代理戦争編

数十分後、ヴァリアー幹部の5人が揃い、オレ達を乗せたジェット機はイタリアを発った。

「こんなに大人数で行くの?」
「問題発生だと」
「問題?」
「フランを他の組織も狙ってるって情報が入った。念には念をだ……あ」
「『あ』?『あ』ってどういう意味だいスクアーロ!?まさか手紙を……!」
「いや、気のせいだ。問題ねぇ」
「ほ、ほんと?」

ちなみにオレは、マーモンの手紙の染み抜きをしながらの移動である。
暇な時間ないんだよ。
仕方ないだろ。

「それにしても、そいつそんなに有望なんだね。だからといって別に興味ないけど」
「つっても、未来のカエルより10歳も若いんだし、ただの鼻タレ小僧だぜきっと」
「なんだか嬉しそうだね、ベル」
「あいつにはカリがあんのよ。王子的に♪」

黙々と手紙の染みを抜いていく。
書類にコーヒーを……なんてことはあったが、スープだとやっぱり落ちねぇな……。
若干薄くはなったが、結構くっきり染みが残ってしまっている。

「……どう、スクアーロ?」
「あー……、これが限界だな」
「そうか……」

一応アイロンをかけてパリッとさせた手紙を返すが、あれじゃ読めやしねぇよな。

「スクアーロ……これじゃやっぱり読めないよ。悪いけど、ジュラに着いたら、この手紙を解読するために行きたい場所があるんだ。別行動してもいいかい?」
「ん゙……まあ、フランは何にしろ連れてくるつもりだしなぁ。居場所を探ってくれりゃ、そのあとは好きにして良いぜぇ。だが出来るだけ早く戻ってこいよぉ」
「ありがと」

アルコバレーノに関わることは、オレも口出ししたくはねぇし、仕事さえしてくれるなら構わない。
マーモンの参加だって、顔合わせの必要があったからだしな。
コーヒーを啜り、時計を見る。
フランスまではもう少しだ。


 * * *


「上流ってーと、まだまだ登るなぁ」
「すでに相当歩いたぞ」

オレ達はフランが遊んでいるという、川の上流を目指して河原を歩いていた。
河原といっても、険しい岩や高い崖がある、とても子供がいるとは思えない場所だ。
マーモンは既に別れて、どこか違う場所に向かっている。
オレ達は私服風の隊服を身に付けていて、いつもよりラフな格好をしていた。
目立たないためのものなので、色のせいでやたら目立つオレの髪は、ニット帽の中に仕舞ってある。
そのために、首もとが落ち着かない。
ハイネックのシャツを着ているので寒くはないが、……落ち着かない。
しばらく進むと、高い崖とそこから流れる細い滝が現れた。

「あいつこーゆー所で遊んでんだ」
「確かに悪くない自然の遊具だが、普通のガキならぜってーに来れねぇな」
「やっぱフランは普通じゃなくてアホってことだろ?」
「まったくだびょん」

険しい崖を登りきり、ベルが放った言葉に返ってきた、聞き覚えのない声に、ハッと右方の茂みに注意を向けた。

「なっ!!」
「んあ!?」
「六道骸!!」
「ヴァリアー!!」

茂みから現れたのは、六道骸に城島犬、柿本千種と……あれは確か六道達と共に脱獄したM.Mとかいう女か?

「……!!なるほどそういうことですか。どうやらあなた達もフラン獲得に動いていたようですね」
「他の組織ってのはお前らのことだったのか、六道骸ぉ」
「クフフ、相手にとって不足なし」

余裕そうにカッコつけてるところ悪いが、ヴァリアーだって現在人員不足で、寝る間も惜しんで働いているのだ。
オレのために絶対フランは手に入れる。

「おっ、いたぜ。あれじゃね?」

ベルの言葉に振り向き、木の枝の間から人影を見付ける。
そこにいたのは……、なぜか頭に大きなリンゴの被り物をした子供。

「相変わらず、おばあちゃんの弁当まずかったなー。さーてと、何してグレようかなー」

あの被り物に間延びした声……。
間違いなく、子供のフランがそこにいた。
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