八月二日火曜日
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冷房の効いた図書館は静かだった。窓の外では蝉がうるさいほど鳴いているのに、分厚いガラス一枚で音が切り取られている。まるで別の世界にいるみたいだと香織は思った。
長机の上には夏休みの宿題が広げられている。算数ドリルはまだ半分も終わっていない。開いたページを眺めても数字はちっとも頭に入らず、鉛筆だけが指先でくるくると回っていた。
図書館へ来れば宿題が進むと思っていた。けれど、やっぱり夏休みは勉強なんかより遊びたい。外から聞こえる蝉の声を聞いていると、なおさらだった。
「ねえ、知ってる?」
隣に座る由香が、机に身を乗り出すようにして声を潜めた。
「学校の三階の教室に出るんだって」
香織は回していた鉛筆を止める。
「なにが?」
「幽霊」
その一言だけで、さっきまで眠たかった頭が一気に目を覚ました。
「ほんとに!? どんな幽霊!?」
思わず大きな声を出してしまう。
「やだ、声大きいって」
由香は慌てて人差し指を唇へ当てた。
静かな館内に、司書が本を棚へ戻す音だけが響いている。
香織も慌てて口を押さえ、小さく「ごめん」と笑った。
「夜になるとね、三階の廊下を歩いてるんだって」
「それで?」
「先生が見に行くと、もういないの」
由香はさらに声を落とした。
「あとね、白い髪なんだって」
その一言に、香織は一瞬だけ言葉を止めた。
「それだけ……?」
「それだけじゃないよ」
由香は慌てたように付け加える。
「親戚のおじさんがさ、小さいころに聞いた話なんだって。その頃からもういたらしいよ」
香織はごくりと喉を鳴らした。ただの噂のはずなのに、急に学校が違って見える。毎日通っている廊下や階段が、知らない場所みたいに思えてくる。そのときだった。
「面白そーな話してんじゃん」
突然、横から声が飛んだ。振り向くと、ひとつ向こうの机から夏樹が顔を出している。いつから聞いていたのか、にやにや笑っていた。
「今日の夜、学校探検行こうぜ」
長机の上には夏休みの宿題が広げられている。算数ドリルはまだ半分も終わっていない。開いたページを眺めても数字はちっとも頭に入らず、鉛筆だけが指先でくるくると回っていた。
図書館へ来れば宿題が進むと思っていた。けれど、やっぱり夏休みは勉強なんかより遊びたい。外から聞こえる蝉の声を聞いていると、なおさらだった。
「ねえ、知ってる?」
隣に座る由香が、机に身を乗り出すようにして声を潜めた。
「学校の三階の教室に出るんだって」
香織は回していた鉛筆を止める。
「なにが?」
「幽霊」
その一言だけで、さっきまで眠たかった頭が一気に目を覚ました。
「ほんとに!? どんな幽霊!?」
思わず大きな声を出してしまう。
「やだ、声大きいって」
由香は慌てて人差し指を唇へ当てた。
静かな館内に、司書が本を棚へ戻す音だけが響いている。
香織も慌てて口を押さえ、小さく「ごめん」と笑った。
「夜になるとね、三階の廊下を歩いてるんだって」
「それで?」
「先生が見に行くと、もういないの」
由香はさらに声を落とした。
「あとね、白い髪なんだって」
その一言に、香織は一瞬だけ言葉を止めた。
「それだけ……?」
「それだけじゃないよ」
由香は慌てたように付け加える。
「親戚のおじさんがさ、小さいころに聞いた話なんだって。その頃からもういたらしいよ」
香織はごくりと喉を鳴らした。ただの噂のはずなのに、急に学校が違って見える。毎日通っている廊下や階段が、知らない場所みたいに思えてくる。そのときだった。
「面白そーな話してんじゃん」
突然、横から声が飛んだ。振り向くと、ひとつ向こうの机から夏樹が顔を出している。いつから聞いていたのか、にやにや笑っていた。
「今日の夜、学校探検行こうぜ」
