リング争奪戦
時は過ぎ、嵐戦の真っ最中である。
オレの額のシワはこれまでにも増して深い。
ベルvs獄寺隼人。
途中までは圧していたのだが、ベルが血を流してから、形勢が怪しくなってきた。
『自分の血を見てからが、プリンス・ザ・リッパーの本領』
マーモンの言った通り、確かにベルの攻撃は、より激しさを増しては来たが、その動きはあまりにも冷静さを欠いていて危なっかしい。
しかも、相手もなかなかに奮闘している。
ワイヤーも見切られた。
スモーキンボム、観察力が良い。
頭もそれなりに切れるらしく、戦いの中で学習して、成長している。
遂にはワイヤーを利用されて、相手のガキの繰り出した大量のダイナマイトがベルに命中した。
「バカ面しやがって……、天才が笑わすぜ」
スモーキンボムが吐き捨てるように言っても、ベルは起き上がらない。
完全に意識を失ってしまっているわけではないようだが、リングを奪った相手に、ベルが反抗することはなかった。
嵐のハーフリングは獄寺隼人の手に落ち、沢田チームの勝利となった。
「チッ……」
ベルはよくやっていた。
いつも通りのやり方で。
じわじわとなぶるように精神を消耗させ、追い詰めていった。
だが勝てなかった。
それは一重に、奴の経験が足りないからである。
敵に回す者によってやり方を変えなけりゃならないということを、奴は知らなかった。
いや、知っていたとしても、アイツは勝てなかったかもしれない。
そもそもの必死さが、ベルには欠けていた。
もっとこってり鍛えてやってりゃあ良かったか。
そして、今日もまた、ザンザスに当たられることになるのだろうな……。
色々考えていたら、ついつい目付きが悪くなってしまった。
自軍の勝利に歓喜する沢田チームに反して、こちら側の空気は重い。
オレが、重くしている。
大きな大きな溜め息をついて、オレはベルを回収した。
「ベル、どうするんだいスクアーロ。
殺すの?」
「あ゙あ?一応ヴァリアーでも類を見ねえ程の天才だぞぉ。そう簡単にお払い箱には出来ねぇ」
「ふぅん、そう」
ただし、今回負けた奴らには、後から大反省会に参加させるけどな。
一応、ルッスーリアの件で懲りたからすぐにはやらねぇ。
争奪戦が終わった後に教育……もとい、反省会だ。
この後、ルッスーリア同様に動けなくなられても困るしな。
「それでは次の対戦カードを発表します。明晩の勝負は、雨の守護者の勝負です」
雨の守護者、つまりオレと、あの素人剣士の対決である。
ようやくオレの番か。
チェルベッロの言葉に、オレの気分も少し上昇する。
「この時を待っていたぜぇ。前回の圧倒的力の差を思い出して逃げんじゃねーぞぉ、素人剣士」
「ハハハ、その心配はないぜ。楽しみで眠れねーよ」
その笑みから、ガキの自信が伝わってくる。
最近は他の奴らの試合にハラハラしっぱなしだったが、やはり自分の番となると血が滾る。
オレも戦闘狂だってことか。
あのガキがどんな戦い方をするのか、楽しみで仕方がねぇ。
「せいぜいオレを楽しませてみろ、カスガキがぁ……!」
オレがニヤリと笑った、その時だった。
雷撃隊の奴の気配が近付いてくる。
ふっと振り向くと、そこには傷だらけの隊員が立っていた。
「失礼する!レヴィ隊長!!校内に何者かが侵入しました。雷撃隊が次々とやられています!!」
「何!?」
その様子にオレも自分の部下を呼ぶ。
「ゔお゙ぉい、何者だぁ?」
「は、沢田綱吉の仲間である、雲雀恭弥かと思われます。雷撃隊の隊員達が対処に当たっていますが……」
「チッ、面倒な奴が帰ってきやがった」
面倒事は避けるに限る。
撤退の号令を掛けようと口を開くが、言葉が出る前に、雷撃隊の一人が吹っ飛んできた。
「校内への不法侵入及び、校舎の破損。連帯責任でここにいる全員咬み殺すから」
間に合わなかったか……。
イライラと舌打ちを繰り返す。
激昂して走り出したレヴィを止めるのも面倒臭い。
「まーまー、落ち着けってヒバリ。怒んのもわかるけどさ」
素人剣士のガキが止めようとするも、新たにヒバリの怒りを買う。
だが奴は、ヒバリが振るったトンファーを避けて、それを捕まえることで動きを封じた。
今の動き、少しは剣を学んで来たようだな……。
ふふふ、アイツは才能があるみたいだなぁオレがこの手で育ててやりたかったぜ、などと現実逃避に走るオレの目は遠い。
だが、オレがそんなことをしている間に、リボーンが上手くヒバリを丸め込んだようだった。
え、何だって?
六道骸?
あーハイハイ、マーモンの対戦相手だろどうせ。
因みにヒバリはゴーラ・モスカの相手。
負けてくれるなよお前ら。
「……帰るぞぉ」
微妙な空気を振り払うように、大きなため息を吐いて号令を掛ける。
窓から次々と飛び降りていく仲間たちを見やってから、一度だけ素人剣士のガキに視線を合わせた。
「ゔお゙ぉい、オレは今までの奴らほど甘くはねぇぜぇ。少しは剣を学んで来たようだがぁ、それでもてめぇに勝ち目はねぇ。首洗って待ってろぉ」
そのまま、後ろ向きに落ちる。
最後に一瞬、Dr.シャマルと目があったような気がした。
オレの額のシワはこれまでにも増して深い。
ベルvs獄寺隼人。
途中までは圧していたのだが、ベルが血を流してから、形勢が怪しくなってきた。
『自分の血を見てからが、プリンス・ザ・リッパーの本領』
マーモンの言った通り、確かにベルの攻撃は、より激しさを増しては来たが、その動きはあまりにも冷静さを欠いていて危なっかしい。
しかも、相手もなかなかに奮闘している。
ワイヤーも見切られた。
スモーキンボム、観察力が良い。
頭もそれなりに切れるらしく、戦いの中で学習して、成長している。
遂にはワイヤーを利用されて、相手のガキの繰り出した大量のダイナマイトがベルに命中した。
「バカ面しやがって……、天才が笑わすぜ」
スモーキンボムが吐き捨てるように言っても、ベルは起き上がらない。
完全に意識を失ってしまっているわけではないようだが、リングを奪った相手に、ベルが反抗することはなかった。
嵐のハーフリングは獄寺隼人の手に落ち、沢田チームの勝利となった。
「チッ……」
ベルはよくやっていた。
いつも通りのやり方で。
じわじわとなぶるように精神を消耗させ、追い詰めていった。
だが勝てなかった。
それは一重に、奴の経験が足りないからである。
敵に回す者によってやり方を変えなけりゃならないということを、奴は知らなかった。
いや、知っていたとしても、アイツは勝てなかったかもしれない。
そもそもの必死さが、ベルには欠けていた。
もっとこってり鍛えてやってりゃあ良かったか。
そして、今日もまた、ザンザスに当たられることになるのだろうな……。
色々考えていたら、ついつい目付きが悪くなってしまった。
自軍の勝利に歓喜する沢田チームに反して、こちら側の空気は重い。
オレが、重くしている。
大きな大きな溜め息をついて、オレはベルを回収した。
「ベル、どうするんだいスクアーロ。
殺すの?」
「あ゙あ?一応ヴァリアーでも類を見ねえ程の天才だぞぉ。そう簡単にお払い箱には出来ねぇ」
「ふぅん、そう」
ただし、今回負けた奴らには、後から大反省会に参加させるけどな。
一応、ルッスーリアの件で懲りたからすぐにはやらねぇ。
争奪戦が終わった後に教育……もとい、反省会だ。
この後、ルッスーリア同様に動けなくなられても困るしな。
「それでは次の対戦カードを発表します。明晩の勝負は、雨の守護者の勝負です」
雨の守護者、つまりオレと、あの素人剣士の対決である。
ようやくオレの番か。
チェルベッロの言葉に、オレの気分も少し上昇する。
「この時を待っていたぜぇ。前回の圧倒的力の差を思い出して逃げんじゃねーぞぉ、素人剣士」
「ハハハ、その心配はないぜ。楽しみで眠れねーよ」
その笑みから、ガキの自信が伝わってくる。
最近は他の奴らの試合にハラハラしっぱなしだったが、やはり自分の番となると血が滾る。
オレも戦闘狂だってことか。
あのガキがどんな戦い方をするのか、楽しみで仕方がねぇ。
「せいぜいオレを楽しませてみろ、カスガキがぁ……!」
オレがニヤリと笑った、その時だった。
雷撃隊の奴の気配が近付いてくる。
ふっと振り向くと、そこには傷だらけの隊員が立っていた。
「失礼する!レヴィ隊長!!校内に何者かが侵入しました。雷撃隊が次々とやられています!!」
「何!?」
その様子にオレも自分の部下を呼ぶ。
「ゔお゙ぉい、何者だぁ?」
「は、沢田綱吉の仲間である、雲雀恭弥かと思われます。雷撃隊の隊員達が対処に当たっていますが……」
「チッ、面倒な奴が帰ってきやがった」
面倒事は避けるに限る。
撤退の号令を掛けようと口を開くが、言葉が出る前に、雷撃隊の一人が吹っ飛んできた。
「校内への不法侵入及び、校舎の破損。連帯責任でここにいる全員咬み殺すから」
間に合わなかったか……。
イライラと舌打ちを繰り返す。
激昂して走り出したレヴィを止めるのも面倒臭い。
「まーまー、落ち着けってヒバリ。怒んのもわかるけどさ」
素人剣士のガキが止めようとするも、新たにヒバリの怒りを買う。
だが奴は、ヒバリが振るったトンファーを避けて、それを捕まえることで動きを封じた。
今の動き、少しは剣を学んで来たようだな……。
ふふふ、アイツは才能があるみたいだなぁオレがこの手で育ててやりたかったぜ、などと現実逃避に走るオレの目は遠い。
だが、オレがそんなことをしている間に、リボーンが上手くヒバリを丸め込んだようだった。
え、何だって?
六道骸?
あーハイハイ、マーモンの対戦相手だろどうせ。
因みにヒバリはゴーラ・モスカの相手。
負けてくれるなよお前ら。
「……帰るぞぉ」
微妙な空気を振り払うように、大きなため息を吐いて号令を掛ける。
窓から次々と飛び降りていく仲間たちを見やってから、一度だけ素人剣士のガキに視線を合わせた。
「ゔお゙ぉい、オレは今までの奴らほど甘くはねぇぜぇ。少しは剣を学んで来たようだがぁ、それでもてめぇに勝ち目はねぇ。首洗って待ってろぉ」
そのまま、後ろ向きに落ちる。
最後に一瞬、Dr.シャマルと目があったような気がした。