終章・群青の鮫

ディーノへ。

初めて、お前に手紙を書く。
なんだか、緊張するな。
お前が眠るまでの間、全てを伝えきる時間がないだろうから、こうして書き残しておこうと思ったんだ。


まず、たくさんのありがとうと、たくさんのごめんなさいを直接言えないまま、去っていく事を、許してほしい。
あのブラックホールのような装置について、オレ達10人でどのような話し合いがなされたのか、それはオレの部屋に通話を録音したものがあるから、ここでは省く。
ただ、オレがザンザスの弔いの為だけに命を犠牲にした訳じゃないということは、わかってほしい。
ザンザスはオレの目の前で、あのブラックホールに食われた。
すぐ側にいたはずだったのに、気付いたら影も形もなくなっていたんだ。
とてつもなく、怖かった。
もし、お前や、仲間達が、あんな風に死んでしまったら?
そう思うと、これを書いている今も、堪らなく怖くて、手が震える。
だからってオレが犠牲になる必要はないって、お前ならそう言いそうだよな。
でも、今、誰かがやらないと間に合わないんだ。
それなら、オレが、やりたいと思った。
オレが、お前らの事を守ってやりたいと思ったんだ。
ワガママだよな?自分勝手すぎるよな?
ごめん、本当に、ごめん。
しかも睡眠薬を盛ったり、騙すような真似して、本当にごめん。
お前が目覚めて、これを読んでいる頃には、オレはもう、死んでいるだろうな。
お前は、泣くだろうか?
いい女なら、ここで『好きな人には笑っていてほしい』なんて言うのだろうが、お前が泣いてくれると、オレは嬉しい。
お前が泣いた分だけ、オレを大切に思ってくれてたってことだろ?
嬉しい、本当に嬉しいと思う。
でも、たくさん泣いたら、その後はしっかり立ち上がって、前に向かって歩き出してくれ。
オレが守ったお前達の未来を、強く、歩いてくれ。
最後までワガママばかりで本当にごめんな。
オレは、お前が、お前達が、オレのいなくなった後もちゃんと生きてくれると、信じている。
だから最期は、笑って死ねると思う。
こんな満ち足りた最期を迎えられるのは、きっと、お前達のお陰だ。
良い仲間達に囲まれて、楽しかった。
お前と出会えて、幸せだった。
オレは、満足だ。
安心して、死ねる。
助けてくれてありがとう。
愛してくれて、ありがとう。
受け入れてくれてありがとう。
側にいてくれて、ありがとう。
抱き締めてくれて、ありがとう。
こんな、バカで、どうしようもない女のこと、好きになってくれてありがとう。
お前の事が、本当に本当に、大好きだ。
あの世とか、来世とか、そんなものがあるかどうかなんてわからねえけど、どこかでずっと、また逢えるのを、待っている。
もしいつか、どこかでもう一度逢えたのなら、その時はオレもお前も、今の記憶なんてないだろうけど、きっとオレは、またお前に、恋をするよ。
また逢おう、ディーノ。
どこかで、きっと、もう一度……。



……それとこの手紙他の奴には見せんなよ?
恥ずかしいからな。
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