終章・群青の鮫
はじめの記憶は3歳の頃。
オレは親父に手を振り払われた。
親父はオレにこう言った。
「オレの息子は親に頼るような弱い子じゃあないはずだ」
その時は、どうすれば良いのかわからず、ただ悲しい気持ちを圧し殺して必死で強くなろうとしていた。
* * *
そして今、オレは目の前にいる男に向かって、ソッと手を伸ばす。
優しく手を取られ、腕を引かれたオレは、逆らわずにその胸の中に飛び込む。
暖かな体温を感じながら、瞼を閉じた。
瞼の裏に浮かぶのは、大切な……、とても大切な仲間達。
自分の人生が、こんなに明るく色付くだなんて、昔は思いもしなかった。
優しい仲間、大切な主、愛しい人。
「オレは、幸せ者だな……」
世界が止まってしまうような感覚。
オレは意識を現実へと引き戻す。
遥か遠くへと飛んでいた心が、戻ってきた。
「行ってきます」
眠ってしまった彼の唇に、口付けをした。
* * *
剣豪狩りをしていたオレは、初代剣帝にスカウトされ、彼を倒してヴァリアーに入った。
そこでオレは、ある男に遇う。
ザンザス、鮮やかな憤怒を携え、荒くれ者どもの上に立つその男に、心を奪われた。
奴を絶対と定めた。
ザンザスはオレの世界そのものになった。
奴の側に遣える内に、オレに護りたい仲間達が出来た。
ザンザスのために、仲間達のためにと戦って、ボロボロになったオレを拾った奴がいた。
ドジばかり踏む癖に、大事なとこは決めてしまったり、変なことで凹む癖に、偉そうに説教したりする。
へなちょこなのに、カッコ良くて、ムカつく奴だった。
気付けばソイツが……、ディーノのことが、好きになっていた。
絶対の人と、大好きな人と、騒がしい仲間達と。
そんな奴らの側で、助けて、助けられて、オレの世界は鮮やかに、賑やかに、色付いていく。
楽しかった、幸せだった。
それがオレの、スペルビ・スクアーロの、人生だった。
女として生まれ、男として育てられたスペルビ・スクアーロは、幸せに生きて、そして…………
オレは親父に手を振り払われた。
親父はオレにこう言った。
「オレの息子は親に頼るような弱い子じゃあないはずだ」
その時は、どうすれば良いのかわからず、ただ悲しい気持ちを圧し殺して必死で強くなろうとしていた。
* * *
そして今、オレは目の前にいる男に向かって、ソッと手を伸ばす。
優しく手を取られ、腕を引かれたオレは、逆らわずにその胸の中に飛び込む。
暖かな体温を感じながら、瞼を閉じた。
瞼の裏に浮かぶのは、大切な……、とても大切な仲間達。
自分の人生が、こんなに明るく色付くだなんて、昔は思いもしなかった。
優しい仲間、大切な主、愛しい人。
「オレは、幸せ者だな……」
世界が止まってしまうような感覚。
オレは意識を現実へと引き戻す。
遥か遠くへと飛んでいた心が、戻ってきた。
「行ってきます」
眠ってしまった彼の唇に、口付けをした。
* * *
剣豪狩りをしていたオレは、初代剣帝にスカウトされ、彼を倒してヴァリアーに入った。
そこでオレは、ある男に遇う。
ザンザス、鮮やかな憤怒を携え、荒くれ者どもの上に立つその男に、心を奪われた。
奴を絶対と定めた。
ザンザスはオレの世界そのものになった。
奴の側に遣える内に、オレに護りたい仲間達が出来た。
ザンザスのために、仲間達のためにと戦って、ボロボロになったオレを拾った奴がいた。
ドジばかり踏む癖に、大事なとこは決めてしまったり、変なことで凹む癖に、偉そうに説教したりする。
へなちょこなのに、カッコ良くて、ムカつく奴だった。
気付けばソイツが……、ディーノのことが、好きになっていた。
絶対の人と、大好きな人と、騒がしい仲間達と。
そんな奴らの側で、助けて、助けられて、オレの世界は鮮やかに、賑やかに、色付いていく。
楽しかった、幸せだった。
それがオレの、スペルビ・スクアーロの、人生だった。
女として生まれ、男として育てられたスペルビ・スクアーロは、幸せに生きて、そして…………