リング争奪戦

門外顧問達の動向を調べていたところ、チームの一人が日本に向かったことがわかった。
すぐにオレは奴を追って、日本へと飛び立つ。

「ゔお゙ぉい!!そこのガキぃ!てめぇ、門外顧問のモンだな?」
「お前は、ヴァリアーのっ!!」

追いかけていった先で、一人の少年を見つけた。
他に仲間はいないようだ。
ハーフリングを運ぶのに、こんな年若い未熟な少年を使うことはないだろう。
となると、こいつは囮か、はたまた全く関係のない用事でここにいるのか。
後者はないだろう。
こんな時期だ。
偽のリングを持った囮と考えた方が自然だ。
オレが考えている内に、門外顧問のガキは踵を返して逃げ出した。
何も聞かずに逃げるとか怪しすぎるだろう。
何より、逃げられたら捕まえたくなるじゃあねぇか。

「ゔお゙ぉい、待ちやがれぇ!!」
「くっ……!」

ガキの足下に小型の爆薬を当てる。
怯んで足を止めたガキにオレは問いかけた。

「ガキぃ。こんなところで何してやがる?」
「……そちらの方こそ、暗殺部隊ヴァリアーが、日本で何を企んでいる?」
「聞いてるのはこっちだぁ。答えた後に質問するんだなぁ」

めんどくせぇ、質問に質問で返しちゃダメだと習わなかったのか?
イライラして、普段よりも更に人相が悪くなる。
ガキは今度こそは、逃げ出さずに武器を構えた。

「致し方がない……!」

戦う気か?
弱ぇ奴と戦っても面白くねぇんだがな。

「チッ……、仕方ねぇ」

オレも武器を構え、お互いに神経を研ぎ澄ます。
門外顧問のガキは何か、丸薬のようなものを口にした。
新手のドーピングか何かか?
だが、額に付いた青い炎を見て、その正体に気が付く。

「そういやぁ、聞いたことがあるぜぇ。ボンゴレの開発室が、薬物によって死ぬ気の炎を引き出すことに成功したってなぁ」

ガキが地を蹴り、真っ直ぐに走り出す。
迫り来る刃を交わし、持っていた剣の柄を思いっきり鳩尾に捩じ込む。

「グ、ハッ……!?」
「答え聞くまでは殺しやしねぇ。これ以上痛い思いしたくねぇなら、大人しくさっさと吐きやがれぇ!!」

四つん這いになって耐えるガキが、下からオレを睨み付けた。
答える気はねぇってか?

「はっ、いい根性してんじゃねぇかぁ。時間ならたっぷりある。じっくり楽しもうぜぇ!」

煽るように話しながら、見えねぇところで部下に命令を与える。
沢田家光の動向調査。
そして、最近よく日本に来ていて、尚且つ9代目や門外顧問と交流がある、跳ね馬ディーノの監視も。
震えながらも、ムクリと起き上がったガキが、一瞬で後ろに飛んで距離をとり、反撃してきた。
余裕で避ける。
どこを狙ってやがる、こんなもんじゃあ掠りもしねぇ。
ガキがブーメランをキャッチしたところで、一気に間合いを詰めて横っ腹を蹴った。
防御が甘すぎんだ。
吹っ飛び、建物の屋上の縁から落ちそうになっているガキに、叫んだ。

「ゔお゙ぉい、よえぇぞ!」

よえぇ奴と戦っても詰まんねぇからなぁ。
門外顧問が動き出すまでの間、精々オレを、楽しませろ。
非常階段に降りて逃げるガキの後を追い、オレは暫しの間、命懸けの鬼ごっこを楽しむことにした。
攻撃も防御も甘いが、その肉体はよく育てられているようだ。
ああいう、強者の原石とも呼べるような奴は、嫌いじゃねぇ。
2/30ページ
スキ