅ……!!」
「エンマ、こんな奴の話に耳傾ける必要はねーぜ」
「そうよ。帰りましょう、エンマ」
「……ああ。じゃあね、ボンゴレの掃除屋さん」

霞む視界の向こうで、シモンの奴らが去っていくのが見える。

「スクアーロ……!!」
「かはっ!はっ……、尾行を、しろ!マーモン!!」
「!わ、わかった!!」

オレは壁からずり落ちて、意識を、失った。
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