10年後
※グロ注意!※
「いいかぁ、簡潔に言う。てめーには1つ、重大な弱点がある。剣士になりきれねぇ甘さだぁ」
「剣士になりきれない甘さ?」
目的のものを回収し、山本の元へ戻ったオレは、開口一番にそう言った。
鸚鵡返しにする山本に、更に言い募る。
「この時代のお前も同じだった。オレは気にくわなかったが、それもてめーの一部と思い黙っていた」
「なっ……何だよ一体?」
この時代の山本も、剣か野球かはっきり決めずに、それでもボンゴレ二大剣豪の一人、と言われるまでの実力を持っていた。
好きなようにやることが奴にとっては一番なのかもしれない。
そう思っていたが、やはり決めてもらうしかねぇようだな。
「本当に強くなりてぇならやるこたぁ一つだぁ!!野球か剣か、どちらかを選べぇ」
「……いきなり進路指導かよ……」
「てめーには両方を同時にこなす才能がある!!だが剣はこなすもんじゃねぇ懸けるもんだぁ!!」
ま、偉そうなことを言ったところでオレにはこいつ以上の剣の才能も、基盤となる屈強な体もねーからな。
結局他の武器にも頼るしかねーから、純粋な剣士になるこたぁできねぇ。
だが剣士とは、何度も何度も刃を交わしてきた。
奴らが剣に人生を懸けていることは、よくわかる。
「……それなら、もう決まってる。剣一本で行く」
もう、覚悟は決まっていたのか。
「幻騎士戦はさ、ぶっちゃけ勝つ自信はあって、その後みんなで過去に帰るつもりだったんだ。でも力の差を嫌ってほどみせつけられてボロ負けして、意識が飛んでく中でオレ……、すんげー後悔したんだ……。剣への突っ込みが甘いから、親父の時雨蒼燕流を汚しちまったって……。……それによぉ、仲間のために、全力をつくせてなかったんじゃないのかって……。あんな思いはもうゴメンだぜ」
思いを吐露していく山本の表情は暗かったが、その思いは必要なものであるはずだ。
「でも不思議なもんでさ。剣だけでいくって決めたら気がスって楽になってさ」
「それで負けたのにヘラついてやがったのか……」
まぁ、戦いが終わって4日も経ってしまっていたのだ。
気持ちに整理がついていても、おかしくはねーのか。
「ま、さみしさもあんだけどな。期間限定とはいえ野球をスッパリ忘れんのは」
「期間限定!?」
「ああ、過去に帰るまでだぜ!」
ああ、そうか、忘れていた。
山本武はこんな奴だったな……。
「はぁー……ったく、今回はもうそれでいい!きっちりやれよ!」
「あり?オレ、てっきりスクアーロに怒られるんじゃないかって思ってたんだけど……」
「怒っても無駄だと理解してるからなぁ……」
「そっか、スクアーロとオレ、10年も付き合いあるんだもんなー」
「一度言い出したら聞かねーことくらい知ってるぞぉ」
大きくため息をついた。
ま、期間限定とはいえ、大きな成長だろう。
「……それからもう1つ、てめーに戦士として足りねーもんをやる」
「ん?まだあんのか?」
「さっきのは剣士としての弱点。今からのは戦士としてのもんだぁ」
そしてオレは背後においてあったずだ袋を引っ張り出す。
「なースクアーロ……。それ、動いてねぇ?」
「動いてるぜぇ、中身はウサギだぁ。捕まえたてホヤホヤの活きの良い奴だぁ」
袋から出したのは茶色い野うさぎ。
それと一緒にサバイバルナイフを渡す。
「それでウサギを捌け」
「え、」
「やり方は教えてやるが、できなければてめーの飯は抜きだ」
「ええ!?」
ウサギとナイフを掴んで呆然と立ち尽くす山本に、まずは柄で頭を潰せと指示を出す。
「む!無理無理!!オレこんなん無理だって!!」
「なら一生飯は食わせねぇ」
「んなっ!?」
ウサギはアジトに寄る前に罠を仕掛けておいたもんだ。
まさかこんな早くにかかるとは思わなかったが……、長らく人の入っていなかったせいか、それとも何らかの理由で人に対する警戒心をなくしてしまったのか。
とにかく、ウサギをさばかせることで、命と向き合ってもらおうとの粋な計らいである。
グロい?
オレたちだって毎日こうやって殺された動物食ってるだろう。
「す、スクアーロ……!生きてるっ!!」
「死んだら臭くなるしなぁ」
「で、でもよぉ!」
「男ならウジウジ言ってねぇでやれ!殺すぞ!」
「うっ……」
ナイフの代わりにハンマーを渡してやると、山本は渋々手に取り、目をつぶった。
「……っごめんな!」
ハンマーが降り下ろされる。
うさぎの頭が鈍い音を立てて潰れた。
「うっ……!」
「もう一回だぁ」
もう一度、ハンマーが落ちる。
さっきよりも水っぽい音が響いた。
うさぎの手足がビクビクと痙攣して引き攣る。
「次、腹を割け」
「……っ、!」
山本は四苦八苦しながら、指示通りに血抜きを行い、皮を剥いでいく。
ある程度解体したところで、オレは肉の調理をするために簡易式の料理セットを取り出し始めた。
「いいか山本、オレたちの握るものは命を奪う凶器だ。凶器は切る相手を選べねぇ。選ぶのはオレたちだ」
「うん……」
「オレたちはいつだって、死んだ命の上に立ってる。それを忘れるなぁ」
「ああ……」
その後、二人でシチューを作って食べた。
オレが料理を出来ることに驚き、青ざめながら口にしたシチューの美味しさに驚き、空に星が輝き始める頃には、山本はすっかり眠ってしまっていた。
「マフィアってのにはどうやったって殺しが付きまとってくる。それが嫌なら、さっさと足洗っちまえ……」
背丈の縮んだ山本の頭は、オレの頭と同じくらいの高さにある。
起こさないように優しく撫でて、寝袋の上に横たわらせた。
赤々と燃える火の前に座り込み、明日はどうしようかと考える。
夜は静かに、更けていった。
「いいかぁ、簡潔に言う。てめーには1つ、重大な弱点がある。剣士になりきれねぇ甘さだぁ」
「剣士になりきれない甘さ?」
目的のものを回収し、山本の元へ戻ったオレは、開口一番にそう言った。
鸚鵡返しにする山本に、更に言い募る。
「この時代のお前も同じだった。オレは気にくわなかったが、それもてめーの一部と思い黙っていた」
「なっ……何だよ一体?」
この時代の山本も、剣か野球かはっきり決めずに、それでもボンゴレ二大剣豪の一人、と言われるまでの実力を持っていた。
好きなようにやることが奴にとっては一番なのかもしれない。
そう思っていたが、やはり決めてもらうしかねぇようだな。
「本当に強くなりてぇならやるこたぁ一つだぁ!!野球か剣か、どちらかを選べぇ」
「……いきなり進路指導かよ……」
「てめーには両方を同時にこなす才能がある!!だが剣はこなすもんじゃねぇ懸けるもんだぁ!!」
ま、偉そうなことを言ったところでオレにはこいつ以上の剣の才能も、基盤となる屈強な体もねーからな。
結局他の武器にも頼るしかねーから、純粋な剣士になるこたぁできねぇ。
だが剣士とは、何度も何度も刃を交わしてきた。
奴らが剣に人生を懸けていることは、よくわかる。
「……それなら、もう決まってる。剣一本で行く」
もう、覚悟は決まっていたのか。
「幻騎士戦はさ、ぶっちゃけ勝つ自信はあって、その後みんなで過去に帰るつもりだったんだ。でも力の差を嫌ってほどみせつけられてボロ負けして、意識が飛んでく中でオレ……、すんげー後悔したんだ……。剣への突っ込みが甘いから、親父の時雨蒼燕流を汚しちまったって……。……それによぉ、仲間のために、全力をつくせてなかったんじゃないのかって……。あんな思いはもうゴメンだぜ」
思いを吐露していく山本の表情は暗かったが、その思いは必要なものであるはずだ。
「でも不思議なもんでさ。剣だけでいくって決めたら気がスって楽になってさ」
「それで負けたのにヘラついてやがったのか……」
まぁ、戦いが終わって4日も経ってしまっていたのだ。
気持ちに整理がついていても、おかしくはねーのか。
「ま、さみしさもあんだけどな。期間限定とはいえ野球をスッパリ忘れんのは」
「期間限定!?」
「ああ、過去に帰るまでだぜ!」
ああ、そうか、忘れていた。
山本武はこんな奴だったな……。
「はぁー……ったく、今回はもうそれでいい!きっちりやれよ!」
「あり?オレ、てっきりスクアーロに怒られるんじゃないかって思ってたんだけど……」
「怒っても無駄だと理解してるからなぁ……」
「そっか、スクアーロとオレ、10年も付き合いあるんだもんなー」
「一度言い出したら聞かねーことくらい知ってるぞぉ」
大きくため息をついた。
ま、期間限定とはいえ、大きな成長だろう。
「……それからもう1つ、てめーに戦士として足りねーもんをやる」
「ん?まだあんのか?」
「さっきのは剣士としての弱点。今からのは戦士としてのもんだぁ」
そしてオレは背後においてあったずだ袋を引っ張り出す。
「なースクアーロ……。それ、動いてねぇ?」
「動いてるぜぇ、中身はウサギだぁ。捕まえたてホヤホヤの活きの良い奴だぁ」
袋から出したのは茶色い野うさぎ。
それと一緒にサバイバルナイフを渡す。
「それでウサギを捌け」
「え、」
「やり方は教えてやるが、できなければてめーの飯は抜きだ」
「ええ!?」
ウサギとナイフを掴んで呆然と立ち尽くす山本に、まずは柄で頭を潰せと指示を出す。
「む!無理無理!!オレこんなん無理だって!!」
「なら一生飯は食わせねぇ」
「んなっ!?」
ウサギはアジトに寄る前に罠を仕掛けておいたもんだ。
まさかこんな早くにかかるとは思わなかったが……、長らく人の入っていなかったせいか、それとも何らかの理由で人に対する警戒心をなくしてしまったのか。
とにかく、ウサギをさばかせることで、命と向き合ってもらおうとの粋な計らいである。
グロい?
オレたちだって毎日こうやって殺された動物食ってるだろう。
「す、スクアーロ……!生きてるっ!!」
「死んだら臭くなるしなぁ」
「で、でもよぉ!」
「男ならウジウジ言ってねぇでやれ!殺すぞ!」
「うっ……」
ナイフの代わりにハンマーを渡してやると、山本は渋々手に取り、目をつぶった。
「……っごめんな!」
ハンマーが降り下ろされる。
うさぎの頭が鈍い音を立てて潰れた。
「うっ……!」
「もう一回だぁ」
もう一度、ハンマーが落ちる。
さっきよりも水っぽい音が響いた。
うさぎの手足がビクビクと痙攣して引き攣る。
「次、腹を割け」
「……っ、!」
山本は四苦八苦しながら、指示通りに血抜きを行い、皮を剥いでいく。
ある程度解体したところで、オレは肉の調理をするために簡易式の料理セットを取り出し始めた。
「いいか山本、オレたちの握るものは命を奪う凶器だ。凶器は切る相手を選べねぇ。選ぶのはオレたちだ」
「うん……」
「オレたちはいつだって、死んだ命の上に立ってる。それを忘れるなぁ」
「ああ……」
その後、二人でシチューを作って食べた。
オレが料理を出来ることに驚き、青ざめながら口にしたシチューの美味しさに驚き、空に星が輝き始める頃には、山本はすっかり眠ってしまっていた。
「マフィアってのにはどうやったって殺しが付きまとってくる。それが嫌なら、さっさと足洗っちまえ……」
背丈の縮んだ山本の頭は、オレの頭と同じくらいの高さにある。
起こさないように優しく撫でて、寝袋の上に横たわらせた。
赤々と燃える火の前に座り込み、明日はどうしようかと考える。
夜は静かに、更けていった。