雪かき
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雪を掻く音が、しばらく続いてから、ふと途切れた。
すみれが火鉢に炭をくべ終えた頃、戸口のほうで雪を払う音がして、しげるが戻ってきた。
「雪かきご苦労様。 寒かったでしょう」
「これくらいどうってことないです」
少し誇らしげに肩をすくめる。そして半纏を羽織った腕をパタパタとさせている。腕を回りたり開いたりと半纏の可動域を確かめているようだ。
「これ、いいですね」
何気ない調子だが、言葉の端にほんの少し弾みがある。
「動きやすいし、あったかい」
すみれは手を止めて、彼を見る。半纏はしげるには少し大きく、袖が長い。そのせいで、どこか子供っぽさが残るはずなのに、不思議と様になっていた。
「気に入ったなら、次のお休みにでも買いに行く?」
「いいんですか」
声が少しだけ高くなる。
「ええ。ちょうど町に呉服屋もあったでしょう」
「じゃあ……行きたい」
しげるは、今度は首元に手をやって、マフラーを軽く引き寄せる。
「これも、思ったよりあったかいんですね」
「あら、知らなかったの?」
「うん。首が冷えないと、全然違う」
そう言って、少し考えるような顔をする。
「今まで、あんまり気にしたことなかった」
すみれは、その言葉を聞きながら、何でもないふうを装って頷いた。けれど胸の奥で、小さな思いつきが、静かに芽を出す。
暦を数えなくても、冬はまだ長い。町に灯りが増え、赤と緑の飾りが出る季節も、そう遠くない。毛糸箱のことを思い浮かべる。白と灰色のまだらな去年の余り糸。シンプルだがしげるにはきっと似合う。
マフラーくらいならすぐ編める、はず。
誰にも言わずに、こっそりと。そんなふうに考える自分に気づいて、すみれは視線を落とした。
「どうしたんですか」
しげるが不思議そうに覗き込む。
「なんでもないわ」
そう答えながら、すみれは火鉢の上で、そっと指先を温めた。雪の朝に残った、あの熱とは違う、静かで、長く続きそうな温もりだった。
すみれが火鉢に炭をくべ終えた頃、戸口のほうで雪を払う音がして、しげるが戻ってきた。
「雪かきご苦労様。 寒かったでしょう」
「これくらいどうってことないです」
少し誇らしげに肩をすくめる。そして半纏を羽織った腕をパタパタとさせている。腕を回りたり開いたりと半纏の可動域を確かめているようだ。
「これ、いいですね」
何気ない調子だが、言葉の端にほんの少し弾みがある。
「動きやすいし、あったかい」
すみれは手を止めて、彼を見る。半纏はしげるには少し大きく、袖が長い。そのせいで、どこか子供っぽさが残るはずなのに、不思議と様になっていた。
「気に入ったなら、次のお休みにでも買いに行く?」
「いいんですか」
声が少しだけ高くなる。
「ええ。ちょうど町に呉服屋もあったでしょう」
「じゃあ……行きたい」
しげるは、今度は首元に手をやって、マフラーを軽く引き寄せる。
「これも、思ったよりあったかいんですね」
「あら、知らなかったの?」
「うん。首が冷えないと、全然違う」
そう言って、少し考えるような顔をする。
「今まで、あんまり気にしたことなかった」
すみれは、その言葉を聞きながら、何でもないふうを装って頷いた。けれど胸の奥で、小さな思いつきが、静かに芽を出す。
暦を数えなくても、冬はまだ長い。町に灯りが増え、赤と緑の飾りが出る季節も、そう遠くない。毛糸箱のことを思い浮かべる。白と灰色のまだらな去年の余り糸。シンプルだがしげるにはきっと似合う。
マフラーくらいならすぐ編める、はず。
誰にも言わずに、こっそりと。そんなふうに考える自分に気づいて、すみれは視線を落とした。
「どうしたんですか」
しげるが不思議そうに覗き込む。
「なんでもないわ」
そう答えながら、すみれは火鉢の上で、そっと指先を温めた。雪の朝に残った、あの熱とは違う、静かで、長く続きそうな温もりだった。
