10年後
川平不動産前、と言っても、暴れまわった真6弔花のお陰で、その店自体は見るも無惨なほどに破壊されてしまっているが、とにかく川平不動産前にて、甲高い女性の声が何事かを叫んでいた。
「だーかーらー!うちのスクちゃんはどこにいるのって聞いてるのよ!!」
「す、スクちゃん!?」
「そーよスクちゃん!!」
「おいγ!誰なんだよこの女は!!」
見知らぬ女の人に詰め寄られる綱吉。
そして彼女をつれてきたγに怒りを露に詰め寄る獄寺という、シュールな絵面が繰り広げられていた。
ユニを追って来た真6弔花の三人を何とか退け、ジッリョネロの者達が再会を喜ぶのも束の間、彼女は突然現れた。
見るからに戦闘員ではないが、随分と慣れた様子でγ達と話す彼女に、綱吉達が不信感を抱くのは当然のことだろう。
尋ねられたγは、苛立ちを露にその正体を答えた。
「ヴァリアーとの繋ぎ役だ!!」
「はあっ!?」
「太猿の女として潜り込んできたんだよ!!姫を助けることを条件に、情報流したりしてやってたんだ!!」
「そーよっ!スクちゃんに頼まれて特別にこの冴えない男たちを助けてやってたのっ」
「てめーこのアマ!!オイラたちのどこが冴えねーんだ!!」
「マナーがなってないところとかよ」
「それはっ!……っそうかもしんねーけど!!」
認めるんだ。と、全員が思ったことだろう。
しかしここで綱吉があることに気付く。
「ていうか、ヴァリアー?スクちゃん……?もしかして、……スクアーロのこと?」
「そうよ!スペルビ・スクアーロ!!あの子に頼まれて色々とやってたのよ。情報を流したり、コイツらに協力させたりね」
そう言えば、ルッスーリアもスクアーロのことをそう呼んでいた気がする。
しかしあのスクアーロに、『スクちゃん』とか、『あの子』とか、そんな言葉をよく使えるものだ。
後ろの方で、野猿が舌を出して彼女を馬鹿にしている。
目敏くそれを見つけ、彼の脳天を人差し指の間接でグリグリと圧しながら、彼女は再度質問した。
「で?スクちゃんはどこにいるの?」
「あ、その、スクアーロは……」
その質問に、綱吉はまごつく。
代わりにユニが答えた。
「スクアーロさんは、私達を逃がすためにアジトに残られました……。今は、山本さん達が様子を見に戻っています」
「……そう、あの子がね」
答えを聞いた彼女は、そのまま無言で考え込んでしまった。
黙って口許に手を当てるその様子を見る分には、彼女はかなりの美人に見える。
口を開くと途端に騒がしくなるため、黙っていると非常に精神に優しい。
徐に口を開いた彼女は、酷く真剣な顔をしていた。
「そう、あの子、何か言ってた?」
「え?あ、『後から追っていく』って言ってました」
「そ、なら大丈夫ね!!」
だが綱吉の答えを聞き、彼女はころっと心配そうにしていた態度を変えて屈託なく笑う。
それに驚いたのは綱吉達である。
「どうしてですか?」
「あの子、嘘はつかないからね。まあ、怪我はしてるかもしれないけど、死んではいないでしょ」
その言葉からは、スクアーロに対する深い信頼がうかがえる。
「……スクアーロと、どういう関係なんだろうね」
綱吉の呟いたように、俄然二人の関係が気になってくると言うものだろう。
あれこれと邪推をする綱吉に、こそこそと獄寺が答えた。
「そりゃやっぱり、アイツのこれっすよ10代目!!」
獄寺の指を見ると、小指だけがピンと立てられている。
『表現が古いよ獄寺君』というツッコミを飲み込んで、綱吉もまた神妙な面持ちで頷いた。
つまり二人は男女の関係であると言いたいのだろう。
「そうかも……。いや、でも、それならわざわざミルフィオーレにスパイなんて行かせるかなぁ?」
「あの女も、ヴァリアーの関係者なんじゃないっすか?」
こそこそと推測が交わされているその横で、γとユニも会話を交わす。
「姫、彼女のお陰で、ミルフィオーレ日本支部がテレポートしたときに巻き込まれずに済みました。さっきの真6弔花の襲撃に駆け付けられたのも……」
「そうだったのですか……!」
γからそのことを聞いたユニは、パタパタと彼女に駆け寄り頭を下げた。
「γ達を助けてくださったそうで……、ありがとうございます!!」
「やだ、そんなんじゃないわよ!!私はスクちゃんに言われたことを伝えただけ。感謝するならスクちゃんに言いなさい!」
「いいえ!ミルフィオーレに入り込むなんて危険なことまでして私達を救ってくださったんです!スクアーロさんにはもちろんですが、あなたにも頭が上がりません……」
言葉通り、深く頭を下げるユニ。
だが彼女は、そんなユニの頬を優しく包み、顔を上げさせた。
「だから本当にいいんだってば。それに、あなたはこれから、やらなければならないことがあるんでしょ?」
「……はい」
「なら、こんなところで頭を下げている暇はないわ。顔を上げて、ね?」
「はい……、ありがとうございます!」
「よしよし、ユニちゃんがこんなに可愛く笑ってくれるのなら、スクちゃんが残った甲斐があるってもんよ!」
ニコッと笑い、ユニの頬から手を離した彼女は、ミルフィオーレが見付けづらいところまで案内するわ、と言って彼らを先導していく。
戸惑いながらも、全員が彼女についてゆき、その場にはボロボロに崩れた川平不動産だけが残った。
「だーかーらー!うちのスクちゃんはどこにいるのって聞いてるのよ!!」
「す、スクちゃん!?」
「そーよスクちゃん!!」
「おいγ!誰なんだよこの女は!!」
見知らぬ女の人に詰め寄られる綱吉。
そして彼女をつれてきたγに怒りを露に詰め寄る獄寺という、シュールな絵面が繰り広げられていた。
ユニを追って来た真6弔花の三人を何とか退け、ジッリョネロの者達が再会を喜ぶのも束の間、彼女は突然現れた。
見るからに戦闘員ではないが、随分と慣れた様子でγ達と話す彼女に、綱吉達が不信感を抱くのは当然のことだろう。
尋ねられたγは、苛立ちを露にその正体を答えた。
「ヴァリアーとの繋ぎ役だ!!」
「はあっ!?」
「太猿の女として潜り込んできたんだよ!!姫を助けることを条件に、情報流したりしてやってたんだ!!」
「そーよっ!スクちゃんに頼まれて特別にこの冴えない男たちを助けてやってたのっ」
「てめーこのアマ!!オイラたちのどこが冴えねーんだ!!」
「マナーがなってないところとかよ」
「それはっ!……っそうかもしんねーけど!!」
認めるんだ。と、全員が思ったことだろう。
しかしここで綱吉があることに気付く。
「ていうか、ヴァリアー?スクちゃん……?もしかして、……スクアーロのこと?」
「そうよ!スペルビ・スクアーロ!!あの子に頼まれて色々とやってたのよ。情報を流したり、コイツらに協力させたりね」
そう言えば、ルッスーリアもスクアーロのことをそう呼んでいた気がする。
しかしあのスクアーロに、『スクちゃん』とか、『あの子』とか、そんな言葉をよく使えるものだ。
後ろの方で、野猿が舌を出して彼女を馬鹿にしている。
目敏くそれを見つけ、彼の脳天を人差し指の間接でグリグリと圧しながら、彼女は再度質問した。
「で?スクちゃんはどこにいるの?」
「あ、その、スクアーロは……」
その質問に、綱吉はまごつく。
代わりにユニが答えた。
「スクアーロさんは、私達を逃がすためにアジトに残られました……。今は、山本さん達が様子を見に戻っています」
「……そう、あの子がね」
答えを聞いた彼女は、そのまま無言で考え込んでしまった。
黙って口許に手を当てるその様子を見る分には、彼女はかなりの美人に見える。
口を開くと途端に騒がしくなるため、黙っていると非常に精神に優しい。
徐に口を開いた彼女は、酷く真剣な顔をしていた。
「そう、あの子、何か言ってた?」
「え?あ、『後から追っていく』って言ってました」
「そ、なら大丈夫ね!!」
だが綱吉の答えを聞き、彼女はころっと心配そうにしていた態度を変えて屈託なく笑う。
それに驚いたのは綱吉達である。
「どうしてですか?」
「あの子、嘘はつかないからね。まあ、怪我はしてるかもしれないけど、死んではいないでしょ」
その言葉からは、スクアーロに対する深い信頼がうかがえる。
「……スクアーロと、どういう関係なんだろうね」
綱吉の呟いたように、俄然二人の関係が気になってくると言うものだろう。
あれこれと邪推をする綱吉に、こそこそと獄寺が答えた。
「そりゃやっぱり、アイツのこれっすよ10代目!!」
獄寺の指を見ると、小指だけがピンと立てられている。
『表現が古いよ獄寺君』というツッコミを飲み込んで、綱吉もまた神妙な面持ちで頷いた。
つまり二人は男女の関係であると言いたいのだろう。
「そうかも……。いや、でも、それならわざわざミルフィオーレにスパイなんて行かせるかなぁ?」
「あの女も、ヴァリアーの関係者なんじゃないっすか?」
こそこそと推測が交わされているその横で、γとユニも会話を交わす。
「姫、彼女のお陰で、ミルフィオーレ日本支部がテレポートしたときに巻き込まれずに済みました。さっきの真6弔花の襲撃に駆け付けられたのも……」
「そうだったのですか……!」
γからそのことを聞いたユニは、パタパタと彼女に駆け寄り頭を下げた。
「γ達を助けてくださったそうで……、ありがとうございます!!」
「やだ、そんなんじゃないわよ!!私はスクちゃんに言われたことを伝えただけ。感謝するならスクちゃんに言いなさい!」
「いいえ!ミルフィオーレに入り込むなんて危険なことまでして私達を救ってくださったんです!スクアーロさんにはもちろんですが、あなたにも頭が上がりません……」
言葉通り、深く頭を下げるユニ。
だが彼女は、そんなユニの頬を優しく包み、顔を上げさせた。
「だから本当にいいんだってば。それに、あなたはこれから、やらなければならないことがあるんでしょ?」
「……はい」
「なら、こんなところで頭を下げている暇はないわ。顔を上げて、ね?」
「はい……、ありがとうございます!」
「よしよし、ユニちゃんがこんなに可愛く笑ってくれるのなら、スクちゃんが残った甲斐があるってもんよ!」
ニコッと笑い、ユニの頬から手を離した彼女は、ミルフィオーレが見付けづらいところまで案内するわ、と言って彼らを先導していく。
戸惑いながらも、全員が彼女についてゆき、その場にはボロボロに崩れた川平不動産だけが残った。