10年後

「見てくれが変わっただけじゃ、オレには勝てないぞ」
「ハハハ、誰が見てくれだけだって?ふざけるのもいいかげんに、……しなよ!!」

そうして、本当に全力となった二人の戦いが始まる。
そして、ユニの命の炎も、本格的に燃え始めた。
全員がユニを止める。
だがみんな、心の底ではわかっているのだ。
平和な世界を取り戻すためには、白蘭の力から逃れるには、もうこれしか方法がないことを。
ユニが命を懸けて遂げようとしている、その行為を止めるのは、むしろ冒涜だ。

「我々も手をこまねいてはいられません。結界を破り、ユニを脱出させるのです」
「ああ、そうだな!ユニがどうするにせよ、あそこは危険すぎる!!」
「だがよ、この結界は……ビクともしねーぜ!!」

当たり前だ!
ただでさえ頑丈な炎の結界に、違う場所からバラバラに攻撃したって大した効果はない。
ふと、目の端に青いイルカが写る。
イルカ……そうだ、「ボックス間コンビネーション発動システム」!!
あれでまとめて攻撃をすれば!
思い付きを試すために、急いでイルカの持ち主とおぼしき、バジルを取っ捕まえた。

「え、スクアーロ殿!?」
「殿……いや、とにかく、このイルカで全員の力を纏めて一ヶ所に当てろぉ!!できるなバジル!!」
「そ、そうか!わかった!みんな!拙者のところまで来てくれ!」

オレもアーロを出して力を貸す。
間に合うか……っ?

「よし!今です!!」

総勢10体の匣兵器の炎が雨イルカに集まる。
これは……圧巻だな……。

「よし、いこうアルフィン!!うおお!スーパー・ノヴァ・オーシャン!!」

凄まじい衝突音が響くが、今の攻撃で出来たのは、人一人がギリギリ通り抜けられる程度の小さな傷だけ。
周囲に簡易的な炎の結界を張った状態のユニには通れない。

「くそっダメだ!!一時的な小さなキズしか与えられない!!」
「こんだけありゃあ充分だぜ」

誰だ!?
ひとつの影がその隙間から結界の中に入った。
あいつは……γ?

「よお、姫」
「γ!」
「やっと会えたのにまたすぐいっちまうなんて、水くさいぜ。……オレの炎も使ってくんねーか?」

そう言ったγは、優しくユニを抱き締めた。
そうか、あいつ、ユニと運命を共にする気で……!!
γがユニに耳打ちをする。
炎が一段と明るく燃え上がる。
そして、

「――……」

ユニが1つ、笑みを残し、彼らの姿は、唐突に消え失せた。

「γ!!ユニー!!」

二人は、アルコバレーノの復活の代償として、その命を消した。
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