代理戦争編

「だから、お願いです。一緒に戦ってください!!」

朝、沢田家に集められたのは、今回の代理戦争に関わる全ての人間だった。
深夜に聞かされた話を、改めて説明される。

「奴が優勝した瞬間に、リボーン達の命はなくなってしまうんです。だから僕としては、チームの垣根を越えてみんなの力を借りて、バミューダチームに勝って現アルコバレーノを死なせたくないんです!」
「ひとまず、手伝うかどうかは置いておいて……、このメンツが集められたわけはわかりましたよ」
「現在考えられる最強メンバーだなぁ」
「はい、ここに集まってもらったのは、拳をぶつけ合って戦った事があるから身をもって知っている……、信頼できるメンバーです」

キャバッローネ、黒曜チーム、ヴァリアー、ミルフィオーレ、シモン、そして並盛の実力者達。
これだけの並み居るメンバーで挑めば、或いは復讐者たちを倒すこともできるかもしれない。

「でも、ちょっと大げさなんじゃない?どんな相手だろうと、僕と綱吉クンが本気出せば2人で勝てるよ♪」

復讐者との接触がなかった白蘭が気楽にそう言ったが、綱吉は首を振って否定した。

「いいや……、それじゃダメなんだ白蘭。復讐者はメチャクチャ強い上に、あと四人もいる。しかも、その中で一番強いって言われるイェーガーって奴と少し戦ったんだけど、正直……戦闘力の上限が見えない!!」

ここにいる全ての者たちと拳をぶつけ合い、圧倒してきた綱吉の言葉に、全員の顔が真剣みを帯びる。

「ツナ君がそこまで言うなんて……」
「おやおや」
「でも、何か勝算はあるんでしょ?」
「わからない……」
「わからないってあなた!!」
「リボーンも、オレが戦う事には反対してるんだ。まったく勝ち目がないから……。ここにみんなに来てもらってる事も、リボーンが知ったらきっと反対すると思う……。もちろん、無理にとは言いません。この戦いは危険すぎるんだ……」

ボンゴレ10代目、沢田綱吉に、そこまで言わしめるイェーガーという男。
だが、綱吉の顔を見た者たちは、恐れるどころか、笑っていた。

「でも、ツナ君は勝ち目がないなんて顔、してないよ」
「そのようですね。負けるつもりなど、毛頭ない。そういう顔だ」
「こーゆー時の綱吉クンって、怖いんだ♪」
「何を企んでやがる、ドカス」
「まだ細かく詰めてはいないけど、1つだけ決めています。今度は、こっちから仕掛けるんだ!!」

力強く言った綱吉に、周りの強者たちも、獰猛に笑った。


 * * *


「そう言うわけだから、ツナ達はイェーガー以外の復讐者と。オレ達はイェーガーと戦うってことで良いな?」
「え、えーと……はい」

我が儘過ぎるメンバーの意見に振り回され、若干納得いかないように感じている様子だったが、綱吉は首を縦に振った。
一先ずの、大まかな勝負の構成は決まった。
後は細かく、作戦を突き詰めていくだけである。

「んじゃあ復讐者達を分断する作戦を練っていこーぜ」
「はい!」
「オレ達代理はバミューダチームを除いて残り3チーム。復讐者達はボスウォッチを狙って来るから、ツナと骸、ザンザスが三手に別れてイェーガーとバミューダコンビをツナ達のチームで引き付けて、残りの3人を他2チームで引き付けるのが妥当だと思うぜ」
「そ、そっか、バミューダはリボーンに答えを聞きに来なきゃいけないから……。でも、そうするとみんながバラバラに散らなきゃならないですよね?」
「幻術を使えば、奴らを誤魔化すことはわけない」
「な、なるほど」
「でもぉ、復讐者達は炎を感知して私たちの場所までワープして来るんでしょ?」
「え?そうなの!?」
「そうよ~、スクちゃんが言ってたもの」
「そうなのか」

全員の目がスクアーロに向く。
そしてその異変に、近くにいたザンザスがいち早く気付いた。

「……カスザメ?」
「……」

周りの者達も、返事を返さないスクアーロを不審に思い始める。
うつ向く彼女の顔を覗き込んだベルフェゴールが、ヒュッと息を飲んだ。

「スクアーロ……?」

うつ向いたまま動かないスクアーロは、どこを見ているのかわからない、酷く虚ろな目をしていて、こちらの声が聞こえていないのか、全く反応を返さない。
慌てて、肩を揺すろうとしたベルフェゴールだったが、スクアーロに触れるよりも早く、襟首を掴まれ、後ろに引き倒された。

「え、ボス!?」

ベルフェゴールを引き離したザンザスは、動かないスクアーロの胸ぐらをおもむろに掴んで引き寄せる。
そして……

―― ゴチィィン

「い゙っ……!!?」
「ボヤボヤしてんな、ドカス」
「あ、あ゙あ……!?」

頭突きをした。
物凄く痛そうな音がして、次の瞬間、額を真っ赤にしたスクアーロが仰向けに倒れていた。
愕然とした様子でガバリと起き上がったスクアーロは、そこでようやく、全員の視線が己に向いていることに気付いた。

「……な、何で見てんだぁ?」
「いや、何でって……」

自分が心此処に非ずな状態になっていたことをわかっていないようだった。
ディーノが恐る恐る訪ねた。

「大丈夫なのか……?」
「あ?何がだ……?」
「いや、……平気なら、良いんだが」

寝ていたのか?
ただぼうっとしていただけ?
だが、ベルフェゴールが呼び掛けてもピクリともしなかった。
一体、どうしたのだというのか……。

「スクちゃんたら、夜にちゃんと寝ないからそうなるのよ~」
「あー……居眠りしてたか?」
「クフフ、自己管理も出来ないとは、間抜けですね」

ルッスーリア達には、居眠りで済ませてしまわれたが、スクアーロの様子を直に見たベルフェゴールは、不安そうに見上げている。

「で、復讐者達のこと、どうやって騙せばいいの?ただの幻術では、その人の炎の反応を見られてバレちゃうんでしょ?」
「……アイツら騙すんなら、幻術で側を作ってその内側にそれぞれの炎を埋め込めば良いんじゃねーか?ほら、10年後でやってたチョイスの時の入江みたいに……」
「ああ、なるほど。正チャンの作った囮ロボのことだね?あれに心拍音を出す装置も追加すれば、もっと確実に騙せるんじゃない?」
「それを使い、奴らを3方向に別れさせる。沢田達のダミーがいるところにはイェーガーが来るだろうなぁ」
「じゃあそこに僕達が待ち伏せてれば良いわけだ♪」

トントン拍子に決まり、特に反論も出ず、そのままその作戦を決行することに決まった。
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