七夕
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急須へ茶葉を入れ、ゆっくりと湯を注ぐ。ふわりと立ち上る湯気を眺めながら、うららは静かに微笑む。
――しげるくんはどんなお願いを書くのかしら。大金持ちになりたい、とか?総理大臣になりたい、とか?
すみれは昔の同級生の男の子の願い事を思い浮かべた。
……いや、しげるくんがそんな願い書くイメージわかないわ……
やっぱり何も思いつかないと言うのだろうか。
そんなことを考えながら、二つの湯呑みを手に庭へ戻る。すると、しげるは短冊を両手で持ち眺めていた。
「書けた?」
声をかけると、しげるは少しだけ顔を上げた。
「はい」
差し出された短冊を、すみれは受け取る。そこには、少し癖のある文字で、『オムライスが食べたい』と書かれていた。
一瞬、意味を理解するのに時間がかかった。それから、すみれの口元が緩む。
「ふふっ」
「……変ですか?」
しげるは少しだけ不満そうに眉を寄せる。けれど、その表情の奥には、どこか照れくさそうな色が浮かんでいた。
「ううん。変じゃないわ」
すみれは首を振る。
「もっと違うお願いを書くのかと思ったんだもの」
「お願いなんて、思いつかないです」
その言葉に、すみれは少し寂しく思う。自分がしげるくらいの頃は、欲しいものも将来なりたいものもたくさんあった。それなのにしげるは欲しいものもない、お願いなんてないと言う。
今までそういうことを考える環境になかったのか、はたまたしげるの本質なのかはわからない。でもここにいる間くらいは他の子どものように過ごしてほしい、すみれは心の中でそう思った。
「じゃあ短冊も飾りましょう」
すみれは気を取りなおすように、1度手を叩いた。
二人で短冊を笹へ結びながら、そっと指先で紙を撫でる。
「今日の夕飯はオムライスにしましょうか」
しげるが驚いたように顔を上げた。
「……いいの?」
「願い事なんでしょう?」
すみれの言葉に、しげるは少しだけ目を細めた。
「……うん」
小さな返事だった。けれど、その声はどこか嬉しそうだった。
庭先に夏の風が吹き抜ける。笹の葉が揺れ、その間で二枚の短冊が寄り添うように揺れていた。
――しげるくんはどんなお願いを書くのかしら。大金持ちになりたい、とか?総理大臣になりたい、とか?
すみれは昔の同級生の男の子の願い事を思い浮かべた。
……いや、しげるくんがそんな願い書くイメージわかないわ……
やっぱり何も思いつかないと言うのだろうか。
そんなことを考えながら、二つの湯呑みを手に庭へ戻る。すると、しげるは短冊を両手で持ち眺めていた。
「書けた?」
声をかけると、しげるは少しだけ顔を上げた。
「はい」
差し出された短冊を、すみれは受け取る。そこには、少し癖のある文字で、『オムライスが食べたい』と書かれていた。
一瞬、意味を理解するのに時間がかかった。それから、すみれの口元が緩む。
「ふふっ」
「……変ですか?」
しげるは少しだけ不満そうに眉を寄せる。けれど、その表情の奥には、どこか照れくさそうな色が浮かんでいた。
「ううん。変じゃないわ」
すみれは首を振る。
「もっと違うお願いを書くのかと思ったんだもの」
「お願いなんて、思いつかないです」
その言葉に、すみれは少し寂しく思う。自分がしげるくらいの頃は、欲しいものも将来なりたいものもたくさんあった。それなのにしげるは欲しいものもない、お願いなんてないと言う。
今までそういうことを考える環境になかったのか、はたまたしげるの本質なのかはわからない。でもここにいる間くらいは他の子どものように過ごしてほしい、すみれは心の中でそう思った。
「じゃあ短冊も飾りましょう」
すみれは気を取りなおすように、1度手を叩いた。
二人で短冊を笹へ結びながら、そっと指先で紙を撫でる。
「今日の夕飯はオムライスにしましょうか」
しげるが驚いたように顔を上げた。
「……いいの?」
「願い事なんでしょう?」
すみれの言葉に、しげるは少しだけ目を細めた。
「……うん」
小さな返事だった。けれど、その声はどこか嬉しそうだった。
庭先に夏の風が吹き抜ける。笹の葉が揺れ、その間で二枚の短冊が寄り添うように揺れていた。
