鮫、帰らず
「結局……みんなおんなじ飛行機ー!?」
「るせぇ、ドカスが」
「ヒィッ!!ごめんなさい!!」
突然イタリアに渡るといっても、急遽専用ジェット機が用意できるはずもなく、結局ユニ達も合流して、1つの飛行機を代理戦争のメンバー全員で貸しきることになった綱吉は、その顔触れに心の中で悲鳴をあげていた。
元々我の強いメンバーが、共闘しただけでも奇跡だったのに、まさか仲良く一緒にイタリアに行くことになろうとは……。
喧嘩しないための苦肉の策として、彼らの間には何席か空席を設けてある。
これだけ距離を離せば……大丈夫なはず。
だが、綱吉のこの目論見はキッチリと外れることとなる。
「綱吉クン、マシマロ食べよー♪」
「テメー白蘭!!10代目に軽々しく話し掛けてんじゃねーぞ!!10代目!このマシュマロ野郎、今すぐとっちめて来ますんで少々お待ちください!!」
「とっちめなくて良いから喧嘩しないでー!!」
「にゅーう!!白蘭、ブルーベルこいつ嫌い!!やっつけちゃおうよ!!」
「まあまあ落ち着けって!!」
「や、山本……!!一緒に喧嘩を止めてくれて……」
「喧嘩より野球やった方が楽しいぜ!!」
「意味わかんないし機内で野球はダメだからー!!」
まず揉め始めたのはミルフィオーレの甘党怪人白蘭と、ボンゴレの忠犬獄寺である。
斜め45度にぶっ飛んだ会話を交わす彼らを見て、クフンとせせら笑ったのは、後方で優雅にチョコレートパフェを貪る骸だった。
「例え地上10000mの高さにいようと、馬鹿は馬鹿と言うことですね」
「んだとぉ!?」
「おや?僕は別に君に言ったわけではありませんよ獄寺隼人」
「自分のこと馬鹿だと思ってるから反応したんだびょん!!」
「つまり自分が馬鹿だとわかってない犬にーさんよりは賢いってことですねー」
「どういう意味びょんフラン!!」
「おいクソガキ!!こんなのと比べてんじゃねーぞ!!」
「こっちの台詞びょん!!」
黒曜の常識人、柿本千種は、彼らを止めるつもりはないらしく、イヤホンを付けて聞こえないフリをしている。
「……ねえ、ちょっと。ただでさえ群れてるのを見て鳥肌が止まらないのに、その上騒ぐのはやめてよ。咬み殺すよ」
「ヒ、ヒバリさん落ち着いてー!」
群れを嫌うヒバリは、一人最も離れた最後列の端にいたにも関わらず、不機嫌に殺気を立ち上らせながら、愛用のトンファーを構えている。
悲鳴を上げながらもそれを止めようとする綱吉。
しかし、ガヤガヤと騒がしくなり始めた機内で、不機嫌に眉根を寄せ、攻撃態勢に入った者が更に一人。
それはXANXUSだった。
「かっ消されてーのか、カス共が」
「ボスこんなところでそれはダメー!!」
「ちょっ!この人達何とかしてよリボーン!!飛行機ごと海に落ちて死ぬなんてオレ絶対に嫌だからね!?」
「仕方ねーな」
ふぃー、と鼻から息を吐いたリボーンは、おもむろに席から立ち上がって、何故か綱吉を蹴った。
「お前らうるせーぞ」
「なんでオレー!?」
「気分だぞ」
結局収まらない騒ぎに、今度はアルコバレーノ……元、アルコバレーノ達も混ざり出す。
「おじさま、あまり沢田さんをいじめないであげてください」
「いじめじゃなくて教育だぞ」
「甘いぜコラ、リボーン!!教育ってのはこうするんだ」
「ヘブッ!!」
コロネロのパンチを皮切りに、飛行機の中だというのに乱闘が始まってしまった。
その乱闘から少し離れた位置、最前列の席に座ったバジルは、苦笑いをしながら彼らを見守っていた。
スクアーロが誘拐されるより前は、どうすることも出来ずに焦るばかりだったが、自分達に出来ることを見付けた彼らは、いつも通りの調子を取り戻したように見える。
しかし、と一転、顔を曇らせて、バジルは自身の隣に座る人物を見詰めた。
「……心配ですか、ディーノ殿?」
「そりゃあ、まあな……」
固い表情のまま、息を吐いたディーノは、青い顔でぎこちなく微笑んだ。
「スゲー、心配だ」
「……きっと、大丈夫です。スクアーロは丈夫ですし、強い、ですから……」
バジルの言葉は、尻すぼみになって消えていく。
自分の言った言葉には、何の説得力もない。
口に出すほどに、それが身に染みてわかるような気がして、その後はもう、何も言えないまま、黙り込んでしまった。
「……スクアーロが丈夫なことも、強いこともわかってんだよ。でも、それでも恐いんだよな……」
「恐い……?」
沈黙を取り繕うように、言葉を絞り出したディーノ。
その口から出た単語にバジルは首を傾げた。
「恐い。アイツ、あんなに強いからこそ、逆に恐い。いつかポッキリ折れちまいそーでな」
「……」
「……なーんて、考えすぎだよな?バジルの言う通り、スクアーロは強いし、丈夫だから、きっと無事でいるよな」
「そう、ですね」
ニカッと笑ったディーノの、その瞳は不安げに揺れていた。
バジルは痛々しげにそれを見る。
戦いの前の高揚した気持ちも、大切な人を案じる切ない思いも、まだ見ぬ敵に向ける殺意も、得体の知れない力への好奇心も、全てを乗せて、飛行機はイタリアへと向かう。
始まりの場所とは?
スクアーロを拐ったのは何者なのか?
そもそも何故、スクアーロは目覚めなかったのか?
全ての疑問の答えがある場所へ……。
「るせぇ、ドカスが」
「ヒィッ!!ごめんなさい!!」
突然イタリアに渡るといっても、急遽専用ジェット機が用意できるはずもなく、結局ユニ達も合流して、1つの飛行機を代理戦争のメンバー全員で貸しきることになった綱吉は、その顔触れに心の中で悲鳴をあげていた。
元々我の強いメンバーが、共闘しただけでも奇跡だったのに、まさか仲良く一緒にイタリアに行くことになろうとは……。
喧嘩しないための苦肉の策として、彼らの間には何席か空席を設けてある。
これだけ距離を離せば……大丈夫なはず。
だが、綱吉のこの目論見はキッチリと外れることとなる。
「綱吉クン、マシマロ食べよー♪」
「テメー白蘭!!10代目に軽々しく話し掛けてんじゃねーぞ!!10代目!このマシュマロ野郎、今すぐとっちめて来ますんで少々お待ちください!!」
「とっちめなくて良いから喧嘩しないでー!!」
「にゅーう!!白蘭、ブルーベルこいつ嫌い!!やっつけちゃおうよ!!」
「まあまあ落ち着けって!!」
「や、山本……!!一緒に喧嘩を止めてくれて……」
「喧嘩より野球やった方が楽しいぜ!!」
「意味わかんないし機内で野球はダメだからー!!」
まず揉め始めたのはミルフィオーレの甘党怪人白蘭と、ボンゴレの忠犬獄寺である。
斜め45度にぶっ飛んだ会話を交わす彼らを見て、クフンとせせら笑ったのは、後方で優雅にチョコレートパフェを貪る骸だった。
「例え地上10000mの高さにいようと、馬鹿は馬鹿と言うことですね」
「んだとぉ!?」
「おや?僕は別に君に言ったわけではありませんよ獄寺隼人」
「自分のこと馬鹿だと思ってるから反応したんだびょん!!」
「つまり自分が馬鹿だとわかってない犬にーさんよりは賢いってことですねー」
「どういう意味びょんフラン!!」
「おいクソガキ!!こんなのと比べてんじゃねーぞ!!」
「こっちの台詞びょん!!」
黒曜の常識人、柿本千種は、彼らを止めるつもりはないらしく、イヤホンを付けて聞こえないフリをしている。
「……ねえ、ちょっと。ただでさえ群れてるのを見て鳥肌が止まらないのに、その上騒ぐのはやめてよ。咬み殺すよ」
「ヒ、ヒバリさん落ち着いてー!」
群れを嫌うヒバリは、一人最も離れた最後列の端にいたにも関わらず、不機嫌に殺気を立ち上らせながら、愛用のトンファーを構えている。
悲鳴を上げながらもそれを止めようとする綱吉。
しかし、ガヤガヤと騒がしくなり始めた機内で、不機嫌に眉根を寄せ、攻撃態勢に入った者が更に一人。
それはXANXUSだった。
「かっ消されてーのか、カス共が」
「ボスこんなところでそれはダメー!!」
「ちょっ!この人達何とかしてよリボーン!!飛行機ごと海に落ちて死ぬなんてオレ絶対に嫌だからね!?」
「仕方ねーな」
ふぃー、と鼻から息を吐いたリボーンは、おもむろに席から立ち上がって、何故か綱吉を蹴った。
「お前らうるせーぞ」
「なんでオレー!?」
「気分だぞ」
結局収まらない騒ぎに、今度はアルコバレーノ……元、アルコバレーノ達も混ざり出す。
「おじさま、あまり沢田さんをいじめないであげてください」
「いじめじゃなくて教育だぞ」
「甘いぜコラ、リボーン!!教育ってのはこうするんだ」
「ヘブッ!!」
コロネロのパンチを皮切りに、飛行機の中だというのに乱闘が始まってしまった。
その乱闘から少し離れた位置、最前列の席に座ったバジルは、苦笑いをしながら彼らを見守っていた。
スクアーロが誘拐されるより前は、どうすることも出来ずに焦るばかりだったが、自分達に出来ることを見付けた彼らは、いつも通りの調子を取り戻したように見える。
しかし、と一転、顔を曇らせて、バジルは自身の隣に座る人物を見詰めた。
「……心配ですか、ディーノ殿?」
「そりゃあ、まあな……」
固い表情のまま、息を吐いたディーノは、青い顔でぎこちなく微笑んだ。
「スゲー、心配だ」
「……きっと、大丈夫です。スクアーロは丈夫ですし、強い、ですから……」
バジルの言葉は、尻すぼみになって消えていく。
自分の言った言葉には、何の説得力もない。
口に出すほどに、それが身に染みてわかるような気がして、その後はもう、何も言えないまま、黙り込んでしまった。
「……スクアーロが丈夫なことも、強いこともわかってんだよ。でも、それでも恐いんだよな……」
「恐い……?」
沈黙を取り繕うように、言葉を絞り出したディーノ。
その口から出た単語にバジルは首を傾げた。
「恐い。アイツ、あんなに強いからこそ、逆に恐い。いつかポッキリ折れちまいそーでな」
「……」
「……なーんて、考えすぎだよな?バジルの言う通り、スクアーロは強いし、丈夫だから、きっと無事でいるよな」
「そう、ですね」
ニカッと笑ったディーノの、その瞳は不安げに揺れていた。
バジルは痛々しげにそれを見る。
戦いの前の高揚した気持ちも、大切な人を案じる切ない思いも、まだ見ぬ敵に向ける殺意も、得体の知れない力への好奇心も、全てを乗せて、飛行機はイタリアへと向かう。
始まりの場所とは?
スクアーロを拐ったのは何者なのか?
そもそも何故、スクアーロは目覚めなかったのか?
全ての疑問の答えがある場所へ……。