10年後

「何の遊びだい?綱吉クンのソレは。誰なのかな、その男は?」
「ボンゴレファミリーの初代のボス、ボンゴレI世」
「I世?ハハハ、からかうのもいい加減にしてくれる?そんな大昔のご先祖様を、ホログラムで投射するなんて、悪趣味にもほどがあるよ」

自身の問い掛けに丁寧に答えたユニの答えを、白蘭は笑って切り捨てた。
そう、本来なら、あるわけないことなのだ。
だがここにいる誰もが、ユニの言葉を疑うことは出来なかった。

「ホログラムではないです。あなたもそう感じているはずです。これはトゥリニセッテの中でも、あなたのマーレリングにも、私のおしゃぶりにも起きない、ボンゴレリングの、『縦の時空軸の奇跡』」

縦の時空軸の奇跡……。
それは、平行世界を渡るマーレリングの能力とも、様々な場所に断続的に現れるアルコバレーノの能力ともちがう、ボンゴレの血筋、血統の持つの能力。
そして……。
オレはチラリとザンザスを窺う。
きっとその能力こそが、ザンザスがボンゴレリングを継げなかった理由……。
再び、I世が口を開いた。

――さあX世、おまえの枷をはずそう――

枷を外す、そう言ったI世はリングの上に手の甲を翳す。
ボンゴレリングは、2代目の時から、継承のために2つへと分けられた。
それが現在のハーフボンゴレリング。
その分割できる構造を作るために抑えられた力が、今I世の手により、解放される……。
リングが光輝く。
感じる力はこれまでの比じゃない!
その光が収まった後には、今までとは形の違うボンゴレリングがあった。

「これが原型のボンゴレリング!!」
――X世、マーレの小僧に一泡吹かせてこい――

最後にI世はそれだけ言うと、姿を消した。

「ハハッ、相当ふざけたご先祖だね!!」

バカにするように言った白蘭はしかし、次の瞬間には背後から沢田に吹き飛ばされていた。

「ふーん、少しはできるように……なったのかな!?」

吹っ飛ばされはしたが、白蘭のダメージは薄そうだった。
上から落ちるように沢田に攻撃を仕掛けた白蘭と、沢田の形態変化した匣兵器がぶつかる。
凄まじいパワー同士のぶつかり合い。
だがそこから立ち直り、先に攻撃に移ったのは沢田だった。

「バーニングアクセル!!」

最高出力で放たれた炎の拳に、白蘭は再び拍手で防ごうとするが、相殺しきれず、掌の皮が弾ける。
二人の力関係は逆転していた。
後ろへ下がり距離をとろうとする白蘭よりも早く、沢田が背後に周り、また炎の拳を放つ。
ダメージを食らった白蘭の、背中から生える炎の羽根を沢田が掴み、そのまま脳天に踵を落とす!
羽根は千切れ、白蘭は地面に沈んだ。
これなら行ける……勝てるかもしれない!!
この強さなら、白蘭にだってきっと勝てる……!!

「どうした白蘭。翼がなければただの人か?」

沢田の皮肉ったような言葉に返ってきたのは、狂ったような笑い声。
土煙が晴れ、現れた白蘭の背中にあったのは、白く美しい翼ではなく、黒々とした、吹き出す血のような翼だった。

「すごいよそこの綱吉クン。君は無数のパラレルワールドの中で、唯一僕に血を吐かせた個体だ!!いやあ、うれしいなあ。こんな日が来るとはねー。何が嬉しいって……、生まれてはじめて、全身の力を使いきることができる!!」

人の皮が剥がれ、悪魔が笑顔を覗かせた瞬間だった。
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