代理戦争編
チェッカーフェイスは、お気に入りの椅子に深く腰掛け、ほうと息を吐いた。
「まさか、沢田綱吉がイェーガーを倒すとはね……」
イェーガーのショートワープのカラクリを暴き、骸とヒバリの協力、そして古里炎真に託されたリングで、沢田綱吉は勝利へと王手を掛けた。
イェーガーをかばい、綱吉の前に立ち塞がったバミューダが、呪解して戦い始める。
バミューダは強い。
アルコバレーノ歴代最強という言葉を、躊躇なく口に出来るくらいには。
だが、沢田綱吉は、きっとその上をいく。
そんな確信めいたものが、チェッカーフェイスの心を満たしていた。
沢田綱吉は、勝つ。
リボーンの力を借りて、多くの者達に支えられて。
「さて、そろそろ準備をしなくてはな」
立ち上がり、帽子を深く被り直したチェッカーフェイスは、沢田綱吉とバミューダ・フォン・ヴェッケンシュタインを映す画面を消し、歩き出す。
彼らのいる場所には、彼独自の術を用いて移動する手筈となっていた。
自分の住まう空間と、彼らのいる空間とを術で繋げることで移動する。
空間を繋げた入り口の前に立ち、一瞬己の掌に視線を移す。
「……そろそろ、こちらもタイムリミットのようだね」
そう一人ごちて、チェッカーフェイスは彼らのいる空間へと、足を踏み出した。
* * *
「優勝はリボーンチームです!!」
代理戦争4日目。
綱吉達は遂に、バミューダ達復讐者を撃ち破り、その手に勝利を掴んだ。
尾道の宣言に、だが彼らの顔が晴れることはなかった。
此度の戦い、どう見たところで、犠牲が多すぎる。
「倒れたみんなは!?」
「全員病院に運んだ!!」
綱吉は、血の痕だけが残っている地面を、安心したような、不安なような顔で見つめる。
尾道は、そんな彼らを尻目に、無駄に明るい声で話を続けた。
「おめでとうございまーす!!優勝チームの虹の赤ん坊(アルコバレーノ)であるリボーンさんは、特別に呪いを解かれますよー!!ホホッ!!」
「ウソをつくな尾道」
「はい?」
「虹の代理戦争の本当の目的は、現アルコバレーノをお払い箱にして命を奪い、次におしゃぶりを守る次期アルコバレーノを選ぶことなんだろ?」
「えっ!?はっ!?一体何のことやら……」
「とぼけるな!!」
「我々が知らぬとでも!?」
「彼を責めてはいかんよ。尾道は本当に何も知らぬのだ」
「あららっ、これは……いらっしゃっていたのですか?チェッカーフェイス様!!」
尾道の声に、集まっていた者達全員が、ハッと声の主を睨み付けた。
ついに、口元に妖しく笑みを浮かべたチェッカーフェイスが、彼らの前へと姿を現したのだ。
「チェッカーフェイスが……ここに!?」
「奴は姿を現さないはずだぜ!?」
「こんな所にひょっこりやってくるもんなのかよ!?」
驚愕、動揺、そして一抹の恐れ……。
自分に向けられる様々な感情を見てとったチェッカーフェイスは、気分良さげに深く息を吸い込んだ。
ああ、良かった。
また、トゥリニセッテが正しい道筋に戻るのだ……。
一体何度、こうしてアルコバレーノの代替わりを見てきたことだろう。
その中でも、この代のアルコバレーノ達は、波瀾万丈だった。
未来での出来事、そして復讐者の介入。
そんな異常な出来事が立て続けに起きたからだろうか。
チェッカーフェイスが気紛れに、トゥリニセッテの成り立ちを話したのは。
彼の過去を、ずっとトゥリニセッテを守り続けてきた、一族の話を終えて、チェッカーフェイスは満足げに息を吐く。
「……うむ、話したらスッキリしたよ。では現アルコバレーノのおしゃぶりを返してもらおうか」
「待ってくれ!!他のやり方があるはずだ!!現アルコバレーノを見殺しにしなくても、おしゃぶりを維持する方法が!!」
「あったらとっくにやっているさ。この方法は残された最後の手段なのだ。それに沢田綱吉君。君は現アルコバレーノの心配ばかりしているが、次期アルコバレーノの筆頭候補だぞ」
「その覚悟はできている」
沢田綱吉の言葉に一瞬気圧された。
ああ、その目は。
かつて一度、自分に向けられたことのある、瞳だ。
初代ボンゴレ、ジョットと同じ、瞳だった。
あの目をするものは、大きな変革をもたらす。
僅かな時間、思考に沈んでいたチェッカーフェイスに、更に言葉が掛けられる。
「そやつの覚悟は本物じゃぞ。だが、ちっと待ってくれ」
現れたのは、ボンゴレが出来た当初から、彫金師として遣え続けている男、タルボであった。
何やら変わった容れ物を持って現れたタルボは、その容器の説明を始める。
その容器は、おしゃぶりを永遠に封印するための器。
おしゃぶりの中の魂を器に入れ、それを保つための炎を夜の炎で加速させて循環させることで、その封印は完了する。
問題は、種火となる炎が巨大でなければならないこと。
夜の炎は、誰かが灯し続けなければならないということ。
バミューダは、夜の炎を灯し続けることに同意した。
そして、原初のシャーマン、セピラの子孫であるユニが、未来におけるトゥリニセッテの健在を約束したから。
だから、チェッカーフェイスもその首を縦に振った。
「これがうまくいったら!!オレ達の呪いは解けるんだろうな!!」
「約束しよう」
スカルの言葉に頷いたチェッカーフェイスは、その視線を地面に落として、呟いた。
「……これであの人も、報われるだろう」
祈るように合わせられた手を、悼むように閉じられた瞼を、リボーンは見逃さなかった。
……そして――
「まさか、沢田綱吉がイェーガーを倒すとはね……」
イェーガーのショートワープのカラクリを暴き、骸とヒバリの協力、そして古里炎真に託されたリングで、沢田綱吉は勝利へと王手を掛けた。
イェーガーをかばい、綱吉の前に立ち塞がったバミューダが、呪解して戦い始める。
バミューダは強い。
アルコバレーノ歴代最強という言葉を、躊躇なく口に出来るくらいには。
だが、沢田綱吉は、きっとその上をいく。
そんな確信めいたものが、チェッカーフェイスの心を満たしていた。
沢田綱吉は、勝つ。
リボーンの力を借りて、多くの者達に支えられて。
「さて、そろそろ準備をしなくてはな」
立ち上がり、帽子を深く被り直したチェッカーフェイスは、沢田綱吉とバミューダ・フォン・ヴェッケンシュタインを映す画面を消し、歩き出す。
彼らのいる場所には、彼独自の術を用いて移動する手筈となっていた。
自分の住まう空間と、彼らのいる空間とを術で繋げることで移動する。
空間を繋げた入り口の前に立ち、一瞬己の掌に視線を移す。
「……そろそろ、こちらもタイムリミットのようだね」
そう一人ごちて、チェッカーフェイスは彼らのいる空間へと、足を踏み出した。
* * *
「優勝はリボーンチームです!!」
代理戦争4日目。
綱吉達は遂に、バミューダ達復讐者を撃ち破り、その手に勝利を掴んだ。
尾道の宣言に、だが彼らの顔が晴れることはなかった。
此度の戦い、どう見たところで、犠牲が多すぎる。
「倒れたみんなは!?」
「全員病院に運んだ!!」
綱吉は、血の痕だけが残っている地面を、安心したような、不安なような顔で見つめる。
尾道は、そんな彼らを尻目に、無駄に明るい声で話を続けた。
「おめでとうございまーす!!優勝チームの虹の赤ん坊(アルコバレーノ)であるリボーンさんは、特別に呪いを解かれますよー!!ホホッ!!」
「ウソをつくな尾道」
「はい?」
「虹の代理戦争の本当の目的は、現アルコバレーノをお払い箱にして命を奪い、次におしゃぶりを守る次期アルコバレーノを選ぶことなんだろ?」
「えっ!?はっ!?一体何のことやら……」
「とぼけるな!!」
「我々が知らぬとでも!?」
「彼を責めてはいかんよ。尾道は本当に何も知らぬのだ」
「あららっ、これは……いらっしゃっていたのですか?チェッカーフェイス様!!」
尾道の声に、集まっていた者達全員が、ハッと声の主を睨み付けた。
ついに、口元に妖しく笑みを浮かべたチェッカーフェイスが、彼らの前へと姿を現したのだ。
「チェッカーフェイスが……ここに!?」
「奴は姿を現さないはずだぜ!?」
「こんな所にひょっこりやってくるもんなのかよ!?」
驚愕、動揺、そして一抹の恐れ……。
自分に向けられる様々な感情を見てとったチェッカーフェイスは、気分良さげに深く息を吸い込んだ。
ああ、良かった。
また、トゥリニセッテが正しい道筋に戻るのだ……。
一体何度、こうしてアルコバレーノの代替わりを見てきたことだろう。
その中でも、この代のアルコバレーノ達は、波瀾万丈だった。
未来での出来事、そして復讐者の介入。
そんな異常な出来事が立て続けに起きたからだろうか。
チェッカーフェイスが気紛れに、トゥリニセッテの成り立ちを話したのは。
彼の過去を、ずっとトゥリニセッテを守り続けてきた、一族の話を終えて、チェッカーフェイスは満足げに息を吐く。
「……うむ、話したらスッキリしたよ。では現アルコバレーノのおしゃぶりを返してもらおうか」
「待ってくれ!!他のやり方があるはずだ!!現アルコバレーノを見殺しにしなくても、おしゃぶりを維持する方法が!!」
「あったらとっくにやっているさ。この方法は残された最後の手段なのだ。それに沢田綱吉君。君は現アルコバレーノの心配ばかりしているが、次期アルコバレーノの筆頭候補だぞ」
「その覚悟はできている」
沢田綱吉の言葉に一瞬気圧された。
ああ、その目は。
かつて一度、自分に向けられたことのある、瞳だ。
初代ボンゴレ、ジョットと同じ、瞳だった。
あの目をするものは、大きな変革をもたらす。
僅かな時間、思考に沈んでいたチェッカーフェイスに、更に言葉が掛けられる。
「そやつの覚悟は本物じゃぞ。だが、ちっと待ってくれ」
現れたのは、ボンゴレが出来た当初から、彫金師として遣え続けている男、タルボであった。
何やら変わった容れ物を持って現れたタルボは、その容器の説明を始める。
その容器は、おしゃぶりを永遠に封印するための器。
おしゃぶりの中の魂を器に入れ、それを保つための炎を夜の炎で加速させて循環させることで、その封印は完了する。
問題は、種火となる炎が巨大でなければならないこと。
夜の炎は、誰かが灯し続けなければならないということ。
バミューダは、夜の炎を灯し続けることに同意した。
そして、原初のシャーマン、セピラの子孫であるユニが、未来におけるトゥリニセッテの健在を約束したから。
だから、チェッカーフェイスもその首を縦に振った。
「これがうまくいったら!!オレ達の呪いは解けるんだろうな!!」
「約束しよう」
スカルの言葉に頷いたチェッカーフェイスは、その視線を地面に落として、呟いた。
「……これであの人も、報われるだろう」
祈るように合わせられた手を、悼むように閉じられた瞼を、リボーンは見逃さなかった。
……そして――