代理戦争編
「ぜってーダラシない顔してる、オレっ」
触った頬が熱いのは、温かい湯に浸かったから、だけじゃないだろう。
バスルームの扉越しに、跳ね馬の素直な気持ちを聞いて、オレも素直に気持ちを吐き出して、待ってくれ、って言って、待つと返してくれたことに、酷く安心した。
「……出よ」
ザパリと風呂から上がって、ざっと体を拭く。
髪は大雑把に髪留めで纏めて、下着と晒を身に付けて、その上からカッチリと服を着る。
バスルームを出てリビングスペースに戻ると、跳ね馬はソファーに座って寛いでいた。
「お、やっと来たな!って、髪びしょびしょじゃねーか」
「今から乾かすんだ」
どこぞのバカレヴィみたいに、髪の毛乾かさないままで風邪を引くほど、オレはバカじゃない。
それに、髪については、出来るだけ手入れは欠かさないようにしてるしな……。
向かいのソファーに腰掛けて、髪を乾かす。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「………………あまり見られてると気が散るんだがなぁ」
「でもやることねーから」
「じゃあとっとと帰ったらどうだぁ?」
「それはやだ。スクアーロの傍が良い」
「ガキか……」
呆れてそれ以上の感想が言えない。
やれやれと首を振ると、生乾きの髪がサラサラ揺れた。
「それよりさ、オレ達のチームとお前らのチーム、本当に同盟組まないのか?」
「ザンザスが決めたことだぁ!今さら変更はねぇぞ」
「でもよぉ……」
「……甘ったれたこと抜かして、戦いの手を抜いたりしたら、本当にかっ捌くからなぁ!!」
「いや、手加減はしねーよ!そこは、弁えてる!!」
「本当かぁ?」
「ほんと、ほんと!」
一瞬目を泳がせた跳ね馬に疑いの目を向けたが、手加減したらかっ捌けばそれで良いだけの問題だ。
宣言したから、文句言われても実行するつもりだからな。
「しっかしスクアーロの髪、長いなー!長い割りには痛んでねぇし。キラキラして綺麗だな!!」
「そうかぁ?」
奈々もそんなことを言っていたっけか。
だが、オレ自身はこの髪に良い思い出はあまりない。
こんな真っ白い髪、周りの人々は忌み嫌うばかりだったし、ザンザスへの誓いとして伸ばし始めたが、その念願が叶うことは……もう、無さそうだ。
乾かし終わって、ドライヤーと櫛を片し、適当なところで一つに括る。
そろそろ時間も時間だし、ザンザス達の様子を見に行かないとな。
なんか遅いし……もしかして暴れたりしてるんじゃないだろうか。
「んじゃそろそろレストラン戻るか!リボーン達の様子も気になるしな!!」
「お゙う」
同じ考えだったらしい跳ね馬と共に、一抹の不安を抱えながら、オレ達はレストランへと戻ったのだった。
* * *
「かっ消す!!」
「オレの食事の邪魔するな」
「抑えてボス!!ここには一般人もいるのよぉ!!」
「お、落ち着けよリボーン!!」
ドッカーンと盛大な音を立ててぶっ放された銃弾が、暴れるザンザスとリボーンを止めようとしていた二人をかする。
こんなところで暴れるなよお前ら!!と叫びたい気分だったが、先程までは自分も相当だったので、ここは抑える。
「ハ、ハハ……酷い有り様だな」
「現実逃避してねーであいつら止めるぞ」
「いや、どうやって止めるんだよ、あの魔王二人を……?」
確かに、二人は魔王という言葉に、遜色ないほどの破壊行為を行っている。
オレは少し考えたあと、角で震えるウェイターたちに近寄った。
「ゔお゙ぉい、さっきは悪かったなぁ。怪我はねぇかぁ!?」
「ヒィッ!?な、ないですぅ!!」
「そうかぁ。実は一つ頼みたいことがあるんだが、良いかぁ?」
「へ!?なんでしょうかっ!!」
「エスプレッソコーヒーとテキーラを持ってきてくれるかぁ?」
「え、えぇっ!?」
「できねぇならオレが取ってくるが……」
「で、出来ます!!だからあの!あの人たちのこと少しでも良いので抑えててもらえますかぁ!?」
「……努力する」
こういう時は好物で釣るのが一番良い。
奴らを止めるのは骨が折れるだろうが……、頑張ってみよう。
「ゔお゙ぉい!!ザンザス!なに暴れてんだぁ!?」
「リボーン!あんまり暴れるとこのホテルが壊れるぞ!!」
「スクちゃんー!!」
「ディーノさーん!!」
ボロボロの彼らにこの破壊行動の理由を聞くと、きっかけはただの小競り合いだったらしい。
口喧嘩が徐々にこの暴走へと発展したそうだ。
この二人思ってた以上に相性悪いな!!
「とりあえず二人とも落ち着けぇ!!暴れたところで何にもならねぇだろうがぁ!!」
「離せ、カスザメ!!」
「オレの食事の邪魔した奴は、何人たりとも撃ち殺すって宣言したぞ」
「そこまでは言ってなかっただろ!!」
「すぐにエスプレッソコーヒーとテキーラが来るから、それが飲みたきゃ大人しくしろぉ!!」
「!」
「仕方ねーな、コーヒーのために一時休戦してやっても良いぞ」
好物の名前にピタッと動きを止めた二人は、なんとか納得したのか、ようやく武器を収めて席についた。
部屋の天井だけじゃなくて、レストランの弁償も、か……。
リングの代金がマーモン持ちで助かった。
もしそうでなかったら、ヴァリアーは今頃破産していたかもしれない。
いや、半分はリボーンのせいだし、9代目に出させりゃいいか。
よし、解決。
「た、助かった~。ディーノさん、スクアーロ、ありがとうございました」
「いやいや、オレは大したことしてねーしな!!」
「オレだって飲み物注文しただけだぁ。……それより沢田ぁ。明日、お前の家によらせてもらうぞぉ」
「へ!?なんで?」
「この間の、詫びに伺う」
「あ、良いのにそんなこと気にしないで!!あれはリボーンが悪いんだし……」
「いや、詫びの品くらい持ってかねぇとオレの気がすまねぇ」
昼過ぎにと約束を取り付けたところで、跳ね馬に怪訝そうに聞かれた。
「この間……って、ツナとなんかあったのか?」
「いや、まあちょっとなぁ」
「?」
酔って沢田奈々に迷惑掛けた、とは、流石に言えなかった。
オレの黒歴史だぜ、本当……。
明日、家光の野郎と鉢合わせなければいいなぁ……。
しくしくと痛み出した胃の辺りを撫でて、オレは今すぐ休暇でもとって、誰も知り合いのいない所に行きたいと思ったのだった。
触った頬が熱いのは、温かい湯に浸かったから、だけじゃないだろう。
バスルームの扉越しに、跳ね馬の素直な気持ちを聞いて、オレも素直に気持ちを吐き出して、待ってくれ、って言って、待つと返してくれたことに、酷く安心した。
「……出よ」
ザパリと風呂から上がって、ざっと体を拭く。
髪は大雑把に髪留めで纏めて、下着と晒を身に付けて、その上からカッチリと服を着る。
バスルームを出てリビングスペースに戻ると、跳ね馬はソファーに座って寛いでいた。
「お、やっと来たな!って、髪びしょびしょじゃねーか」
「今から乾かすんだ」
どこぞのバカレヴィみたいに、髪の毛乾かさないままで風邪を引くほど、オレはバカじゃない。
それに、髪については、出来るだけ手入れは欠かさないようにしてるしな……。
向かいのソファーに腰掛けて、髪を乾かす。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「………………あまり見られてると気が散るんだがなぁ」
「でもやることねーから」
「じゃあとっとと帰ったらどうだぁ?」
「それはやだ。スクアーロの傍が良い」
「ガキか……」
呆れてそれ以上の感想が言えない。
やれやれと首を振ると、生乾きの髪がサラサラ揺れた。
「それよりさ、オレ達のチームとお前らのチーム、本当に同盟組まないのか?」
「ザンザスが決めたことだぁ!今さら変更はねぇぞ」
「でもよぉ……」
「……甘ったれたこと抜かして、戦いの手を抜いたりしたら、本当にかっ捌くからなぁ!!」
「いや、手加減はしねーよ!そこは、弁えてる!!」
「本当かぁ?」
「ほんと、ほんと!」
一瞬目を泳がせた跳ね馬に疑いの目を向けたが、手加減したらかっ捌けばそれで良いだけの問題だ。
宣言したから、文句言われても実行するつもりだからな。
「しっかしスクアーロの髪、長いなー!長い割りには痛んでねぇし。キラキラして綺麗だな!!」
「そうかぁ?」
奈々もそんなことを言っていたっけか。
だが、オレ自身はこの髪に良い思い出はあまりない。
こんな真っ白い髪、周りの人々は忌み嫌うばかりだったし、ザンザスへの誓いとして伸ばし始めたが、その念願が叶うことは……もう、無さそうだ。
乾かし終わって、ドライヤーと櫛を片し、適当なところで一つに括る。
そろそろ時間も時間だし、ザンザス達の様子を見に行かないとな。
なんか遅いし……もしかして暴れたりしてるんじゃないだろうか。
「んじゃそろそろレストラン戻るか!リボーン達の様子も気になるしな!!」
「お゙う」
同じ考えだったらしい跳ね馬と共に、一抹の不安を抱えながら、オレ達はレストランへと戻ったのだった。
* * *
「かっ消す!!」
「オレの食事の邪魔するな」
「抑えてボス!!ここには一般人もいるのよぉ!!」
「お、落ち着けよリボーン!!」
ドッカーンと盛大な音を立ててぶっ放された銃弾が、暴れるザンザスとリボーンを止めようとしていた二人をかする。
こんなところで暴れるなよお前ら!!と叫びたい気分だったが、先程までは自分も相当だったので、ここは抑える。
「ハ、ハハ……酷い有り様だな」
「現実逃避してねーであいつら止めるぞ」
「いや、どうやって止めるんだよ、あの魔王二人を……?」
確かに、二人は魔王という言葉に、遜色ないほどの破壊行為を行っている。
オレは少し考えたあと、角で震えるウェイターたちに近寄った。
「ゔお゙ぉい、さっきは悪かったなぁ。怪我はねぇかぁ!?」
「ヒィッ!?な、ないですぅ!!」
「そうかぁ。実は一つ頼みたいことがあるんだが、良いかぁ?」
「へ!?なんでしょうかっ!!」
「エスプレッソコーヒーとテキーラを持ってきてくれるかぁ?」
「え、えぇっ!?」
「できねぇならオレが取ってくるが……」
「で、出来ます!!だからあの!あの人たちのこと少しでも良いので抑えててもらえますかぁ!?」
「……努力する」
こういう時は好物で釣るのが一番良い。
奴らを止めるのは骨が折れるだろうが……、頑張ってみよう。
「ゔお゙ぉい!!ザンザス!なに暴れてんだぁ!?」
「リボーン!あんまり暴れるとこのホテルが壊れるぞ!!」
「スクちゃんー!!」
「ディーノさーん!!」
ボロボロの彼らにこの破壊行動の理由を聞くと、きっかけはただの小競り合いだったらしい。
口喧嘩が徐々にこの暴走へと発展したそうだ。
この二人思ってた以上に相性悪いな!!
「とりあえず二人とも落ち着けぇ!!暴れたところで何にもならねぇだろうがぁ!!」
「離せ、カスザメ!!」
「オレの食事の邪魔した奴は、何人たりとも撃ち殺すって宣言したぞ」
「そこまでは言ってなかっただろ!!」
「すぐにエスプレッソコーヒーとテキーラが来るから、それが飲みたきゃ大人しくしろぉ!!」
「!」
「仕方ねーな、コーヒーのために一時休戦してやっても良いぞ」
好物の名前にピタッと動きを止めた二人は、なんとか納得したのか、ようやく武器を収めて席についた。
部屋の天井だけじゃなくて、レストランの弁償も、か……。
リングの代金がマーモン持ちで助かった。
もしそうでなかったら、ヴァリアーは今頃破産していたかもしれない。
いや、半分はリボーンのせいだし、9代目に出させりゃいいか。
よし、解決。
「た、助かった~。ディーノさん、スクアーロ、ありがとうございました」
「いやいや、オレは大したことしてねーしな!!」
「オレだって飲み物注文しただけだぁ。……それより沢田ぁ。明日、お前の家によらせてもらうぞぉ」
「へ!?なんで?」
「この間の、詫びに伺う」
「あ、良いのにそんなこと気にしないで!!あれはリボーンが悪いんだし……」
「いや、詫びの品くらい持ってかねぇとオレの気がすまねぇ」
昼過ぎにと約束を取り付けたところで、跳ね馬に怪訝そうに聞かれた。
「この間……って、ツナとなんかあったのか?」
「いや、まあちょっとなぁ」
「?」
酔って沢田奈々に迷惑掛けた、とは、流石に言えなかった。
オレの黒歴史だぜ、本当……。
明日、家光の野郎と鉢合わせなければいいなぁ……。
しくしくと痛み出した胃の辺りを撫でて、オレは今すぐ休暇でもとって、誰も知り合いのいない所に行きたいと思ったのだった。