10年後

「ったく、ガキがぁ!ネクタイくらい結べるように練習しとけ!!」
「あはは、次会うときにはできるようにしとくのな!!今結んでくれたので覚えたしよ!」
「本当かぁ?」
「あー、……たぶん?」
「はぁー……、ったく」

歪んだネクタイを直してやり、完成、とばかりに手の甲で胸元を叩く。
ため息つくと幸せ逃げるのなー、と言ってるこいつは幸せを逃がしている元凶が自分だと確実に理解していない。
バスっと頭を叩き、気合い入れろ、と叱る。
このお気楽はいい加減どうにかならないものか。
先に山本を送り、オレは自分の装備をチェックする。

「っし」

準備は万端、覚悟も上々。
後は戦いに臨むだけだ。
羨ましそうに、じーっと見てきていた跳ね馬なんて無視だ、無視。
ついついっと隊服の端を引っ張ってきたのを、ぺしっと叩いて部屋を出る。
全員が集まっているはずの部屋に着くと、奴らは既に揃いのスーツを羽織って準備を整え終えていた。

「いくぞ」
「おお!!」

全員、準備できているようだ。

「スクアーロ遅いのなー」
「文句あんのかぁ?」
「別にねーけどよ」

オレに気付いた山本が軽口を叩く。
緊張でガチガチでないだけ良い、と考えよう。

「あ、あの、スクアーロ!……さん」
「呼び捨てで良いぞ。……なんだぁ?」
「いや、その……、今日は宜しくお願いします!!」

話しかけてきた沢田は山本とは正反対にカチコチだ。
……10年前っていやぁリング争奪戦のすぐあとだっただろうし、この態度もむしろ普通なのかもしれないが。

「今回のボスはてめぇだ沢田。……だが、必要以上に緊張するな」
「はい!!……へ?」
「励ましてくれてんだよな、スクアーロ!」
「リラックスしろっつっただけだぁ」

ぽんぽんと頭を撫でると、少し沢田から力が抜ける。
リボーンの掛け声で全員が歩きだした。
向かうは並盛神社。
チョイス、当日のことであった。
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