リング争奪戦

「ゔお゙ぉい、準備は出来てるかぁ?」
「もうみんな準備万端よぉ~!」
「後はボスとスクアーロだけだよ」
「ザンザスは直ぐに来る。つーか出発が遅れたのはテメーらのせいだぞぉ!何でオレがいない間ぁ、誰も書類片してねぇんだ!」
「しし、めんどくさいし仕方ねーじゃん。王子書類とかやりたくねーもん」
「やりたくなくてもやれぇ!」
「僕はやってたよ」
「自分の分だけな!」
「私は忙しかったからー」
「筋トレとコレクションだろぉ!その前に仕事しろぉ!」
「オレも忙しかった!!」
「ボスのご機嫌とりだろぉがぁ!んなもんは仕事のあとにやれ!!」
「だって、ワクワクしちゃって仕事なんか手につかねーじゃん。ししっ」

と、まぁ、話からわかるように、帰って執務室を見ると書類が山を作っていた。
マーモン以外、誰も仕事をしていなかったのだ。
お陰でオレが徹夜で仕事を片付ける羽目になったわけだが、コイツらには反省の色が見られない。
マジでコイツら殺してやろうか……。

「落ち着けってスクアーロぉ。今回は一日だけで済んだんだし?」
「本来なら徹夜する必要なかったよな?」
「ボスだって今日はそんなに暴れてないし」
「椅子投げられたのはオレだけかぁ」
「……お疲れ様ねぇ、スクちゃん」

足取りは重い。
またザンザスに会いに行ってモノを投げられるのか。
アイツは確かにオレの主ではあるのだが、モノを人に投げる癖だけはどうにかしてほしい。
毎度毎度、あの豪速球を避けられるわけでは無いんだから。

「オレはボスを呼んでくる。てめぇらは飛行機に乗って待ってろぉ!」
「ならばオレがボスを迎えに行く!!お前はさっさと機内に入ってろ!」
「だぁああ!うるせぇ!てめぇ大人しく待ってねぇと三枚にオロすぞお゙らぁ!」
「スクアーロがキレたね」
「んもぅ!イラついてるときのスクちゃんに口答えしないでってあんなに言ったのに!!」
「おもしれーのー」

レヴィをシバき、少しだけストレスを発散させることが出来、オレは満足げに汗を拭う。
良い仕事をした。
ルッスーリアにレヴィを任せ、オレはザンザスを迎えに行く。
予想通りペンをぶん投げられたが、何とか避けつつザンザスを飛行機に乗せる。(てめぇはガキか!!という叫び声がヴァリアー邸に木霊してしまったらしい。)
そんなこんなで、オレだけがガリガリとヒットポイントを削られつつ着いた日本。
寝不足のまま車を運転して着いたホテルにザンザスを放り込み、漸くそこで一息つくことが出来た。
ソファーにぐったりと座り込んで、同僚達に指示を伝える。

「とりあえず、夜までは自由時間だぁ」
「スクちゃん、ボロボロね……」
「ざまぁない」
「なんか言ったかレヴィィィイ!!!」
「なっ!ぎぃやぁぁあ!!!!」
「きったねー悲鳴だな」
「僕は部屋で休んでるから用があるなら呼んでね」
「オレも休む。てめぇら、問題起こすんじゃねぇぞぉ」
「はーい」
「だ、誰が、お前の命令など……!」
「守らなくてもいいがぁ、問題起こして迷惑するのはザンザスなんだからなぁ!」
「ぐっ!」

レヴィに釘を刺して、オレはバタンとドアを閉めた。
ベッドに倒れ込もうとしてハッと気がつく。
そろそろザンザスの飯の時間だ。
一瞬の逡巡の後、オレは重たい体を引き摺ってキッチンに立った。
ルームサービスでも良いが、オレが作った方が安全だ。
幸い、このホテルのVIPルームに備え付けられたキッチンは、かなり充実しているようだし。

「何だコレ、何だオレ。主夫か、主夫なのかぁ」

どっちかって言うと主婦、なんてツッコミを受け付ける気はねぇ。
黙々と調理をするオレの頭に、ザンザスが投げた目覚まし時計が当たるまで、あと1分20秒であった。
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