継承式編

「た、隊長!ただ今日本の9代目ファミリーから連絡が入りました!!10代目一行がシモンファミリーに勝利!」
「勝ったのか!!」
「現在捕縛したシモンファミリーと10代目ファミリーを連れて戻る途中だそうです!」

そうか、と頷いたスクアーロに、部下が言いづらそうに喋る。

「それで、その……帰還したアルコバレーノ、リボーンより、スクアーロ隊長へ言伝てが……」
「あ゙あ?リボーンがオレに何の用だ……?」
「その、六道骸について聞きたいことがあると……」
「……」

大きな溜め息がこぼれ落ちる。
ガシガシと頭を掻いて、今から向かうとだけ言ったスクアーロは、いつもの3割増しの仏頂面で部屋を出ていった。

「……最近、隊長元気ないよな」
「若いのに白髪だしな」
「それは生まれつきだろうが。真面目に聞けよお前」

スクアーロが部屋を出ると、日本から連絡を受け取った男がキッチリとしていた姿勢を崩して話し始める。
隣にいた同僚がそれに答えた。

「はいはい。だがまあ、たまにボケーとしてっことあるよな」
「そーなんだよな!あの白蘭って奴ら捕まえてからはずっと苛ついてる感じだったけど、最近はなんかもう、疲れきったサラリーマンみたいになっちまってるよな」
「まあヴァリアーで一番働いてると言っても過言じゃないよな。あのXANXUS様の世話焼いて、あの個性的過ぎる幹部をまとめて、何だかんだオレ達のことも気にかけてくれてるし?」
「いい人だよな……いや、いい上司?」
「苦労人だけどな」

コーヒーを注いで、寛ぎながら、それぞれが脳内にスクアーロを思い浮かべる。

「聞くとこによるとよ、あの人子供の頃から苦労してたんだろ?両親の仇をとるために剣豪倒して回ってたとか?」
「オレは家から放り出されて、剣豪倒して回りながら金を集めて学校に通うための学費集めてたって聞いたぞ?」

どうやら本人がその素性を語らないせいで、様々な流言飛語が飛び交っているらしい。

「どっちが本当にしろ大変だったんだろうな。そりゃあ白髪にもなるな」
「いやだからアレ生まれつきだろ?」
「最近はずっとイタリアと日本を行ったり来たりしてるしな」
「あー、リング争奪戦からずっと忙しいよな。なんか嫌がらせみたいに仕事来るようになっただろ?何コレ?」

疲れたことを表そうとしたのか、グキグキと首を回して、手をヒラヒラ振った男に、もう一人は何か気付いたような顔をする。

「そういやお前、ゆりかごのあとに入ったんだっけか?じゃあわかんねーか」
「あ、それそれ!ゆりかごってさぁ、何?なんかヴァリアーで禁句みたいになってんじゃん。オレが入る前になんかあったのか?」
「そりゃあボンゴレに対してクーデター起こした訳だからなぁ……。そのせいでしばらく仕事干されて、一時は扱いづらいけど強い奴がヴァリアーに左遷されて……その度に島流しとか呼ばれてたな……」
「……クーデター?」
「XANXUS様がな、9代目に対してクーデター起こしたんだよ。そのせいで8年間幽閉されて、隊長は責任とって汚れ仕事全部押し付けられて、オレ達は仕事干されて毎日グータラするだけ……。今は逆にくだらねえ仕事大量に押し付けられて思うように動けなくなっちまってるし」
「そ、そうだったのか……」

衝撃の事実を今更ながら知って、さっきよりも更にスクアーロに尊敬の念を抱いた男は、ズッとコーヒーを飲み干し言う。

「オレたちもあの人の力になれるように、仕事頑張らなきゃな」
「……いや、今回のは仕事ってか個人の事情なんじゃねーか?」
「プライベート?」
「おう、オレの見立てだとな。まあ、若いうちは迷うことも多いよな。白髪になるまでストレス溜めるのはやりすぎだけどさ」
「……いやだから、生まれつきだろ、アレ。え、もしかして違うのか?」

世間話を続けながら、男達は残った仕事を順調に片していった。
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