リング争奪戦

スクアーロがそう言ってからは、あっという間だった。
ベルフェゴールとマーモンの前に、ツナの守護者達が立ちはだかり、逃げ道を塞ぐ。
諦め、手を挙げた二人に、XANXUSは呪い殺すと叫ぶ。

「『血も掟も関係なく、誰よりもおまえを認めていたはずだよ』か。あのジジイと同じ、現実の見えない、甘いだけの言葉だな」

隣にいたスクアーロが、口を開いたかと思うと、そんなことを言った。

「オレも、9代目はそう思っていたと思うぜ……」
「……」

オレの返答に、スクアーロは冷めた目を向け、苦々しげに言った。

「跳ね馬……、血に恵まれてるお前らが、わかるはずもねぇ。才能があって、境遇に恵まれねぇ奴は、使われるだけ使われて捨てられるのが落ちなんだよ」
「そんなこと……!!」
「9代目のジジイは、ザンザスを愛してたつもりかもしれねぇが……、本人がどう思ってたとか、そんなこと関係ねぇだろ。ザンザスにジジイの血が流れてないのは変えようもない事実なのに、あの男はそれを伝えなかった……。そのせいで、ザンザスは要らねぇ教育を何年も受けてきて、本来なかったはずの命の危険にさらされ続けてきて、本来あったかもしれねぇ普通の生活をなくしたんだぁ……。それまでの人生が全て無駄だったと知って、怒らねぇ奴がいるのかよ……?」
「そ、れは……」

答えることは出来なかった。
スクアーロの言葉は正しかったから。
9代目の実子としてボンゴレに迎えられたザンザス。
2代目と同じ死ぬ気の炎を扱い、誰よりも後継者として相応しいと考えられていたザンザス。
他の候補者よりも、寄ってくる敵の数は多かっただろう。
他の候補者から刺客が差し向けられることもあっただろう。
しかしそれは全て、無駄だったのだ。
いや、無駄どころか、これでは他の候補者へ向かう敵を誘き寄せるための餌ではないか。
ザンザスたちは、人を殺しすぎた。
同情の余地などないと思っていたが……、こんな……。

「……『同情すんなカスが』。てめーらみてぇなお人好しに同情されても、オレたちの犯した罪はなくなりゃあしねぇし、ザンザスは血が繋がらないままだ……」

遠い目をするスクアーロに、言葉を呑む。
スクアーロの姿が、余りにも儚く見えて、思わずその肩を掴んだ。
同時に、スクアーロに胸ぐらを掴み上げられる。

「う、おゎ……!?」
「んなことより、あのガキどもはこれでこちらの世界の人間になったわけだぁ。殺しと裏切りと暗躍の渦巻く薄汚ねぇマフィアの世界に片足突っ込んだんだ。いずれ後悔するぜぇ。もしかしたら、てめーを恨むかもなぁ。あの時なぜ戦いを止めてくれなかったのかと、よぉ」

スクアーロのいう通りに、ツナ達にマフィアの世界というのはキツすぎるかもしれない。
だがオレは信じている。
あいつらが強い心で立っていてくれることを。
このマフィアの世界に輝く、真っ青な大空を広げてくれることを。

「ボンゴレの次期後継者となるのは、沢田綱吉氏とその守護者6名です」

チェルベッロによってツナの勝利が宣言される。
その言葉に安心したのか、ツナが意識を失った。
そして目の前にいたスクアーロも、ぐったりと力をなくす。
一気に場が慌ただしくなった。
怪我人達を病院へと運ぶ手配をしながら、漸く終わった戦いに、安堵の息をついたのだった。
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