鮫、帰らず
「……なんか騒がしくねーか?」
「ん?……そうだな。っつーか、さっきから走り回ってる人達って……ヴァリアーっぽくないか?」
「極限に、それっぽいな!!」
院内の待合室。
仲良く話しながら、綱吉を待つ獄寺達は、賑わう患者達の群れの中に、紛れるようにして点在している黒服達を目で追う。
その内の一人が、獄寺達に気付き、近寄ってきた。
「ぜっ……はぁっ!あの、隊長を……見ませんでしたか!?」
「あんた、ヴァリアーの人だよな?」
「隊長って確か……」
「スクアーロ隊長です!いなくなったんです!!まだ動ける状態じゃなかったのに!!」
「なっ!?」
* * *
「スクちゃんがいなくなったって……でもまだ意識は戻ってなかったはずじゃ……?」
「ですがいなくなったんです!!
病室から物音がして、中に入ってみた時には、既にベッドはもぬけの殻で……!!」
「スクアーロ……!」
「あっ、ちょ、ディーノさん!!」
始めに走り出したのはディーノだった。
呼び止めた綱吉を押し退け、次に続いたのは驚いたことに、XANXUSだった。
「行くぞ、カス共」
「え、ボス!?」
ベッドから降りて、スタスタと歩き出したXANXUSを追って、ベルやマーモン達も部屋を出ていく。
「オレ達も追い掛けるぞツナ」
「うん!行こうバジル君!!」
「はい!」
綱吉達に続いて、ある者は興味津々に、またあるものは思考を巡らせながら、その場にいた全ての者達が現場へと駆け出した。
* * *
―― その10分程前……
「あの……スクアーロさんはいますか?」
「ああ?お前は確か……」
「あ、シモンファミリーの古里炎真です。後ろのみんなは仲間で……。それと……、」
「クローム髑髏……」
スクアーロがいる病室の手前で、見張りをしていたヴァリアー隊員に話し掛けたのは、シモンファミリーと、偶然彼らと居合わせたクローム髑髏だった。
スカルからスクアーロが昏睡状態にあることを聞いた炎真たちと、骸に話を聞き付けたクロームは、現在の病状だけでも聞けないかと、病室を訪れていたのだった。
「隊長は面会謝絶だ。悪いが、今日は帰ってくれ」
その声は後ろから掛けられた。
見るからにベテランの風格を背負う男は、病室までの通路を塞ぐように立ち、彼らに深々と頭を下げた。
「わざわざ見舞ってくれたのに申し訳ない。隊長が目覚めたときには、あなた達のことを必ず伝える」
「あ、頭を上げてくれ!!」
「鮫の人、まだ目が覚めないの?」
「……ああ、ずっと眠ったままだ」
男が悔しそうに顔を歪めたのを見て、周りの者達も苦々しげな表情を浮かべる。
だが、ヴァリアー隊員達のその様子を見た炎真は、少し安心した。
「慕われてるんですね、あの人……」
「!ああ、あの人は、オレ達の……」
―― ガタン
その時、突然病室から物音した。
全員が身構え、ベテラン隊員が即座に病室に飛び込む。
そして、彼の目に予想もしなかった光景が飛び込んできた。
「隊長……?」
白いシーツが敷き詰められたベッドの上には、誰もいない。
脈を測っていた機械が、測定不能になって無機質な機械音を流すばかりで、病室の中には誰の気配もなかった。
「隊長……、スクアーロ隊長!!返事を、返事をしてください!!いるんでしょう!?どこですか隊長……!!」
いくら探しても、スクアーロが見付かることはなかった。
一つ大事なことは、その病室の窓は閉まっていたということ。
ドアの前にいた隊員達の目を盗んで抜け出すことなど、出来るはずもない。
スペルビ・スクアーロは、密室から忽然と姿を消してしまったのだった。
「ん?……そうだな。っつーか、さっきから走り回ってる人達って……ヴァリアーっぽくないか?」
「極限に、それっぽいな!!」
院内の待合室。
仲良く話しながら、綱吉を待つ獄寺達は、賑わう患者達の群れの中に、紛れるようにして点在している黒服達を目で追う。
その内の一人が、獄寺達に気付き、近寄ってきた。
「ぜっ……はぁっ!あの、隊長を……見ませんでしたか!?」
「あんた、ヴァリアーの人だよな?」
「隊長って確か……」
「スクアーロ隊長です!いなくなったんです!!まだ動ける状態じゃなかったのに!!」
「なっ!?」
* * *
「スクちゃんがいなくなったって……でもまだ意識は戻ってなかったはずじゃ……?」
「ですがいなくなったんです!!
病室から物音がして、中に入ってみた時には、既にベッドはもぬけの殻で……!!」
「スクアーロ……!」
「あっ、ちょ、ディーノさん!!」
始めに走り出したのはディーノだった。
呼び止めた綱吉を押し退け、次に続いたのは驚いたことに、XANXUSだった。
「行くぞ、カス共」
「え、ボス!?」
ベッドから降りて、スタスタと歩き出したXANXUSを追って、ベルやマーモン達も部屋を出ていく。
「オレ達も追い掛けるぞツナ」
「うん!行こうバジル君!!」
「はい!」
綱吉達に続いて、ある者は興味津々に、またあるものは思考を巡らせながら、その場にいた全ての者達が現場へと駆け出した。
* * *
―― その10分程前……
「あの……スクアーロさんはいますか?」
「ああ?お前は確か……」
「あ、シモンファミリーの古里炎真です。後ろのみんなは仲間で……。それと……、」
「クローム髑髏……」
スクアーロがいる病室の手前で、見張りをしていたヴァリアー隊員に話し掛けたのは、シモンファミリーと、偶然彼らと居合わせたクローム髑髏だった。
スカルからスクアーロが昏睡状態にあることを聞いた炎真たちと、骸に話を聞き付けたクロームは、現在の病状だけでも聞けないかと、病室を訪れていたのだった。
「隊長は面会謝絶だ。悪いが、今日は帰ってくれ」
その声は後ろから掛けられた。
見るからにベテランの風格を背負う男は、病室までの通路を塞ぐように立ち、彼らに深々と頭を下げた。
「わざわざ見舞ってくれたのに申し訳ない。隊長が目覚めたときには、あなた達のことを必ず伝える」
「あ、頭を上げてくれ!!」
「鮫の人、まだ目が覚めないの?」
「……ああ、ずっと眠ったままだ」
男が悔しそうに顔を歪めたのを見て、周りの者達も苦々しげな表情を浮かべる。
だが、ヴァリアー隊員達のその様子を見た炎真は、少し安心した。
「慕われてるんですね、あの人……」
「!ああ、あの人は、オレ達の……」
―― ガタン
その時、突然病室から物音した。
全員が身構え、ベテラン隊員が即座に病室に飛び込む。
そして、彼の目に予想もしなかった光景が飛び込んできた。
「隊長……?」
白いシーツが敷き詰められたベッドの上には、誰もいない。
脈を測っていた機械が、測定不能になって無機質な機械音を流すばかりで、病室の中には誰の気配もなかった。
「隊長……、スクアーロ隊長!!返事を、返事をしてください!!いるんでしょう!?どこですか隊長……!!」
いくら探しても、スクアーロが見付かることはなかった。
一つ大事なことは、その病室の窓は閉まっていたということ。
ドアの前にいた隊員達の目を盗んで抜け出すことなど、出来るはずもない。
スペルビ・スクアーロは、密室から忽然と姿を消してしまったのだった。