継承式編
アクーラは、暗闇の中で息を潜めていた。
今日の朝、ボンゴレIX世から数多のファミリーに向けて、継承式の招待状が送られた。
世界中のファミリーが、大小関わらず、日本へと集結する。
その中には、かつてボンゴレと対立の関係にあったファミリーもある。
無論、それは昔の話である。
表立って敵対しているファミリーを招待する程、ボンゴレも愚かではない。
だが継承式へと来るファミリーの中には、ボンゴレに対する鬱屈とした思いを抱えながらも、それをひた隠し、近付いてくる者もいる。
今回の継承式は、そうしたファミリーを一掃する目的も持っていた。
アクーラが潜む場所、とあるファミリーのアジトでは、そのボスと幹部の間で、物騒な会話が交わされていた。
「愚かなボンゴレめ……。継承式のその日、奴らの息の根を止めるぞ」
「ボス、あなたの意のままに」
その様子を、アクーラは身動ぎもせずに聞いていた。
その表情はヘルメットに隠され、窺い知ることは出来ない。
そして、ボンゴレへの敵意を確信したその人は、音もなく、コートの内側から針を取り出した。
縫い針のような、脆いモノではない。
手の平ほども長さのある、とても頑丈そうな針。
「継承式の会場の図は……」
「ここに部隊を……」
詳しい作戦を練る男たちの真上、天井裏で、アクーラが動いた。
「当日はお前に指揮をまかせ、あ……」
「ボス?……かっ」
二人の声が消える。
叫ぶこともなく、抵抗することもなく、二人の体が椅子の上に力なく崩れ落ちた。
二人は息をしていない。
既に、死んでいることがわかった。
いつの間にか屋根裏から部屋に降りていたアクーラは、手に持った針を布で拭う。
拭いながら、首を振り、不満げにため息をついた。
男二人の脈を測り、完全に息絶えていることを確かめる。
本来なら、首と胴とを切り離すことで完璧に任務を達成することを信条としているアクーラは、この武器を扱うことにストレスを感じるようだ。
そして再び、屋根裏へと舞い戻る。
猫のように、音を立てずにひっそりと移動する。
不安の芽は、1つ残らず摘んでおかなければならない。
数時間後……。
アジトは無音が支配していた。
死の静寂が、夜の闇を通して広がっていくような感覚。
アジトにあるのは、死体だけだった。
闇に横たわるアジトを無感情に眺め、アクーラはその場を去る。
今回のファミリーは規模が小さく、今日だけで一人残らず暗殺することができたが、これから訪れるファミリーがもし、ボンゴレに敵意を持っていたとしたら、厄介だ。
頭の中に詰め込んである情報を、反芻する。
次のファミリーと、ボンゴレファミリーとの確執は古い。
大昔、ボンゴレがマフィアとして隆盛を極めていたその頃、領地の奪い合いが抗争に発展したことがあった。
その相手が次の標的。
しかし何分昔のことで、その抗争が解決して以降、2つのファミリーは比較的良好な関係を築いてきたようだし、抗争の解決だって、話し合いで穏便な解決が成されている。
……とにもかくにも、全てはこの目で見なければ分からないことだ。
そのファミリーの生死を決めるのは、自分の目で、公平な目で、確証を得てからでなくてはならない。
もし敵意を持っているのなら、どこかにそれを示すヒントが、必ずある。
任務は完璧にこなす。
9代目に伝えた言葉を現実にすべく、アクーラは次の目的地へと向かった。
今日の朝、ボンゴレIX世から数多のファミリーに向けて、継承式の招待状が送られた。
世界中のファミリーが、大小関わらず、日本へと集結する。
その中には、かつてボンゴレと対立の関係にあったファミリーもある。
無論、それは昔の話である。
表立って敵対しているファミリーを招待する程、ボンゴレも愚かではない。
だが継承式へと来るファミリーの中には、ボンゴレに対する鬱屈とした思いを抱えながらも、それをひた隠し、近付いてくる者もいる。
今回の継承式は、そうしたファミリーを一掃する目的も持っていた。
アクーラが潜む場所、とあるファミリーのアジトでは、そのボスと幹部の間で、物騒な会話が交わされていた。
「愚かなボンゴレめ……。継承式のその日、奴らの息の根を止めるぞ」
「ボス、あなたの意のままに」
その様子を、アクーラは身動ぎもせずに聞いていた。
その表情はヘルメットに隠され、窺い知ることは出来ない。
そして、ボンゴレへの敵意を確信したその人は、音もなく、コートの内側から針を取り出した。
縫い針のような、脆いモノではない。
手の平ほども長さのある、とても頑丈そうな針。
「継承式の会場の図は……」
「ここに部隊を……」
詳しい作戦を練る男たちの真上、天井裏で、アクーラが動いた。
「当日はお前に指揮をまかせ、あ……」
「ボス?……かっ」
二人の声が消える。
叫ぶこともなく、抵抗することもなく、二人の体が椅子の上に力なく崩れ落ちた。
二人は息をしていない。
既に、死んでいることがわかった。
いつの間にか屋根裏から部屋に降りていたアクーラは、手に持った針を布で拭う。
拭いながら、首を振り、不満げにため息をついた。
男二人の脈を測り、完全に息絶えていることを確かめる。
本来なら、首と胴とを切り離すことで完璧に任務を達成することを信条としているアクーラは、この武器を扱うことにストレスを感じるようだ。
そして再び、屋根裏へと舞い戻る。
猫のように、音を立てずにひっそりと移動する。
不安の芽は、1つ残らず摘んでおかなければならない。
数時間後……。
アジトは無音が支配していた。
死の静寂が、夜の闇を通して広がっていくような感覚。
アジトにあるのは、死体だけだった。
闇に横たわるアジトを無感情に眺め、アクーラはその場を去る。
今回のファミリーは規模が小さく、今日だけで一人残らず暗殺することができたが、これから訪れるファミリーがもし、ボンゴレに敵意を持っていたとしたら、厄介だ。
頭の中に詰め込んである情報を、反芻する。
次のファミリーと、ボンゴレファミリーとの確執は古い。
大昔、ボンゴレがマフィアとして隆盛を極めていたその頃、領地の奪い合いが抗争に発展したことがあった。
その相手が次の標的。
しかし何分昔のことで、その抗争が解決して以降、2つのファミリーは比較的良好な関係を築いてきたようだし、抗争の解決だって、話し合いで穏便な解決が成されている。
……とにもかくにも、全てはこの目で見なければ分からないことだ。
そのファミリーの生死を決めるのは、自分の目で、公平な目で、確証を得てからでなくてはならない。
もし敵意を持っているのなら、どこかにそれを示すヒントが、必ずある。
任務は完璧にこなす。
9代目に伝えた言葉を現実にすべく、アクーラは次の目的地へと向かった。