10年後

その日、ボンゴレアジトでは、ある者は修業に勤しみ、ある者は機械の製作に精を出し、ある者はそれを見守り、ある者は彼らを支えるべく家事に勤しんでいた。
4日後の決戦に備え、着々と戦力の増強が行われている。
静かながらも凛とした空気の張り詰めるそこに、突如喧騒が舞い降りた。

―― ドォオンッ!!!

「な、何だ!?」
「まさか、ミルフィオーレが!!」

何かが爆発する音、鳴り響く警報音。
突然のことに顔を見合わせた者達は、その正体を見て、唖然と口を開けた。

「ゔお゙ぉい!!脇があめぇぞぉ!」
「わっ!ちょっ!?逃げるのなみんな!!」

青い炎を撒き散らしながらこちらへと駆けてくるのは、ボンゴレ雨の守護者、山本武。
それに続いて、暴れながら走ってくるのは、ヴァリアー作戦隊長スペルビ・スクアーロ。
壁に張り付くようにして道を開けた者たちを尻目に、二人は攻防を繰り返しながら奥へ奥へと走っていく。

「……って!ヤバいよ!あっちには食堂が!!」
「!!早く行きましょう10代目!!」
「極限に京子たちが危険だ!!」
「……!!」

しかし彼らが追いかけた先には……

「み、見付けたのなー!!」
「ちっ、運がよかったな山本ぉ!!」
「へへー!」

何故か鷹を捕まえて上機嫌な山本と、不機嫌に舌を打ったスクアーロ。
そして驚いたように二人を見つめる京子、ハル、イーピン、ビアンキだった。

「……その鷹、あなたのだったのね」
「毒サソリかぁ。この鷹はオレの匣兵器の1つだぁ」

そう言って匣に鷹を戻したスクアーロは、手に持っていた剣をコートの内側にしまった。

「今日からこのアジトで修業だぁ。30分休憩をとれ」
「本当か!?やったぜー!これで暖かい布団で寝れるのな!!」
「寝る暇があると思ってんのかぁ?」
「……え?」
「ゔお゙ぉい!邪魔したな。邪魔ついでに誰かアジトの中、案内してくれねぇか」
「え!?スクアーロオレ寝る暇もねーの!?」
「……」
「何で黙るのな!?」

まるで漫才である。
しかも山本がツッコミ。
というか、誰かがスクアーロの案内しなきゃいけないのだ。
誰を生け贄に……、いやいや、誰がやることになるのか。

「なら私が案内するわ」
「アネキっ!?」
「あ、じゃあ私たちも行きます!」
「はいっ!みんなで案内してあげましょう!」
「京子ちゃん!ハル!?」
「助かるぜぇ」

ハラハラと見守るツナ達を横に、トントン拍子に事が決まっていく。
ていうか京子ちゃんたち、スクアーロのこと恐くないの!?

「つ、綱吉君!!いったい何が……、あ!」
「てめーは……入江正一だな?」
「スペルビ・スクアーロ!!君と山本君は外で修業してたんじゃ!?」
「今日からここで修業する。それと入江……、ザンザスからてめーに伝言だ」

体を強張らせる正一に、スクアーロが近付いていく。
そして、
――ガツン

「いっ!!!」
「もし白蘭をかっ消すことができなかったら、てめーも殺す」
「んなっ!?」
「因みに拳骨は今の数十倍の強さだったぜぇ」

まだたんこぶがある、と呟いたスクアーロの瞳が虚ろだ。
実際にXANXUSに殴られたのだろう。
彼もまた、苦労が絶えないらしい。
ていうか『てめーも』って、他は誰なんだ。

「間違いなく『も』にはツナも含まれてるだろーな」
「ひぃい!」

XANXUSを知る全員の顔がうっすら青くなる。

「と、とりあえず、えー、と……修業に戻る?」
「こいつ野放しにするんすか!?」
「でも今は一応、味方だし……」
「そうだぜ獄寺!!修業はスパルタだけど、スクアーロはいきなり噛みついてきたりしねーよ!」
「それに修業サボってXANXUSに殺されるなんてやだからね……。あはは……」

山本の中でスクアーロがどんな印象を抱かれているのかは甚だ疑問であるが、とにかく今は警戒する必要はないらしい。
むしろ今までより気合いを入れて修業しなくては。

「じゃあハルたちも行きましょう!!えーと……」
「スクアーロだ。スペルビ・スクアーロ」
「スクアーロさんですか!」
「まずは居住区から行きましょうか」
「じゃあ私達行くね、ツナくん!!みんなも修業頑張ってね!!」
「あ、うん!」

それぞれに別れて歩いていく。
山本は今のうちに寝るため、自室に向かった。
スクアーロの修業を想像し、ツナは身震いをする。
めちゃくちゃ厳しそう!!
ヴァリアーの中でも特にストイックな印象のあるスクアーロ。
いったいどんな修業を行うか考えただけで恐ろしかった。
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