翡翠色のきみ
名前
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「やあ、また会えたね」
昨日、ルルーシュが示した場所へ向かえば本当に例の猫がいた。朝日を浴びて真っ白な毛並みがキラキラと輝く様に、スザクは目を細めた。
(……この子が猫じゃないって?どこから見ても猫そのものじゃないか)
ふわふわの毛並み、小さな耳、まあるい瞳に四本足。この生き物が猫じゃないなら、なんなんだ。
(この人……この間の…)
サラは数メートル先に立つ人をじいと見つめた。恐らく軍に在籍している人。両手にある剣だこを前回会った時に見つけていたのだ。しかし、軍人としか分かっておらず自分に近しい人の名前しか覚えていないサラにとって、目の前に立つ人は、顔見知り程度であった。
「にゃあ」
自分では、おはようと言ったつもり。しかし、人間以外の生物になった時のサラ言葉を理解できるのは、今のところユーフェミアのみであった。だから、目の前に立つ青年が理解出来なくても別段不思議ではない。
「うん、おはよう」
返された返事に驚くサラ。
え……言葉、わかるの?と思い、その旨を伝える。猫語で。
「にゃん。にゃああ?」
スザクは頭の中でルルーシュから言われた言葉を反芻していた。スザクが何も反応しないのを見て、サラは理解する。自分の言葉を理解出来るのはユフィだけなのだと。
聴覚力を調べる為に少し遠くまで来てみたのだが、思わぬ収穫に喜ぶ。
(だけど、どうしてこの人がここに?)
数日前に、ほんの数分会ったくらいだ。それに今いる場所は、最初に会った公園から大分離れている。……偶然?新手のストーカー?
お互い考え込んでいると、ユーフェミアが吹くあの音が微かに聞こえた。その音を目印にサラは歩き出すと、スザクはまた耳を抑えていた。
(!……すごい…本当に聞こえてるんだ)
常人には聞こえない音。本来であれば、動物用であり人間は感知することも出来ない。
この人は誰なんだろう?知りたいという純粋な興味がわいてくる。どうにか知る術はないだろうか。
「家に帰るのかい?僕も帰ろうかと思ってたから、途中まで一緒にどうかな?」
まさか相手から誘われるとは思っておらずサラは、にゃあと返事をする。スザクは、よしと頷くとサラが歩き出した方向へ一緒に歩き出した。
隣を早足で歩きながら、サラはそっと観察する。均整のとれた筋肉に長い手足。諜報部とか機密情報局などでは無いようだ。そういえば最近活躍しているKMFのデヴァイザーがいると、ビスマルクが言っていたような…うーん、思い出せない。身体能力も高そうな青年は、自分と同じくらいの年齢だろうか。
そこまで考えて、ふと脚を止める。数メートル先に幼い頃から仲が良い、ふわふわの髪を持つ少女がメイドの咲世子と共に公園を散歩していたからだ。
「ナナリー?」
この名前を、知っていたことにはサラ驚き、呼ばれたナナリーもスザクを目に止めた途端に嬉しそうに笑った事にまた驚く。
「スザクさん、おはようございます」
朝の爽やかな空気にピッタリな明るい声。
薄紫色の瞳を持つ少女は、正体不明の青年を『スザク』と呼んだ。
「あら?可愛らしい猫ちゃんも一緒なんですね」
ナナリーの視線が、スザクの少し後ろに座る真っ白な猫に注がれる。そして、その猫の外見は自分の友人にそっくりであった。その事にナナリーは首を傾げる。
「ナナリー?どうしたの?」
猫を見つめたまま固まってしまったナナリーに、スザクは心配になり声をかける。ナナリーは暫く黙り込んでいたが、すりと近寄ってきたサラを抱き上げその耳に光る翡翠のピアスをまじまじと見て、やっぱり…と呟いた。
「……もしかして…サラ、なのですか?」
「にゃあん」
猫から返事があった事に三人は、驚きの顔を隠せない。
「この子を知ってるの?」
「……サラは、わたしの友人です」
スザクが問い質せばナナリーは、少し黙った後に関係を教えてくれた。
「この子がつけているピアスは、わたしがサラに贈ったものなんです。世界に一つだけのオリジナルで…」
そこまで話して遠くから近づいてきた背の高い男に咲世子がいち早く気づき、サッとナナリーの前に出る。スザクも気づいたがその人物を確認した途端、反射的に敬礼した。そして咲世子も誰だかわかったようでナナリーの前から、すっと体を退かした。
その人物は、緑色のマントを羽織った金髪の青年であった。
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