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蝉の声が降っていた。頭上の木々から途切れることなく降り注ぐ鳴き声は、まるで空そのものが震えているみたいだった。
真夏の日差しは容赦なく、照り返すアスファルトの熱に今にも家に逃げ帰りたくなる。ガードレールなど触れば火傷しそうなほど熱い。
健太は額を流れた汗を腕で拭った。首から提げた虫かごが歩くたびにかたかた鳴る。肩には虫網。反対側には冷たい麦茶の入った水筒。右手には虫網。
じりじりと刺す日差しはキャップを被っていなければとうに熱射病になっていただろう。だが暑い。とにかく暑い。
それでも健太の足取りは軽かった。健太は今、祖父から教わったクワガタの採れる山へ向かう途中なのだ。
祖父の家へ来て早一週間が経とうとしている。母親の小言から解放され、健太は晴れやかな気持ちで毎日を過ごしていた。
小学二年生になったことで、去年より宿題が多くなったこと以外は。
毎年お盆になると家族で祖父の家に来ていたが、今年は健太一人で先に帰省していた。一人で電車に乗ったことも、好きな時間まで虫捕りができることも、なんだか少しだけ大人になった気分だった。
そして昨日、祖父は健太を近所の山へ連れて行ってくれた。木々の間を抜けた先にある、昔から祖父だけが知っているらしい秘密の場所だった。
「ここはな、昔、ある人から教えてもらったんだ」
そう言って祖父は、一本の木の根元へしゃがみ込んだ。そして持ってきた小さな瓶から、甘い匂いのするはちみつを取り出す。祖父は昔話をしながら、木の幹へ少しずつ塗っていった。
「こうして一晩置いておくと、匂いにつられてクワガタが寄ってくる。明日の夜、一緒に見に来よう」
健太はその言葉を聞いて、胸を躍らせた。夜の山。懐中電灯を持って、祖父と一緒に大きなクワガタを探す。考えるだけで眠れなくなりそうだった。
――待ちきれない。
本当なら夜まで我慢するはずだった。祖父と一緒に行く約束もしていた。けれど朝起きてから、あの木に本当にクワガタが来ているのか気になって仕方がなかった。
「ちょっと見るだけなら……」
そう自分に言い訳をして、健太は虫網と虫かごを持って家を飛び出した。そして今、やっとのことで公園まで歩いてきた。ここまでくれば、山まではあと少しだった。
真夏の日差しは容赦なく、照り返すアスファルトの熱に今にも家に逃げ帰りたくなる。ガードレールなど触れば火傷しそうなほど熱い。
健太は額を流れた汗を腕で拭った。首から提げた虫かごが歩くたびにかたかた鳴る。肩には虫網。反対側には冷たい麦茶の入った水筒。右手には虫網。
じりじりと刺す日差しはキャップを被っていなければとうに熱射病になっていただろう。だが暑い。とにかく暑い。
それでも健太の足取りは軽かった。健太は今、祖父から教わったクワガタの採れる山へ向かう途中なのだ。
祖父の家へ来て早一週間が経とうとしている。母親の小言から解放され、健太は晴れやかな気持ちで毎日を過ごしていた。
小学二年生になったことで、去年より宿題が多くなったこと以外は。
毎年お盆になると家族で祖父の家に来ていたが、今年は健太一人で先に帰省していた。一人で電車に乗ったことも、好きな時間まで虫捕りができることも、なんだか少しだけ大人になった気分だった。
そして昨日、祖父は健太を近所の山へ連れて行ってくれた。木々の間を抜けた先にある、昔から祖父だけが知っているらしい秘密の場所だった。
「ここはな、昔、ある人から教えてもらったんだ」
そう言って祖父は、一本の木の根元へしゃがみ込んだ。そして持ってきた小さな瓶から、甘い匂いのするはちみつを取り出す。祖父は昔話をしながら、木の幹へ少しずつ塗っていった。
「こうして一晩置いておくと、匂いにつられてクワガタが寄ってくる。明日の夜、一緒に見に来よう」
健太はその言葉を聞いて、胸を躍らせた。夜の山。懐中電灯を持って、祖父と一緒に大きなクワガタを探す。考えるだけで眠れなくなりそうだった。
――待ちきれない。
本当なら夜まで我慢するはずだった。祖父と一緒に行く約束もしていた。けれど朝起きてから、あの木に本当にクワガタが来ているのか気になって仕方がなかった。
「ちょっと見るだけなら……」
そう自分に言い訳をして、健太は虫網と虫かごを持って家を飛び出した。そして今、やっとのことで公園まで歩いてきた。ここまでくれば、山まではあと少しだった。
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