代理戦争編
―― ティリリッ
『バトル開始1分前です』
突然鳴った時計にアナウンスの声。
チリリと空気に緊張が走る。
「どうやらこれが、戦闘開始の合図のようだな」
「お前ら、準備は良いなぁ!?」
「しし、もっちろん!!」
「武者震いしちゃうわぁ!!」
『20秒前』
狙っていた敵の前に姿を現す。
狙いはもちろん……、
「スカル、何かいるよ!!」
スカルチーム、古里炎真!!
「あ、あなたたちは……ヴァリアー!!」
「わりぃが、ガキ相手でも手加減はしねぇぞ」
「負けるか、大地の重力(グラヴィタ・デッラ・テラ)!!」
古里が手をかざすことで、重力がかかり、建物ごと体を押し潰す。
だがこんなことは予想の範囲内。
「スゴいぞエンマ!!全員ぺっしゃんこだ!!」
「いや!!ちがう、これは……動物が身代わりに!?」
オレ達は重力がかかる前に逃げ、古里の死角に入り込んでいた。
「!!上か!!」
「素人がぁ、覚悟しろぉ」
剣から爆薬を発射して、古里とその周囲に爆発を起こさせる。
土煙が舞い、視界が悪くなった。
これで古里は技を使うことが難しくなった。
目標が見えなければ、あの重力の技をかけることはできねぇはずだ。
この状態で接近戦をけしかければ、アイツには対抗する手段がない。
そして接近戦においては、オレよりもルッスーリアだ。
爆煙の中から、鈍い衝突音と呻き声が聞こえてくる。
だが本命はルッスーリアではない。
ルッスーリアの攻撃の合間に、オレとベルのワイヤーが古里の腕を絡めとる。
ルッスーリアが下がり、その瞬間、きつくワイヤーを締め上げた。
同時に爆煙を伝って、レヴィの電撃が襲う。
言わば遠距離スタンガン!!
煙が晴れ、膝を着いた古里が見えた。
「やっとこさ大人しくなったぜ」
「くっ……」
「炎真!!」
「来ちゃダメだスカル!!僕の周りには見えないワイヤーが張り巡らされてる。それにアルコバレーノは戦闘しちゃいけないんだよ!」
「そうだったな!」
古里の言う通り、古里自身は動けず、スカルは手を出せず、他に助けてくれる人もいない。
重力で反撃してこないところを見ると、腕を縛ればコントロールが出来ないという推測は確かだったようだ。
「しししっ、スクアーロ隊長の言った通りだったぜ。腕さえ縛っちまえば、古里は大地の重力を上手くコントロールできない」
「できるさ!!」
「のわ?飛んでく~っ!」
「しまった!スカルに大地の重力を!!」
古里の力はとんでもない方向に……、スカルに向かって使われて、スカルはフワッと浮いて空を飛んでいく。
コントロール出来ないことも、確かなようだな。
「ヌハハハハ、やはりできぬではないか!!能力さえ使いこなせなければただのクソガキ!!」
パラボラで古里を殴ったレヴィは、未だに継承式でのことを根に持っているらしい。
女々しいことだ。
「私達は殺しのプロとしてボスの命令をキッチリこなすだけ。ちなみにボス『敵の腕時計を壊せ』ではなく『敵をかっ消せ』と言ったの。この意味、わかるかしら?」
「……いや、あいつ壊せも殺せもだいたい、『かっ消せ』って言うだろぉ」
こいつらマジに殺す気だったのか。
ボスに幹部全員で動いちゃいるが、仕事外のことなんだから、殺したら後々責任とるの面倒だし、死体やら証拠を消すのも面倒臭い。
「面倒だからサクッと時計壊して帰ろうぜ」
「ふざけるなスクアーロ!!ボスが『かっ消せ』と仰ったのだ!ここは殺すに決まっているだろうが!!」
「なぁ!!?なんだって!!?炎真を殺すー!!?」
周りに張っていた余分なワイヤーを回収しながら、勝手にレヴィのパラボラを拝借して古里の両隣に突き刺し、それにワイヤーを巻き付けて固定した。
「そもそも、今後ボンゴレと協力関係になっていくだろうファミリーのボスを、そう簡単に殺して良いわけねぇだろぉが!」
「でも沢田はまだボンゴレのボスじゃねぇし?」
「ボスは殺しを望まれているのだ!!」
「それに新しいヴァリアーリングの性能を試す実験体には丁度いいしぃ~」
沢田以外にボンゴレボスになれる奴はいねぇし、レヴィの言い方だとまるでザンザスが殺人鬼のようだし、リングの実験くらい他の目立たない場所でやれと思ったが、それよりもまず、オレ達暗殺者なのに、なに真っ昼間っから堂々と殺しをやろうとしてるんだオイ。
「とりあえず腕時計壊してから考えりゃ良いじゃねぇか」
「腕時計壊したら戦えないじゃない!!」
「しし、王子も反対!」
「ボスの意思を汲めない貴様がボス補佐というのはおかしい!!オレにその座を寄越せスクアーロ!!」
「ゔお゙ぉい!!今それ関係ねぇだろぉ!!」
「口喧嘩してないで殺っちゃいましょう!」
「しし、そうだぜ隊長♪カリカリしてないでサクッと殺してスッキリしよーぜ」
「そしてボスの隣はオレの席だ。さっさと引退しろ白髪頭!!」
「ゔお゙ぉい!!てめぇレヴィ今なんつったゴルァア!!」
レヴィの顔面にブーツの踵をめり込ませる。
そのままいつものように喧嘩という名の殺し合いに発展して、ルッスーリアとベルも参加して更に混迷を極め……。
「かっ消す!鮫特攻(スコントロ・ディ・スクアーロ)!!」
「スクアーロ、ネーミングセンスねぇんだよ!紅蓮の炎(フィアンマ・スカルラッタ)!!」
「誉めてくれボス!電気刺し(アッフォンド・フールミネ)!!」
「いい加減になさい!太陽膝(ジノッキアータ・ソラーレ)!!」
それぞれがかなり本気で放った必殺技が、ぶつかり合い、オレ達ヴァリアーの間にいた古里炎真に向かっていく。
「ヤベっ!」
このままだと当たる。
だが勢いのついた攻撃は止まらない。
切っ先が古里に当たる、その寸前だった。
―― ズドオッ!!
割り込んできた誰かが、オレ達の攻撃を受け止めた……!?
「誰なのよ!?」
「どーなってんだ!?」
「クリティカルヒットしてんのにぃ!!」
「持ち堪えている!!」
オレ達ヴァリアー幹部の攻撃を、真っ正面から受け止めた男が誰だかはわからねぇが、ラッキーだ!!
「攻撃、やめっ!!」
その場から飛び退き、現れた男から距離をとる。
その瞬間に、着けていた腕時計からベルの音とアナウンスの声が聞こえる。
『戦闘終了』
その声とともに、男の体が縮んだ。
そして赤ん坊サイズにまで戻ったそいつは、のたうち回りながら叫び出す。
「死ななくても痛いものは痛いんだ!!お~いて!!」
「こいつ……アルコバレーノのスカルだったのか!!」
「ホホホッ、それがチェッカーフェイス様からアルコバレーノの皆様へのプレゼントなのです、フフッ」
「てめーは尾道!!」
そこにヘラヘラと笑いながら現れたのは例の尾道だ。
そいつの説明によれば、アルコバレーノが呪いを解いて戦える時間が用意されているそうだ。
時間は代理戦争中の3分。
なるほど、それは面白そうだ。
「化けもんが増えるわけだな……。悪くねぇ」
それより問題は古里炎真を倒すことが出来ず尚且つ、それをシモンの仲間に見られたことである。
「炎真!!」
「あ、アーデル」
「よかった!!よかったわ!!」
「んむっ!」
騒ぎを察知して駆け付けたと思しき鈴木アーデルハイトが、古里を抱き締めて窒息死せんばかりに胸に押し付けている。
「むおっ!!妖艶な……!」
「レヴィが顔面崩壊してきたし帰るぞぉ」
「酷い顔ねぇレヴィ」
鼻血を出しそうなレヴィを追い立てて、ホテルに帰す。
「ゔお゙ぉい、悪かったな古里ぉ!!だが明日からも手加減はしねぇ。覚悟しておけよぉ!!」
捨て台詞のように言い放ってから、3人をおいて帰った。
「もう来んじゃねーぞぶわぁーか!!」
後ろからスカルの声だけが追ってきた。
『バトル開始1分前です』
突然鳴った時計にアナウンスの声。
チリリと空気に緊張が走る。
「どうやらこれが、戦闘開始の合図のようだな」
「お前ら、準備は良いなぁ!?」
「しし、もっちろん!!」
「武者震いしちゃうわぁ!!」
『20秒前』
狙っていた敵の前に姿を現す。
狙いはもちろん……、
「スカル、何かいるよ!!」
スカルチーム、古里炎真!!
「あ、あなたたちは……ヴァリアー!!」
「わりぃが、ガキ相手でも手加減はしねぇぞ」
「負けるか、大地の重力(グラヴィタ・デッラ・テラ)!!」
古里が手をかざすことで、重力がかかり、建物ごと体を押し潰す。
だがこんなことは予想の範囲内。
「スゴいぞエンマ!!全員ぺっしゃんこだ!!」
「いや!!ちがう、これは……動物が身代わりに!?」
オレ達は重力がかかる前に逃げ、古里の死角に入り込んでいた。
「!!上か!!」
「素人がぁ、覚悟しろぉ」
剣から爆薬を発射して、古里とその周囲に爆発を起こさせる。
土煙が舞い、視界が悪くなった。
これで古里は技を使うことが難しくなった。
目標が見えなければ、あの重力の技をかけることはできねぇはずだ。
この状態で接近戦をけしかければ、アイツには対抗する手段がない。
そして接近戦においては、オレよりもルッスーリアだ。
爆煙の中から、鈍い衝突音と呻き声が聞こえてくる。
だが本命はルッスーリアではない。
ルッスーリアの攻撃の合間に、オレとベルのワイヤーが古里の腕を絡めとる。
ルッスーリアが下がり、その瞬間、きつくワイヤーを締め上げた。
同時に爆煙を伝って、レヴィの電撃が襲う。
言わば遠距離スタンガン!!
煙が晴れ、膝を着いた古里が見えた。
「やっとこさ大人しくなったぜ」
「くっ……」
「炎真!!」
「来ちゃダメだスカル!!僕の周りには見えないワイヤーが張り巡らされてる。それにアルコバレーノは戦闘しちゃいけないんだよ!」
「そうだったな!」
古里の言う通り、古里自身は動けず、スカルは手を出せず、他に助けてくれる人もいない。
重力で反撃してこないところを見ると、腕を縛ればコントロールが出来ないという推測は確かだったようだ。
「しししっ、スクアーロ隊長の言った通りだったぜ。腕さえ縛っちまえば、古里は大地の重力を上手くコントロールできない」
「できるさ!!」
「のわ?飛んでく~っ!」
「しまった!スカルに大地の重力を!!」
古里の力はとんでもない方向に……、スカルに向かって使われて、スカルはフワッと浮いて空を飛んでいく。
コントロール出来ないことも、確かなようだな。
「ヌハハハハ、やはりできぬではないか!!能力さえ使いこなせなければただのクソガキ!!」
パラボラで古里を殴ったレヴィは、未だに継承式でのことを根に持っているらしい。
女々しいことだ。
「私達は殺しのプロとしてボスの命令をキッチリこなすだけ。ちなみにボス『敵の腕時計を壊せ』ではなく『敵をかっ消せ』と言ったの。この意味、わかるかしら?」
「……いや、あいつ壊せも殺せもだいたい、『かっ消せ』って言うだろぉ」
こいつらマジに殺す気だったのか。
ボスに幹部全員で動いちゃいるが、仕事外のことなんだから、殺したら後々責任とるの面倒だし、死体やら証拠を消すのも面倒臭い。
「面倒だからサクッと時計壊して帰ろうぜ」
「ふざけるなスクアーロ!!ボスが『かっ消せ』と仰ったのだ!ここは殺すに決まっているだろうが!!」
「なぁ!!?なんだって!!?炎真を殺すー!!?」
周りに張っていた余分なワイヤーを回収しながら、勝手にレヴィのパラボラを拝借して古里の両隣に突き刺し、それにワイヤーを巻き付けて固定した。
「そもそも、今後ボンゴレと協力関係になっていくだろうファミリーのボスを、そう簡単に殺して良いわけねぇだろぉが!」
「でも沢田はまだボンゴレのボスじゃねぇし?」
「ボスは殺しを望まれているのだ!!」
「それに新しいヴァリアーリングの性能を試す実験体には丁度いいしぃ~」
沢田以外にボンゴレボスになれる奴はいねぇし、レヴィの言い方だとまるでザンザスが殺人鬼のようだし、リングの実験くらい他の目立たない場所でやれと思ったが、それよりもまず、オレ達暗殺者なのに、なに真っ昼間っから堂々と殺しをやろうとしてるんだオイ。
「とりあえず腕時計壊してから考えりゃ良いじゃねぇか」
「腕時計壊したら戦えないじゃない!!」
「しし、王子も反対!」
「ボスの意思を汲めない貴様がボス補佐というのはおかしい!!オレにその座を寄越せスクアーロ!!」
「ゔお゙ぉい!!今それ関係ねぇだろぉ!!」
「口喧嘩してないで殺っちゃいましょう!」
「しし、そうだぜ隊長♪カリカリしてないでサクッと殺してスッキリしよーぜ」
「そしてボスの隣はオレの席だ。さっさと引退しろ白髪頭!!」
「ゔお゙ぉい!!てめぇレヴィ今なんつったゴルァア!!」
レヴィの顔面にブーツの踵をめり込ませる。
そのままいつものように喧嘩という名の殺し合いに発展して、ルッスーリアとベルも参加して更に混迷を極め……。
「かっ消す!鮫特攻(スコントロ・ディ・スクアーロ)!!」
「スクアーロ、ネーミングセンスねぇんだよ!紅蓮の炎(フィアンマ・スカルラッタ)!!」
「誉めてくれボス!電気刺し(アッフォンド・フールミネ)!!」
「いい加減になさい!太陽膝(ジノッキアータ・ソラーレ)!!」
それぞれがかなり本気で放った必殺技が、ぶつかり合い、オレ達ヴァリアーの間にいた古里炎真に向かっていく。
「ヤベっ!」
このままだと当たる。
だが勢いのついた攻撃は止まらない。
切っ先が古里に当たる、その寸前だった。
―― ズドオッ!!
割り込んできた誰かが、オレ達の攻撃を受け止めた……!?
「誰なのよ!?」
「どーなってんだ!?」
「クリティカルヒットしてんのにぃ!!」
「持ち堪えている!!」
オレ達ヴァリアー幹部の攻撃を、真っ正面から受け止めた男が誰だかはわからねぇが、ラッキーだ!!
「攻撃、やめっ!!」
その場から飛び退き、現れた男から距離をとる。
その瞬間に、着けていた腕時計からベルの音とアナウンスの声が聞こえる。
『戦闘終了』
その声とともに、男の体が縮んだ。
そして赤ん坊サイズにまで戻ったそいつは、のたうち回りながら叫び出す。
「死ななくても痛いものは痛いんだ!!お~いて!!」
「こいつ……アルコバレーノのスカルだったのか!!」
「ホホホッ、それがチェッカーフェイス様からアルコバレーノの皆様へのプレゼントなのです、フフッ」
「てめーは尾道!!」
そこにヘラヘラと笑いながら現れたのは例の尾道だ。
そいつの説明によれば、アルコバレーノが呪いを解いて戦える時間が用意されているそうだ。
時間は代理戦争中の3分。
なるほど、それは面白そうだ。
「化けもんが増えるわけだな……。悪くねぇ」
それより問題は古里炎真を倒すことが出来ず尚且つ、それをシモンの仲間に見られたことである。
「炎真!!」
「あ、アーデル」
「よかった!!よかったわ!!」
「んむっ!」
騒ぎを察知して駆け付けたと思しき鈴木アーデルハイトが、古里を抱き締めて窒息死せんばかりに胸に押し付けている。
「むおっ!!妖艶な……!」
「レヴィが顔面崩壊してきたし帰るぞぉ」
「酷い顔ねぇレヴィ」
鼻血を出しそうなレヴィを追い立てて、ホテルに帰す。
「ゔお゙ぉい、悪かったな古里ぉ!!だが明日からも手加減はしねぇ。覚悟しておけよぉ!!」
捨て台詞のように言い放ってから、3人をおいて帰った。
「もう来んじゃねーぞぶわぁーか!!」
後ろからスカルの声だけが追ってきた。