継承式編

――で、翌朝である。

「よく寝てたみてーだな、ママンに抱きついてたスクアーロ」
「……!」
「しっかり写真撮っといたぞ」
「……!?」
「まさか酔っ払って人妻に手を出すとはな」
「出してねーよ……つか、黙れ……」
「不倫か?」
「ちげっ……うぅ!!」

反論も満足にできないほど、頭が痛い……。
二日酔いになるなんて、不覚だ。
ヒラヒラと写真を見せびらかして笑うリボーンに、精一杯のメンチを切る。

「家光に送っちまうか?」
「……何がしてぇんだ」
「お前の身の上が聞きてぇだけだぞ」

そんなことのために、人を脅すなよ。
しかも今は早朝5時から。
奈々は既に起き出しているが、他の住人はまだ夢の中である。

「身の上……つうと、なんで男のフリしてるか、って話かぁ?」
「そうだぞ」
「なんでそんなこと……」
「オレが気になるからだ」
「……」

なんつー俺様……。
沢田も苦労しているのだろうな。
長くなることを前置きして、渋々話し始めた。
こんな話、クソ真面目にしたのは、ザンザスと話したとき以来だろうか。
……そういえば、未来のオレは跳ね馬にこのこと話していたのか?
未来のオレは、奴のことをどう思ってたのだろう。
心は許していたようだった。
だからといって、それが好きに直結するわけではなくて。
……ただでさえ、二日酔いで頭が痛いのに、更に痛くなりそうだ。

「――というわけで、オレの性別は男とされているし、自分でも男として生きてきた」
「ヒデー親父だな」
「……確かにそうだ。酷い親父さ。だがテメーに言われるのはムカつくぜぇ。それに、どんな奴でも、オレの親だったんだ」
「ふーん」

自分から聞いといて、なんだその態度は。
二日酔いがなければ、コイツを取っ捕まえてぶん殴ってたのに……!!

「まあ、約束通り話したしな。写真は返してやるぞ」
「……データも消せよ」
「仕方ねーな」

リボーンがデータを消したのを確認して、ほっと一息。
さて、住人達が起き出す前に、奈々に謝りにいこう。
人の良いあの母親のことだから、笑って許してくれそうではあるが。
部屋を出てキッチンに向かい、料理をする奈々に声をかけた。

「……奈々さん、昨日はご迷惑をお掛けして……大変申し訳ありませんでした」
「スクアーロちゃん!!いいのよ気にしないで!!私も娘ができたみたいで楽しかったわぁ♪」

む、娘……。
ていうかいつの間に、『ちゃん』なんてつけて呼ばれてるんだ。
作った笑顔がヒクリと引き攣るのがわかった。

「あの、後日お詫びに伺いますので……」
「もう良いのよ!それより体調はどうかしら?」
「……少し二日酔い気味で」
「まあ……。じゃあ、シャワー浴びてきたらどう?スッキリするはずよ」
「……ありがとうございます」

嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑いながら背中を押されて風呂場に案内される。
……至れり尽くせりだな。
シャワーを浴びれるのは嬉しいから、今回は言葉に甘えるが、お詫び、良いもの持ってこないとな。
まあ、まず一番の問題は。

「家光には絶対バレねーようにしねぇとな……」

サッとシャワーを浴びて身支度を整える。
朝食にも誘われたが、これ以上仕事をサボるのもまずいので、今度こそは丁重に辞退させてもらった。
そして、沢田家を出て『ヴァリアーのやつら怒ってるかもしれねぇな……』と考えたところでハッとした。

「そういや、未来でいたフランって奴のこと、忘れてた……」

そしてそこから少し離れたところで、とある会話が交わされていた。

「クフフ、フランの居場所を掴みました。出ますよ、犬、千種、M.M」
「骸さん!大変れす!!緊急事態だびょん!!」
「フランスまでのお金が足りません」
「僕が出所したばかりだったのを忘れていました……。まずはある程度の金を集めねば……」

シモンとの戦いが終わり、また新たな物語が動き始めた。
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