10年後

――――

………

――



「あの、スクアーロ様……?」
「……!」
「あのぉ……」
「……、……っ!!」
「だ、大丈夫ですか?」
「……う、」
「え?」
「嘘だろぉぉおお!!?」

オレは日本のホテルの一室で叫んでいた。
叫ぶだろ、そりゃあ叫ぶだろぉ!!
でけぇ地震と共に、頭の中に突然10年後の自分の記憶が降ってきたりなんてしたら……!
なんだこれ、何なんだこれは!?
なんでオレ性別ばれちゃってんだ!?
なんだ白蘭って!
何様だあの真っ白々すけ!!
あとなんでオレ跳ね馬の馬鹿に言い寄られてんだ!!
あの馬鹿は頭がおかしいのか!?

「あの、大丈夫ですか?」
「あ、おう……大丈夫、だと思う」
「はあ……?」

部下に変な目で見られながら、脳ミソの中身を心配されて、ようやく冷静さを取り戻した。
そ、そうだ、とにかくまずは落ち着いて状況を纏めなければ……。
この記憶は、恐らくオレの頭がなにがしかの電波を受信したとかじゃなくて、きっとユニの力に依るものだ。
そしてあの白蘭とかいうのも実在してるってこと……だとすれば。

「ゔお゙ぉい!今すぐオレの言う奴らを保護しろぉ!『白蘭』『ブルーベル』『桔梗』『ザクロ』『デイジー』『トリカブト』の6人だぁ!!」
「は、はぁ!?」
「良いから早くしろっ!いいか、保護したら真っ直ぐヴァリアーのアジトに連れてこい!!」
「わ、わかりましたっ!!」

オレの殺気に押し出されるように出ていった部下を見送り、すぐに電話を掛ける。
記憶が降ってきたってことは、沢田達が過去に帰ってきたってことだ。
今まで行方不明だった理由がわかったのは良いが、色々と仕事が増えたことは間違いない。
数秒の呼び出し音の後、女性の声が電話に出た。

『はい、沢田ですが……』
「お忙しいところ申し訳ありません。先日お邪魔させていただいたスペルビ・スクアーロというものですが」
『あらぁ!この間の……。ついさっきツナたちも帰ってきて、ご迷惑をおかけしました~!』
「いえ、その節はこちらこそご迷惑をおかけして申し訳ございません。なにぶん突然のことだったので。……と、申し訳ありませんがその事で綱吉君に話があるのですが」
『そうだったんですか?今代わりますね~』

……オレの顔は今げっそりしてるんだろうな。
こんな風に敬語で、一般人と話すことなんて滅多にねーから、疲れることこの上ねえ……。
ちなみに沢田達は、沢田家光に無理矢理イタリア旅行に連れていかれたことになっているので、あしからず。

『……えーと、もしもし?』
「沢田かぁ?」
『その声……スクアーロ!?』
「ついさっき、10年後に起こった戦いの記憶が降ってきた……。お前たちが行方不明だった理由がやっとわかったぜぇ……」
『あ、それ!スクアーロが行方不明の間うまく誤魔化してくれてたんでしょ!?ありがとう!本当に助かったよ……』
「それについて、お前以外の守護者どもにも話合わせるように伝えとけぇ」
『あ、うん。わかった……、ってちょっ!やめろよリボーン!!』
『ちゃおっすスクアーロ!!ママン達を心配させずに済んだぞ。助かった』
「リボーンだなぁ?その事はもういい。それより、テメーらには後々、話を聞きに行くことになるだろうぜぇ。それと、白蘭たちについてはこっちで処理しておく」
『さすが、ガットネロは有能だな』
「……ああ」

そういや、そっちの問題もあったんだっけか。
くそっ!めんどくせぇなぁ!!

『今度ねっちょり話を聞かせてもらうぞ』
「……ちっ、わかった」
『そんなことよりスクアーロ。お前は、女ってことであってんのか?』
「……くそっ、そうだぁ。文句あんなら殺すぞ」
『確認しただけだぞ。確認ついでにオレの愛人にでもなるか?』
「ガキに興味はねーよ。とにかくボンゴレにもしっかり報告いれとけぇ。じゃあなぁ」

あの赤ん坊と話すのは、本当に疲れる……。
一度電話を切ってから、今度はヴァリアーに掛けた。
ルッスーリアに幾つか指示をだし、電話を切る。
ベッドに突っ伏して眠りたいところだったが、重たい体を引きずって仕事に向かった。
まずは行方不明だった奴らの家にお詫びの品を送って、それからユニとその母アリアを見つけて話を聞かねーと……。
山積みの仕事に、頭を抱えたくなった。
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