継承式編

「罪は返してもらうよ。この血は僕ら、シモンファミリーのものだから」
「え……っ」
「どういうことだ?」
「わからん……」

左右の壁に衝突したオレ達は、声も出せずにシモンの自白を聞くことしかできなかった。
ベルは、ここからじゃ確認できねーが、無事ではなさそうだ。
オレは一瞬、息が詰まったが、ズリズリと壁を伝って立ち上がることができた。

「聞いての通り、罪を手に入れるために、我々はこの継承式に来た」
「罪が……目的!?」
「ということは……」
「……うそ」
「ま、まさか……、山本をやったのって……」
「そう、僕らだよ」
「!!」

オレは気付かれないようにゆっくり、ゆっくりと動き出す。
奴らの、背後を目指して……。

「どうしても必要なものだったんだ。力を取り戻して、ボンゴレに復讐をするために」
「そ、そんな……、わからない……。なんで……なんでだ!!」

古里が、罪の小瓶の中の血を、右手中指のゴツいリングに垂らす。
焼けるような音、機械的な音が聞こえて、リングが形態を変えて、右の腕を覆う。
沢田もそれに合わせるように、ハイパー化したのがわかった。
オレはそれを横目に金庫の欠片の影に隠れる。
もう少し、もう少しだ……。
耳には、沢田達の話す声が届いている。
ボンゴレの守護者であり、水野薫の持つ計画を見てしまったため殺された山本のこと。
未来の記憶が降ってきた日に起きた地震で出土した7つのシモンリングのこと。
そしてシモンリングを完全に覚醒させるために必要なものが、罪と呼ばれる初代シモンの血であること。
そして初代シモンがボンゴレに裏切られ、見殺しにされたこと。

「それから残された我がファミリーが見てきたのは地獄!!マフィア界からはさげすまれ、主要なコネクションは全て断たれた……。我々は永遠の罪人として、日陰の道から出ることを許されなかったのだ」
「ま、まってくれ。そんな話は聞いとらん!!シモンファミリーとは大昔に友好があったが自ら海外に向かったファミリーだとしか……!!」
「言うと思った~♪知りましぇーん!聞いてましぇーん!」
「どうだいツナ君。君の体には、裏切り者のボンゴレの血が流れているんだ」

古里の言葉に、即座に獄寺が怒鳴る。
それを遮って、沢田が話し出した。

「ボンゴレの血が流れているのは否定しない。過去にボンゴレファミリーとシモンファミリーの間に起きたことも、今のオレには確かめられない。絶対ないとは言い切れない……。だがそれでも、一つだけ命をかけて言えることがある。ボンゴレI世は、そんなことをする男じゃない!!」

……未来で、その姿を見たとはいえ、よくも全然知らない男のことを信用できるものだ。
シモンが、それを聞いてもブレることなく、宣言する。

「古里炎真が10代目のシモンボスを継承し、ボンゴレへの復讐を果たすことを誓う」

その声は、冷たく感情を伴わない。

「そして世界中のマフィアを再組織化し、マフィア界の頂点に君臨する。この戦いはシモンの誇りを取り戻すための戦いだ」
「今こそ我々の、本当の力を見るがいい」

古里炎真に倣うように、6人のシモンファミリーたちが罪をそのリングに垂らす。

「!!くるぞ!!」

オレの反対側、沢田達の方に向けて爆発が起こる。
その余波がオレの方まで届くが、雨の炎でなんとか凌ぐ。

「なぜ初代ボンゴレが、我々シモンをこの世から抹殺したかわかるか?それは我々の先祖が持っていた、ボンゴレに対抗しうる力を恐れたからだ。それこそが大空の7属性に対をなす、大地の、7属性!!!」

爆発の煙が晴れ、シモンリングを武器にかえ構えるシモンたちが、姿を現した。
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