鮫、目覚め

2階、数日前スクアーロを助けるために骸達が訪れた、遊戯室や、図書室、武器庫など、様々な部屋がある階だ。
ちなみに武器庫には、今は何もなく、屋敷の武器を奪われ、それで攻撃されることはない。
だかしかし、二人は2階の廊下をげんなりとしながら進んでいた。

「つ、次は右に……」
「え、右?ぬわっ!?」
「おせぇぞバカ!!」

庭の小路の比ではない程の、大量のトラップが廊下中に仕掛けられていたのだ。
スクアーロ一人であれば、そう苦労はしなかっただろう。
だがディーノはトラップを見切ること事態がまず難しく、更に現在はへなちょこモードである。
何度も殺されかけては、スクアーロに引っ張られて助けられていた。

「うぅ……すまん」
「ったく、もっと気を付けて進め!」
「気を付けてるつもりなんだけどなぁ。なんか床がすげぇ滑るんだよな……」

重いため息が、スクアーロの口から思わずこぼれ落ちる。
恐らく庭のトラップもこのトラップも、仕掛けたのは同一人物。
そして、先程からトラップ以外にも、ナイフや銃で避けたはずのトラップを発動させるなどして攻撃されている。
間違いなく、このトラップの仕掛人はこの階にいる。
それにこの命中精度、もしかするとスナイパーも同一人物の可能性がある。
ナイフや銃の攻撃から、大体の居場所は想像が付いている。
恐らく一番奥の空き部屋。
そこに奴は居る。
何としてでもたどり着かなければならないが、さて、どうするか。
考えたスクアーロは、後ろに居るディーノを振り返った。

「ん?どした?」
「跳ね馬、一気に行くぜ」
「へ?」

ディーノに向かって、グッと左腕を差し出し、掴むように指示する。
そのまま前を向き、足に力を入れた。

「跳ね馬、オレの後を出来るだけ正確に着いてこい。そんで腕は、何があっても絶対に離すな」
「……わかった!」

ディーノの返事を聞くと同時に、スクアーロは走り出した。
腕を引っ張られるような感覚。
だが掴んでいる手が離れることはない。
そのままスピードを落とさずに走り、そして近付いてきたワイヤートラップを飛び越える。

「わたっ!たっ!!」

転げそうになりながらも、ディーノはその動きに合わせて罠を飛び越える。
頭を屈めたり、飛んだり、左右にステップを踏んだりと、複雑な動きを繰り返しながら、二人は凄まじいスピードで奥にある部屋へと近付いていく。
奇跡的に着いていっているディーノは必死で気付かないが、先程まであったナイフや銃の攻撃はなくなっている。
敵は逃げる準備に入ったのだろうか?
だが既にドアは目の前にある。
スクアーロは勢いのままドアを蹴破って中に突入した。
頭上から刃物が落ちてくるが、勢いよく頭から飛び込むことでギリギリ回避する。
そして起き上がったスクアーロとディーノの目に映ったのは、窓から逃げ出そうとしている一人の人間の姿だった。

「ゔお゙ぉい!逃げる気かぁ!?」
「ヒィッ!?」
「逃がすかよ!このっ……って危なぁっ!?」

逃げようとしている人間を捕まえにいって、自分まで落ちそうになったディーノごと、二人を引き上げ、スクアーロはその人間にナイフを突きつけた。

「逃げ損ねたなぁ?これから何されるのか、予想はついてんだろぉ?」
「ヒギッ!!か、勘弁してくれよぉ!!オレはトラップ専門で、ガチの戦闘とか苦手でさぁ!」
「なら素直にこっちの質問に答えんだなぁ。テメー、いや、テメーら何者だぁ?何のためにここに来た。オレに恨みでもあるようだが、どういうことだぁ?」

本当に戦いも拷問もダメなのだろう。
その男は素直に質問に答えた。

「お、オレはギーグファミリーの殺し屋だ!!個人的には怨みなんてねーが、上の奴らの命令であんたを殺すように言われてんだよ!仲間を殺されといて犯人には何の処分も下さねぇ、あんたらボンゴレへの見せしめにするためにな!」

彼らは殺し屋、ロシア伝説のマフィア、ギーグファミリー。
ボンゴレへの反逆を企てたシモンファミリーの一人、鈴木アーデルハイトが殺したファミリーの、仲間であった。
17/23ページ
スキ