見上げた空は何色か
名前
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「…twins、わたしの願いをきいてくれますか?」
少女は大きな車椅子に乗り、目の前で跪きこうべを垂れている人物に声をかける。その声は、やや掠れ今から紡ごうとしている言葉を躊躇うようだ。
「わたしは恐い。恐いのです。わたしの周りの方々が変わって行ってしまうのが恐いの。何より…あんなに優しかったお兄さまが、変わってしまったのが何より恐いのです。」
跪いた人物は黙って少女の言葉を聞いている。
「お兄さまは昔から頭の良い方です。そしてとても優しい。わたしはあの時のお兄さまを信じたいのです。あんな…人々を蔑み、非道な行いをする…お兄さまはきっと何かを隠している。そして限られた人たちと共に何かを成そうとしている。」
少女は震える声を叱咤し、気丈にも姿勢を伸ばし菫色の瞳を真っ直ぐに言葉を紡ぐ。
「わたしの愛しい方々を守ってくれますか。その優しい心を必死に隠そうとする愛しい方々を。」
跪いたままの人物は、徐に顔をあげ少女の真っ直ぐな瞳を正面から受け止めた。
「…我らは貴女の騎士です。たとえ公式の場で決められたものでは無いにしても、我らは貴女の願いを叶えたい。」
そう言葉を紡いだのは二人の人物。まるで合わせ鏡のように髪の色も瞳の色も同じである二人は、皇帝直属の騎士である証拠に神聖ブリタニア帝国の紋章が入ったマントを羽織っている。烏羽色のマントに金の紋章。唯一違うのは髪の長さと性別くらいだ。片方は前髪を短く切り、後ろの髪も頸が見えるくらい短い。男の子らしい髪型だが、その表情は硬い。もう片方は男の子と同じく前髪を短く切っているが、後ろの髪は長く伸ばし元々の癖っ毛もあるのか緩くウェーブがかけられている。その髪をふんわりと緩くローポニーにして、口元には微笑を浮かべている。
「…わたしはお兄さまが成そうとしている事を邪魔しようとしています。それでも、そんな事をしてでも止めたいのです。流れた血は多く、殺めた人の数は数え切れない。それでも、わたしは愛しい方々と明日を迎えたいのです。……わたしの元へ来なさい、twins。わたしと運命を共にしてもらいます。」
「……Yes,your highness.」
二人の人物は新たな主人にこうべを垂れる。そして強大な事を成そうとしている人物達を止める為、主人の願いを叶える為動き出した。
ーーーー
多くの民衆が見守る中、パレードが始まった。口元に緩め、穏やかな目で前方を見据えるのはアメジストの瞳。神聖ブリタニア帝国第九十九代皇帝のルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、この日ゼロ・レクイエムを決行した。彼の眼下には、数ヶ月前に捕らえた反逆者達が拘束され民衆に晒されていた。皆一様に悔しそうな表情をしている。そして、皇帝の直ぐ下には赤い簡素なドレスを着た実の妹の姿。彼女は俯いており、その表情を見る事は出来ない。
と、行進を指揮していたジェレミア・ゴットバルトが停止を呼びかけた。何故なら、行列の先に黒の仮面を被った一人の男が現れたからだ。
民衆はどよめき、それを不思議に思った反逆者達が顔を上げる。その中で最も驚いた顔をしたのは皇帝の椅子に鎮座していた、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアその人だ。それもそのはず、現れた男はゼロ。黒の騎士団のトップであり、かつてルルーシュ本人がゼロとしてブリタニアに反逆していたのだから。
ゼロは生身の身体で走り出し、サザーランドの銃撃を掻い潜る。そして、ジェレミアを踏み台に大きく跳躍するとナナリーの前に、ルルーシュ皇帝の前に降り立った。
皇帝の拳銃を弾き飛ばし、抜いたのはスラリと長い一本の剣。それを皇帝の心臓目掛けて構えた。驚愕に目を見開くナナリーと反逆者達。制止の声をかける間も無く、その切っ先が真っ白な服に刺さり貫こうとする。
その瞬間、世界が時を止めた。
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