代理戦争編
「お、終わったぁぁああ!!」
「終わりました隊長!!」
「ボンゴレとチェデフに押し付けられた仕事全て終わりました!!オレ達は!この戦いに勝ったんですよ隊長ぅぅう!!」
「フッ……長い戦いだったなぁ!」
額には冷○ピタ。
髪の長い者は縛ったり、カチューシャで止めたりしている。
ほぼ全ての者が腕捲りをし、シャツの首もとはだらしなく緩められている。
首、肩、腰……時おり手首に湿布を張った者達を見て、スペルビ・スクアーロは満足げに目を細める。
そう、彼らは今、長い長い書類との戦いに勝ったのである。
今日が徹夜何日目なのか、それを数えることさえ億劫になるほど、仕事仕事の地獄の日々。
普段なら考えられないテンションで叫び、喜びを露わに万歳を繰り返す彼らからは、どこか狂気染みたものすら感じられる。
「す、スクアーロ隊長……!オレ、オレ今回の戦いで学びました!!働くことがこんなに素晴らしいことだったなんて!!」
「そうか……お前確かこの間スカウトした新人……。お前も、ついにヴァリアーに染まったんだなぁ!歓迎するぜぇ!!ゔお゙ぉい!ドカスどもぉ!!歓迎パーリィだぁ!!」
「イェァァアアアアア!!」
ヴァリアー幹部唯一の常識人とさえ言われているスクアーロも、この時ばかりは理性がぶちギレこの有り様である。
ギンギンに目を血走らせ、目の下には濃い隈を作って、叫んでいる。
食堂に向かった彼らは、万歳三唱をしながらスクアーロを称えている。
宴会を開かんと食堂に乗り込んだ彼らだったが、食堂のドアを開けた途端、中にいたザンザスにより、9割の者が倒れた。
「うるせぇぞドカス!!」
「てめぇザンザス!!こちとら凱旋気分で美味い飯でも食おうとここに来たんだぞぉ!!飯と酒くらいかっ食わせろぉ!!」
「そ、そうだそうだぁ!!」
「我々雨部隊のお陰で、書類の森がきれいさっぱりなくなったんだぞ!!」
「酒くらい!酒くらい飲ませてくれ!」
「カッ消す」
必死の抵抗を見せた隊員達だったが、ザンザスという化け物の前に倒れ伏し、残ったスクアーロの理性が戻るまでの一時間、ザンザスが物を投げて壊す音と、スクアーロの怒鳴り声が響き渡り続けたのだった。
* * *
「……あ゙あ?代理戦争?」
「うん、君たちに僕の代理になって欲しいんだ」
「代理、なぁ……」
雨部隊の暴動が収まってから1時間半が経ち、綺麗に片付けられた食堂でザンザスを抜いたいつものメンバーが揃っていた。
ザンザスの逆鱗に触れてしまったために、書類戦争の打ち上げは中止となってしまい、ガックリと項垂れた雨部隊の隊員達をとりあえずゆっくり寝るように労ったスクアーロは、疲れきった顔でボヤいた。
「その鉄帽子の男だったか?胡散臭すぎねぇかぁ?」
「ムッ、それはそうだけど、僕を虹の呪いから開放することができるのはソイツだけって言うのは確かだと思うよ」
アルコバレーノを一人減らすために、彼らの中で最も強い者を選ぶ戦い。
アルコバレーノ同士が戦うわけにもいかないので、それぞれが代理を立てて戦う、ということを夢の中でのたまった鉄帽子の言葉を、完全に信頼できるわけではないが、それ以外に呪いを解く方法は見付かっていない。
使用人に氷嚢を持ってきてもらったスクアーロは、それを額にジュウっと押し当てた。
やはり、一度休んでもらってから話を聞いてもらうべきだっただろうか。
マーモンは心配そうにスクアーロを覗き込むが、ヒラヒラと手を振られて続きを促されただけだった。
「場所は日本、詳しい説明は後から。君達が協力してくれるなら、今回の戦いのためにヴァリアーリングを自費で作っても構わないよ!協力してくれないかい?」
「自費で!?マモちゃんも本気なのねぇ」
「しし、リング手に入るってんなら協力してやっても良いかもな」
「オレも構わん」
「オレも構わねぇ。仕事も一段落したしなぁ」
スクアーロは構わないとは言っているが、あの様子ではしばらく休まないと戦いは厳しそうだ。
珍しく全身の仕込み武器を外して、軽装でだらけるスクアーロに、マーモンは不安そうな目を向ける。
と言ってもフードの下に隠れていて、その表情は誰にも見えないのだが。
「で、リングなんだけど……」
「リングならもうタルボのジイさんに頼んでるぜぇ」
「え?」
今回キーになるだろうリングについて、マーモンが切り出すと、何故かスクアーロが平然と言い放った。
全員初耳である。
「数日後には出来上がるらしいが、マーモンは支払いだけすればいい」
「え?え?いつの間に!?」
「この間の継承式で会ったときに……言ってなかったかぁ?」
「聞いてねーし!!」
「そうよぉ!!言ってくれれば私がデザイン考えたのに~!!」
「……まあ、良いじゃねぇか。細かいこと気にしてたら胃に穴が開くぜぇ」
胃に穴が開きそうなのはお前だろうと全員が思ったが、そこは口をつぐむ。
しかし、普段から報告はきちんとするタイプのスクアーロが、そんな大事なことを忘れているとは珍しいこともあるものだ。
「だが、リングがすぐに出来るというのは良かったではないか」
「ム……確かにそうだね。でもスクアーロが頼んだんなら僕がお金払う必要ないんじゃ……。」
「仕事もなくなったしブラジルに旅行でも行くか?」
「ちゃんと払うよ!感謝してよね!!」
わざわざ日本の裏側に行くとは意地が悪い。
恨みがましくスクアーロを見ていたマーモンだったが、すぐに気を取り直して、請求書を渡すようにスクアーロに頼んだ。
長年の念願だった、呪いからの開放のためなのだ。
ケチ臭いことを言っている暇はない。
「で、日本に行くのはいつだぁ?」
「出来るだけ早い方が良いかな」
「ザンザスには話してあるんだろ?なら、すぐにでも発つかぁ。リングは後から送ってもらえば良いしなぁ」
幹部全員が納得したのを確認し、立ち上がったスクアーロがテキパキと指示を下す。
飛行機の手配、荷物の準備、リング配送の指示……その他諸々。
だがその途中で、突然男が食堂に飛び込んできて叫んだ。
「す、スクアーロ様ぁ!!緊急事態です!!びゃ、白蘭達が逃げ出しました!!」
「なんですって!!」
「白蘭達、ってこたぁ真6弔花も逃げ出したってことだなぁ?」
飛び込んできたのは見張り番の男だった。
怪我はないようだから、強行突破ではなく、幻術やら、パラレルワールドの知識やらを使って逃げ出したのだろう。
スクアーロは落ち着いて、懐から機械を取り出す。
「スク先輩、何それ?」
「デイジーの人形に取り付けた発信器の位置を示してる。この位置だと、もう随分遠いな……。……ん゙?」
「どうしたのスクアーロ」
「……どうやら、奴ら、ジッリョネロのアジトに向かってるみたいだぁ」
「ジッリョネロ……ユニたちのファミリーね!」
「あの、白蘭らを捕らえていた部屋にこのようなものが!」
後から来たもう一人の見張りがメモのような小さな紙切れを差し出す。
全員でその紙切れを覗き込んだ。
『アリアとユニちゃんに代理戦争の代理をたのまれちゃったんだ。悪いけど僕達はユニちゃんのところに行くね♪君達はマーモンクンの代理かな?代理戦争では敵同士になるわけだけど、お互い楽しもうね♪』
最後まで読み上げたところで、スクアーロの手によりメモが破られた。
血管が浮かんでいるが、スクアーロは深呼吸をしてなんとか自身を落ち着かせる。
「……どうやら、今回の戦いの敵の内、1チームが誰か、ハッキリしたようだなぁ」
「どうするんだい、スクアーロ?」
「放っておくぞぉ。ユニやアリアがついているなら、問題ねぇだろ。もしまた暴れるんなら沢田けしかけりゃいいし」
「しし、なんかスクアーロにしては雑じゃね?」
「……アイツに関わるの、だりぃ」
本音だね。
しし、本音が出たな。
スクアーロがやつれた顔で言った言葉に、それぞれが感想を漏らす。
ただ、全員とも白蘭達に対して良い思い出があるわけではないので、結局放置することに落ち着いた。
「んじゃあ、出るぞぉ!」
「しし、また日本だな!」
そして彼らは日本へと発ったのだった。
「終わりました隊長!!」
「ボンゴレとチェデフに押し付けられた仕事全て終わりました!!オレ達は!この戦いに勝ったんですよ隊長ぅぅう!!」
「フッ……長い戦いだったなぁ!」
額には冷○ピタ。
髪の長い者は縛ったり、カチューシャで止めたりしている。
ほぼ全ての者が腕捲りをし、シャツの首もとはだらしなく緩められている。
首、肩、腰……時おり手首に湿布を張った者達を見て、スペルビ・スクアーロは満足げに目を細める。
そう、彼らは今、長い長い書類との戦いに勝ったのである。
今日が徹夜何日目なのか、それを数えることさえ億劫になるほど、仕事仕事の地獄の日々。
普段なら考えられないテンションで叫び、喜びを露わに万歳を繰り返す彼らからは、どこか狂気染みたものすら感じられる。
「す、スクアーロ隊長……!オレ、オレ今回の戦いで学びました!!働くことがこんなに素晴らしいことだったなんて!!」
「そうか……お前確かこの間スカウトした新人……。お前も、ついにヴァリアーに染まったんだなぁ!歓迎するぜぇ!!ゔお゙ぉい!ドカスどもぉ!!歓迎パーリィだぁ!!」
「イェァァアアアアア!!」
ヴァリアー幹部唯一の常識人とさえ言われているスクアーロも、この時ばかりは理性がぶちギレこの有り様である。
ギンギンに目を血走らせ、目の下には濃い隈を作って、叫んでいる。
食堂に向かった彼らは、万歳三唱をしながらスクアーロを称えている。
宴会を開かんと食堂に乗り込んだ彼らだったが、食堂のドアを開けた途端、中にいたザンザスにより、9割の者が倒れた。
「うるせぇぞドカス!!」
「てめぇザンザス!!こちとら凱旋気分で美味い飯でも食おうとここに来たんだぞぉ!!飯と酒くらいかっ食わせろぉ!!」
「そ、そうだそうだぁ!!」
「我々雨部隊のお陰で、書類の森がきれいさっぱりなくなったんだぞ!!」
「酒くらい!酒くらい飲ませてくれ!」
「カッ消す」
必死の抵抗を見せた隊員達だったが、ザンザスという化け物の前に倒れ伏し、残ったスクアーロの理性が戻るまでの一時間、ザンザスが物を投げて壊す音と、スクアーロの怒鳴り声が響き渡り続けたのだった。
* * *
「……あ゙あ?代理戦争?」
「うん、君たちに僕の代理になって欲しいんだ」
「代理、なぁ……」
雨部隊の暴動が収まってから1時間半が経ち、綺麗に片付けられた食堂でザンザスを抜いたいつものメンバーが揃っていた。
ザンザスの逆鱗に触れてしまったために、書類戦争の打ち上げは中止となってしまい、ガックリと項垂れた雨部隊の隊員達をとりあえずゆっくり寝るように労ったスクアーロは、疲れきった顔でボヤいた。
「その鉄帽子の男だったか?胡散臭すぎねぇかぁ?」
「ムッ、それはそうだけど、僕を虹の呪いから開放することができるのはソイツだけって言うのは確かだと思うよ」
アルコバレーノを一人減らすために、彼らの中で最も強い者を選ぶ戦い。
アルコバレーノ同士が戦うわけにもいかないので、それぞれが代理を立てて戦う、ということを夢の中でのたまった鉄帽子の言葉を、完全に信頼できるわけではないが、それ以外に呪いを解く方法は見付かっていない。
使用人に氷嚢を持ってきてもらったスクアーロは、それを額にジュウっと押し当てた。
やはり、一度休んでもらってから話を聞いてもらうべきだっただろうか。
マーモンは心配そうにスクアーロを覗き込むが、ヒラヒラと手を振られて続きを促されただけだった。
「場所は日本、詳しい説明は後から。君達が協力してくれるなら、今回の戦いのためにヴァリアーリングを自費で作っても構わないよ!協力してくれないかい?」
「自費で!?マモちゃんも本気なのねぇ」
「しし、リング手に入るってんなら協力してやっても良いかもな」
「オレも構わん」
「オレも構わねぇ。仕事も一段落したしなぁ」
スクアーロは構わないとは言っているが、あの様子ではしばらく休まないと戦いは厳しそうだ。
珍しく全身の仕込み武器を外して、軽装でだらけるスクアーロに、マーモンは不安そうな目を向ける。
と言ってもフードの下に隠れていて、その表情は誰にも見えないのだが。
「で、リングなんだけど……」
「リングならもうタルボのジイさんに頼んでるぜぇ」
「え?」
今回キーになるだろうリングについて、マーモンが切り出すと、何故かスクアーロが平然と言い放った。
全員初耳である。
「数日後には出来上がるらしいが、マーモンは支払いだけすればいい」
「え?え?いつの間に!?」
「この間の継承式で会ったときに……言ってなかったかぁ?」
「聞いてねーし!!」
「そうよぉ!!言ってくれれば私がデザイン考えたのに~!!」
「……まあ、良いじゃねぇか。細かいこと気にしてたら胃に穴が開くぜぇ」
胃に穴が開きそうなのはお前だろうと全員が思ったが、そこは口をつぐむ。
しかし、普段から報告はきちんとするタイプのスクアーロが、そんな大事なことを忘れているとは珍しいこともあるものだ。
「だが、リングがすぐに出来るというのは良かったではないか」
「ム……確かにそうだね。でもスクアーロが頼んだんなら僕がお金払う必要ないんじゃ……。」
「仕事もなくなったしブラジルに旅行でも行くか?」
「ちゃんと払うよ!感謝してよね!!」
わざわざ日本の裏側に行くとは意地が悪い。
恨みがましくスクアーロを見ていたマーモンだったが、すぐに気を取り直して、請求書を渡すようにスクアーロに頼んだ。
長年の念願だった、呪いからの開放のためなのだ。
ケチ臭いことを言っている暇はない。
「で、日本に行くのはいつだぁ?」
「出来るだけ早い方が良いかな」
「ザンザスには話してあるんだろ?なら、すぐにでも発つかぁ。リングは後から送ってもらえば良いしなぁ」
幹部全員が納得したのを確認し、立ち上がったスクアーロがテキパキと指示を下す。
飛行機の手配、荷物の準備、リング配送の指示……その他諸々。
だがその途中で、突然男が食堂に飛び込んできて叫んだ。
「す、スクアーロ様ぁ!!緊急事態です!!びゃ、白蘭達が逃げ出しました!!」
「なんですって!!」
「白蘭達、ってこたぁ真6弔花も逃げ出したってことだなぁ?」
飛び込んできたのは見張り番の男だった。
怪我はないようだから、強行突破ではなく、幻術やら、パラレルワールドの知識やらを使って逃げ出したのだろう。
スクアーロは落ち着いて、懐から機械を取り出す。
「スク先輩、何それ?」
「デイジーの人形に取り付けた発信器の位置を示してる。この位置だと、もう随分遠いな……。……ん゙?」
「どうしたのスクアーロ」
「……どうやら、奴ら、ジッリョネロのアジトに向かってるみたいだぁ」
「ジッリョネロ……ユニたちのファミリーね!」
「あの、白蘭らを捕らえていた部屋にこのようなものが!」
後から来たもう一人の見張りがメモのような小さな紙切れを差し出す。
全員でその紙切れを覗き込んだ。
『アリアとユニちゃんに代理戦争の代理をたのまれちゃったんだ。悪いけど僕達はユニちゃんのところに行くね♪君達はマーモンクンの代理かな?代理戦争では敵同士になるわけだけど、お互い楽しもうね♪』
最後まで読み上げたところで、スクアーロの手によりメモが破られた。
血管が浮かんでいるが、スクアーロは深呼吸をしてなんとか自身を落ち着かせる。
「……どうやら、今回の戦いの敵の内、1チームが誰か、ハッキリしたようだなぁ」
「どうするんだい、スクアーロ?」
「放っておくぞぉ。ユニやアリアがついているなら、問題ねぇだろ。もしまた暴れるんなら沢田けしかけりゃいいし」
「しし、なんかスクアーロにしては雑じゃね?」
「……アイツに関わるの、だりぃ」
本音だね。
しし、本音が出たな。
スクアーロがやつれた顔で言った言葉に、それぞれが感想を漏らす。
ただ、全員とも白蘭達に対して良い思い出があるわけではないので、結局放置することに落ち着いた。
「んじゃあ、出るぞぉ!」
「しし、また日本だな!」
そして彼らは日本へと発ったのだった。