リング争奪戦

「で?」
「うぅ……」
「何で、さっさとケリを付けずに遊んでたんだぁ?」
「ぐぅっ!」
「なぁ、おい、ルッスーリア。本来なら、次はねぇぞぉ?」
「お、お願いよぉ!!次は……次こそは、上手くやるわ!!!」
「ハッ!どうだかなぁ……」
「本当よ!私、次こそは、きっと……!!」
「任務忘れて楽しんでた奴がかぁ?」
「うぅ……ホントよぉ……。お願いスクちゃん!これはもう!!」
「ダメに決まってんだろ」
「無理よぉ!反省するまで正座で書類100枚だなんて!」
「重石追加で」
「いやぁぁあああー!!!」

連れて帰ったルッスーリアが目覚めた後、さんざんいじめ倒して脚が鬱血して色が変わるまでやらせてしまった。
ドクターストップがギリギリで入り、大事には至らなかったものの、ルッスは暫く入院だそうだ。
まるで拷問だな、つーか、ただの八つ当たりだ。
本当なら、勝てる試合だったはずなのに、勝利を逃したアイツに、苛立ちをぶつけまくった。
ちゃんと計画を話していたら、ルッスは遊ばずに勝っただろうか。
いや、ルッスだけじゃない。
この後に試合を控えた奴らも、どうなるかなんてわかりゃしねぇ。
何を思ってオレは、あいつを痛め付けてるのか。
ザンザスのため?
そんなわけ無い。
オレの、ため。
ただ、計画通りに事が進むのか不安で、やり場のない鬱屈とした感情を、ルッスーリアに甘えてぶつけてしまっただけだ。

「酷いやつだよなぁ、オレ」

傲慢で、自分本意で、どうしようもない。
ふかふかのソファに身を預ける。
掌で目をふさいだ。
何も見えなくなる。
だからこそ、余計に情けない自分が見えてくる。

「情けな……。つか、疲れた……」

ずっしりと体が重くて、動く気になれなかった。
だが、そんなオレの体を低い声が揺さぶる。

「カスザメ」
「どうしたんだぁ、ザンザス」
「……、」
「……ザンザス?」
「……こい」
「お゙う」

ザンザスについて、部屋に入る。
顎でソファを示されて、……恐らく座れと言っているのだと推測し、座る。

「……ザンザス?」
「うるせえ」
「でもよぉ……、これ、膝枕だろ?」
「だからなんだ」

固ぇ……、と呟きながら完全に寝る体制に入ったザンザスにオレは困惑を隠せない。
オレが座った後に、ザンザスはその膝の上に頭をのせて、目を瞑ってしまった。
膝枕?え、あのザンザスが?
何の冗談だ……?
今日はまさか槍でも降るんじゃなかろうか。

「おい、ドカス」
「ん"、なんだぁ」

ザンザスが見上げてくる。
どうすれば良いか迷って、とりあえず、見返してみる。
暫く、そのまま互いに動かなかった。
長い沈黙の後、ボソリとザンザスが呟く。

「絶壁だな」
「……てめぇオレのことを馬鹿にしてるだろ」
「してる」
「非常にムカつくぞぉ……」

つぅか、元々ない胸サラシで潰してるんだから、絶壁で当たり前だし、何より男として過ごしてるんだから絶壁じゃないと逆に困るし!!

「テメーが何考えてるか知らねぇがな」
「!」
「テメーは余計なこと考えずに、オレの後ろを着いてきてりゃ良いんだよ」
「……ザンザス」
「ふんっ……」
「やっぱり今日は嵐か……?」
「……テメー」

怒ったザンザスに部屋を追い出されたことは言うまでもない。
緩む頬を押さえつつ、ザンザスのご機嫌をとるために酒とツマミの用意を始めた。
ルッスーリアにはちゃんと後で謝ろう。
大丈夫、きっと上手くいくから。
あのザンザスに励ましてもらえたんだもの。
上手くいかなきゃ詐欺だ。
その日の料理は、いつもより少しだけ豪華にしてみた。
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