見上げた空は何色か
名前
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おおお、と男達の歓声が上がる。
ここは地下深くにある研究所。ギアス嚮団の本拠地だ。男達の目の前には、ぐったりとして動かない二人の幼い子供がいた。
「成功かい?」
幼いながらも存在感のある声が響く。ある者が、嚮主様…と呼んだ所で子供の一人が薄っすらと瞼を開けた。
「やはり君達は別格だね。嬉しいよ、ロロ、サラ」
「しかし、成功とはいえその力が発揮されるのは一度きりでしょうな」
嬉しそうに子供達の頭を撫でるV.V.に、研究者の一人が声をかける。
「ただの人の子が不老不死だなんて、理を外れ過ぎている。だからいいんだよ。まあ、死んだ者が生き返る時点で理を外れているか。あはは」
V.V.は乾いた笑いをあげると、くるりと踵を返す。その足は、自身の弟であるシャルル・ジ・ブリタニアの元へと向けた。
「さて、これで条件はクリアされた。あとはシャルル次第かな」
まだ十にも満たない彼らには、弟が支配する国の駒になってもらう。先の未来を考えてV.V.は高く笑った。
ーー
「…名を聞こうか」
腹に響くような重厚感のある声。その体の大きさからも頷けるが、彼の存在感は王たる所以だとシャルル皇帝の後ろに控えたビスマルクは思案する。果たして皇帝の前に跪いている幼い子供達は、臆することなく話せるだろうか。大の大人でさえ、この声の前には体が震えるのだ。
「サラ・ユズリハと申します」
「ロロ・ユズリハと申します」
声変わり前の二人は性別の違いはあれど、声質は全く同じであった。そして、先日皇帝に噛みついたルルーシュ皇子と同じく、その瞳の力は強く皇帝を前にしても揺らぐことはなかった。
「兄さんの推薦だそうですね…?」
「その通りだよ、シャルル」
皇帝の隣に立つ、ギアス嚮団の嚮主。高い所から子供達を見下ろし、口元には笑みを浮かべている。
「彼らはあの集団の中でもトップクラスで優秀だからね。君の役に立つと思って連れてきたんだ」
駒は多い方がいいだろう?と黒い笑みを浮かべるV.V.に、そうですね、とシャルルも笑みで答える。
「ビスマルク、彼等にあれを」
「はっ」
ビスマルクの手に小ぶりなマントらしきもの。色は烏羽色。小さなマントを覆うように、ブリタニア帝国の紋章が入っている。
「其方らにはナイトオブツインズの地位を与える。我が騎士ラウンズとは異なるが、我が国の為その命果てるまで忠誠を誓うのだ」
「光栄至極に存じます」
恭しくマントを受け取り、小さな背中はこうべを垂れる。それを満足気に見るのは、この国の皇帝と嚮主。まだ幼いながらも強力な力を持った二人は、強大な国の駒に成り上がったのだ。
「お前達に最初の仕事をやろう。日本へ送った人質、ルルーシュとナナリー。彼奴らを監視するのだ」
その命令に疑問を感じたのはビスマルクだけではなかったようで。V.V.も眉間に皺を寄せていた。しかし二人とも口にはしない。
「イエス、ユアマジェスティ」
子供特有の声で答えると二人は立ち上がり、受け取ったマントをばさりと羽織る。烏羽色のマントは、儚い印象だった二人を悪魔のように変えた。全く同じ顔の二人は、全く同じ角度で頭を下げると全く同じ歩幅で謁見の間を後にしたのだった。