10年後
「ゔお゙ぉい!!起きろぉ!」
「ふごっ!」
日の出と共にボディーブローで起こす。
飛び起きて、痛みに地面を転げ回る山本に、水浴びでもしてスッキリしてこいとタオルを渡す。
昨日は結局、体についた血を落とすくらいで、全身は洗っていなかったからな。
「んー……わかった、のな……」
寝起きのせいか、テンションがやや低い。
低血圧か。
「火でも起こしといてやるか」
秋に入ったばかりの日本はまだそこまで寒くはないが、それでも早朝の水浴びは堪えるだろうからなぁ。
「つっっっめてー!!!」
ほどなくして、近くの泉から悲鳴が聞こえてきた。
目は覚めただろうな。
「うぅ……冷たかったのな」
「朝飯食ったら始めるぞぉ」
「今日は何すんだ……?」
昨日のショッキングな修業のせいか、恐る恐る尋ねる山本に、今日は普通に戦うと告げた。
「普通に?」
「てめーはまだまだ経験不足だからなぁ。ボックスの使い方も、戦い方も、実戦で覚えながら経験を蓄積していく」
「わかったのなー」
……顔にそっちの方が気が楽、と書いてあるのは見逃してやるぜ。
「朝飯はなんだ?」
「サンドウィッチ」
「なんかおしゃれなのな!」
「普通じゃねえか?」
因みに昨日の夕飯で使いきらなかったうさぎ肉は簡単な薫製にしてしまってある。
後でアジトに、土産にもって帰ろう。
「スクアーロって思ってたより少食なんだなー」
「成長期のガキと比べられてもなぁ。だいたい年取ると朝から重いもんは食えねー」
「……なんか、過ぎた時間を感じるな」
朝食を食べ終わり、まずオレはボンゴレ匣を開くように言う。
「へへ、ようやくだな!!」
「いいから開けぇ」
「おう!ボンゴレ匣、開匣!」
透き通ったブルーの炎が匣に注入される。
そして匣が開き、雨の炎が弾けとんだ。
「お、小次郎!……に、犬もいるのか!」
「……小次郎ってのは燕の名前かぁ?」
「おー!カッコいいだろ♪」
「悪くねーんじゃねえか」
正直人の匣の名前なんてどうでも良いが、本人が気に入ってるなら良いんだろう。
「んー……、よし!こいつは次郎だ!!」
「……安直じゃねえか?」
「じゃースクアーロは何て名前つけてんだ?てか、どんな匣使ってんのな?」
オレの使う匣は3つ……。
思い出してみるとろくに名前なんざつけてねえ。
「オレのは今関係ねーだろぉ」
「ちぇー」
「とにかく、匣の開匣については問題なさそうだな。ずいぶんとなついてるようだし」
「小次郎とは前の匣から一緒だし、次郎も良い奴だからな!」
山本に甘えてすりよる次郎。
匣兵器の癖に飼い主に似てとぼけた奴だ。
「で、今日は何するんだ、スクアーロ?」
「あ゙あ?そうだな、今日はボンゴレ匣での戦いになれるために……、鬼ごっこを行う」
「……鬼ごっこ?」
「範囲はこの森の中、鬼はオレだぁ。お前はオレに触られたらゲームオーバー、必死に逃げやがれ」
「ちょっ!何で鬼ごっこ!?これ修業だろ?」
「鬼ごっこってのは分かりやすいように言っただけだぁ。てめーは匣なり何なり使ってオレから逃げる。いいかぁ、1度でも触れたらゲームオーバーだからなぁ!」
「な、なるほどな……」
「5分間やるぜぇ。その間に自分の匣兵器の能力を見極めろ」
オレが地面に座り込み、目を閉じたと同時に、山本の気配が遠ざかった。
あの次郎とかいう犬、刀を3本背負っていた。
ということは、奴の攻撃方法は初代ファミリー雨の守護者と同じ、変則四刀。
さて、どう攻めるか……。
――ピピ……ピピピ……!!
「5分経ったな。」
立ち上がり、剣を抜く。
足跡を見付け、その跡を追う。
気分は狩人だ。
自分の周りに、薄く雨の炎を張って、罠の有無を確認しつつ走る。
「っ!……見付けたぜぇ」
数メートル先に人の気配を見付けて、忍び寄った。
けたたましい犬の声が聞こえて、こちらの動きを察知されたことに気付く。
「やべっ、もう見つかった!?」
「ゔお゙ぉい!!トロいぞぉ!!」
オレが姿を見せてからようやく逃げ出した山本の背中に蹴りを叩き込む。
「うわっ!あっぶね!!」
「隙だらけだぁ!!」
「つってもなー……」
「ゔお゙ぉい!てめーの匣はお飾りかぁ!?」
「あ!」
行くぜ次郎!との掛け声で、次郎は山本に刀を投げ渡す。
器用な犬だ。
投げ渡された刀には、刀身がついてなかった。
が、山本が握ると同時に柄から炎が溢れる。
「へへ、こっからが本番だぜ!」
「当たり前だぁ!!」
剣を構えて、視線を尖らせた野郎に、こちらも隙なく構える。
「行くぜ!!」
時雨金時と、雨の刃が同時に斬りかかってくる。
バックステップでそれを避け、木の幹を利用して跳ね回り、翻弄する。
「早いのなっ!」
「こっちだぁ!」
「っ!!」
山本が振り返るが、時すでに遅く、ブーツの底が山本の肩を捉えた。
「ってぇ~!!」
「まだまだ使い方がなってねぇ。5分間やるからもっとよく考えろ」
容赦ないのな……、などと言いながら、オレが座り込むと同時に、素直に姿をくらます。
同じことを夕暮れまで続けていれば、ボンゴレ匣の使い方にもなれてきたらしく……。
「頼んだぜ小次郎!」
雨燕の降らす雨が邪魔をする。
その間に、3本の新しい刀を使って雨の炎を噴射し、その推進力で山本が移動する。
「おお!ツナみてぇ!!」
「自分で自分に感心してんなぁ!」
剣で木々を斬り倒し、山本の進路を妨害したオレが手刀を決めるのと、セットしておいたタイマーがなるのと、同時だった。
「今日はここで終わりだぁ。」
「うぁー!結局1度も逃げ切れなかったのなー!」
山本は落ち込んでいるが、今日1日だけでのこの成長は中々のものだと思う。
本来ならヴァリアー新入隊員複数名対オレ一人で行う訓練だし、ここまで逃げ切る奴もなかなかいない。
「水でも浴びて汗流してこい」
「うぃっす師匠!」
元気よく駆け出していく後ろ姿に呆れた視線をやり、ため息をつきながら夕飯の準備に取りかかった。
「ふごっ!」
日の出と共にボディーブローで起こす。
飛び起きて、痛みに地面を転げ回る山本に、水浴びでもしてスッキリしてこいとタオルを渡す。
昨日は結局、体についた血を落とすくらいで、全身は洗っていなかったからな。
「んー……わかった、のな……」
寝起きのせいか、テンションがやや低い。
低血圧か。
「火でも起こしといてやるか」
秋に入ったばかりの日本はまだそこまで寒くはないが、それでも早朝の水浴びは堪えるだろうからなぁ。
「つっっっめてー!!!」
ほどなくして、近くの泉から悲鳴が聞こえてきた。
目は覚めただろうな。
「うぅ……冷たかったのな」
「朝飯食ったら始めるぞぉ」
「今日は何すんだ……?」
昨日のショッキングな修業のせいか、恐る恐る尋ねる山本に、今日は普通に戦うと告げた。
「普通に?」
「てめーはまだまだ経験不足だからなぁ。ボックスの使い方も、戦い方も、実戦で覚えながら経験を蓄積していく」
「わかったのなー」
……顔にそっちの方が気が楽、と書いてあるのは見逃してやるぜ。
「朝飯はなんだ?」
「サンドウィッチ」
「なんかおしゃれなのな!」
「普通じゃねえか?」
因みに昨日の夕飯で使いきらなかったうさぎ肉は簡単な薫製にしてしまってある。
後でアジトに、土産にもって帰ろう。
「スクアーロって思ってたより少食なんだなー」
「成長期のガキと比べられてもなぁ。だいたい年取ると朝から重いもんは食えねー」
「……なんか、過ぎた時間を感じるな」
朝食を食べ終わり、まずオレはボンゴレ匣を開くように言う。
「へへ、ようやくだな!!」
「いいから開けぇ」
「おう!ボンゴレ匣、開匣!」
透き通ったブルーの炎が匣に注入される。
そして匣が開き、雨の炎が弾けとんだ。
「お、小次郎!……に、犬もいるのか!」
「……小次郎ってのは燕の名前かぁ?」
「おー!カッコいいだろ♪」
「悪くねーんじゃねえか」
正直人の匣の名前なんてどうでも良いが、本人が気に入ってるなら良いんだろう。
「んー……、よし!こいつは次郎だ!!」
「……安直じゃねえか?」
「じゃースクアーロは何て名前つけてんだ?てか、どんな匣使ってんのな?」
オレの使う匣は3つ……。
思い出してみるとろくに名前なんざつけてねえ。
「オレのは今関係ねーだろぉ」
「ちぇー」
「とにかく、匣の開匣については問題なさそうだな。ずいぶんとなついてるようだし」
「小次郎とは前の匣から一緒だし、次郎も良い奴だからな!」
山本に甘えてすりよる次郎。
匣兵器の癖に飼い主に似てとぼけた奴だ。
「で、今日は何するんだ、スクアーロ?」
「あ゙あ?そうだな、今日はボンゴレ匣での戦いになれるために……、鬼ごっこを行う」
「……鬼ごっこ?」
「範囲はこの森の中、鬼はオレだぁ。お前はオレに触られたらゲームオーバー、必死に逃げやがれ」
「ちょっ!何で鬼ごっこ!?これ修業だろ?」
「鬼ごっこってのは分かりやすいように言っただけだぁ。てめーは匣なり何なり使ってオレから逃げる。いいかぁ、1度でも触れたらゲームオーバーだからなぁ!」
「な、なるほどな……」
「5分間やるぜぇ。その間に自分の匣兵器の能力を見極めろ」
オレが地面に座り込み、目を閉じたと同時に、山本の気配が遠ざかった。
あの次郎とかいう犬、刀を3本背負っていた。
ということは、奴の攻撃方法は初代ファミリー雨の守護者と同じ、変則四刀。
さて、どう攻めるか……。
――ピピ……ピピピ……!!
「5分経ったな。」
立ち上がり、剣を抜く。
足跡を見付け、その跡を追う。
気分は狩人だ。
自分の周りに、薄く雨の炎を張って、罠の有無を確認しつつ走る。
「っ!……見付けたぜぇ」
数メートル先に人の気配を見付けて、忍び寄った。
けたたましい犬の声が聞こえて、こちらの動きを察知されたことに気付く。
「やべっ、もう見つかった!?」
「ゔお゙ぉい!!トロいぞぉ!!」
オレが姿を見せてからようやく逃げ出した山本の背中に蹴りを叩き込む。
「うわっ!あっぶね!!」
「隙だらけだぁ!!」
「つってもなー……」
「ゔお゙ぉい!てめーの匣はお飾りかぁ!?」
「あ!」
行くぜ次郎!との掛け声で、次郎は山本に刀を投げ渡す。
器用な犬だ。
投げ渡された刀には、刀身がついてなかった。
が、山本が握ると同時に柄から炎が溢れる。
「へへ、こっからが本番だぜ!」
「当たり前だぁ!!」
剣を構えて、視線を尖らせた野郎に、こちらも隙なく構える。
「行くぜ!!」
時雨金時と、雨の刃が同時に斬りかかってくる。
バックステップでそれを避け、木の幹を利用して跳ね回り、翻弄する。
「早いのなっ!」
「こっちだぁ!」
「っ!!」
山本が振り返るが、時すでに遅く、ブーツの底が山本の肩を捉えた。
「ってぇ~!!」
「まだまだ使い方がなってねぇ。5分間やるからもっとよく考えろ」
容赦ないのな……、などと言いながら、オレが座り込むと同時に、素直に姿をくらます。
同じことを夕暮れまで続けていれば、ボンゴレ匣の使い方にもなれてきたらしく……。
「頼んだぜ小次郎!」
雨燕の降らす雨が邪魔をする。
その間に、3本の新しい刀を使って雨の炎を噴射し、その推進力で山本が移動する。
「おお!ツナみてぇ!!」
「自分で自分に感心してんなぁ!」
剣で木々を斬り倒し、山本の進路を妨害したオレが手刀を決めるのと、セットしておいたタイマーがなるのと、同時だった。
「今日はここで終わりだぁ。」
「うぁー!結局1度も逃げ切れなかったのなー!」
山本は落ち込んでいるが、今日1日だけでのこの成長は中々のものだと思う。
本来ならヴァリアー新入隊員複数名対オレ一人で行う訓練だし、ここまで逃げ切る奴もなかなかいない。
「水でも浴びて汗流してこい」
「うぃっす師匠!」
元気よく駆け出していく後ろ姿に呆れた視線をやり、ため息をつきながら夕飯の準備に取りかかった。