翡翠色のきみ
名前
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その日、枢木スザクは一人で久しぶりの休日を過ごしていた。反帝国グループも最近は大人しく、約一ヶ月ぶりの一日オフだった。
人影がまばらな早朝、スザクは日課であるジョギングをしていた。いくら休日とはいえ、染み付いた日課は抜けず今日もいつもと同じ時間に起き、いつもと同じコースを走る。その風景にいつもと違う色が混ざった。その事に思わずスザクは規則正しく動かしていた足を止める。彼の視線の先には一匹の猫がいた。この辺りでは見かけない真っ白な猫だ。
動物が好きで、特に猫が好きなスザクは無意識に真っ白な猫に近づく。距離が短くになるにつれ、その子がふわふわの毛並みである事、耳に小さな翡翠のピアスをしている事が分かる。どこかの飼い猫だろうか。
スザクが近づいてくるのが分かったようで、真っ白な猫はスザクの目を見る。その色にスザクの足が止まった。
「うわ………」
透き通る海を思わせる淡い水色。その色は真っ白な毛並みと相まって、とても神秘的な存在に思えた。それ以上近づくことも出来ずに固まっていたら、猫は不思議そうに小首を傾げテクテクと自らスザクに近寄り、すりと足にすり寄った。
「……君、すごい美人だね」
おそらく猫に対していう台詞ではないような気もするが、言われた猫は丸い目を細めて『にゃあ』と笑った……気がした。スザクは膝を折り、ふわふわな毛並みを楽しむ。軍人らしいややゴツゴツした手だが、猫も気持ち良さそうに撫でられている。
普段、噛まれる事が多いスザクはこの真っ白な猫が一度も自分の指や手を噛まない事に驚きを隠せない。それどころか自らすり寄って、大人しく撫でられ続けている。
(飼い猫だから……じゃないよな。不思議な子だなあ)
ふと、聞き慣れない音がした。
それは耳鳴りにも似た嫌な音。頭の中にキーンとした音が響き、スザクは思わず頭を抑える。
(?!なんだ?)
それまで大人しかった猫は、ふいとスザクとは真逆の方向を向き、一度尻尾を揺らしたかと思うとテクテクと歩き出した。そして、一度スザクを振り返ると瞳を合わせ『にゃあ』と鳴いた。それは「またね」と言っているようにも見え、スザクは遠くなる猫を目で追い続けていた。
いつの間にか耳鳴りは止んでいた。
かわりにスザクの心臓は煩いほど鼓動を感じていた。
この感覚は覚えがある。覚えはあるが、まさかとも思う。しかし、透き通る海のような瞳とふわふわな毛並みを思い出すだけで、胸が苦しい。今すぐにでも会いたいと思ってしまう。
それは、いわゆる一目惚れだった。
(……猫相手に?……あり得ないだろ…)
人影がまばらな早朝、スザクは日課であるジョギングをしていた。いくら休日とはいえ、染み付いた日課は抜けず今日もいつもと同じ時間に起き、いつもと同じコースを走る。その風景にいつもと違う色が混ざった。その事に思わずスザクは規則正しく動かしていた足を止める。彼の視線の先には一匹の猫がいた。この辺りでは見かけない真っ白な猫だ。
動物が好きで、特に猫が好きなスザクは無意識に真っ白な猫に近づく。距離が短くになるにつれ、その子がふわふわの毛並みである事、耳に小さな翡翠のピアスをしている事が分かる。どこかの飼い猫だろうか。
スザクが近づいてくるのが分かったようで、真っ白な猫はスザクの目を見る。その色にスザクの足が止まった。
「うわ………」
透き通る海を思わせる淡い水色。その色は真っ白な毛並みと相まって、とても神秘的な存在に思えた。それ以上近づくことも出来ずに固まっていたら、猫は不思議そうに小首を傾げテクテクと自らスザクに近寄り、すりと足にすり寄った。
「……君、すごい美人だね」
おそらく猫に対していう台詞ではないような気もするが、言われた猫は丸い目を細めて『にゃあ』と笑った……気がした。スザクは膝を折り、ふわふわな毛並みを楽しむ。軍人らしいややゴツゴツした手だが、猫も気持ち良さそうに撫でられている。
普段、噛まれる事が多いスザクはこの真っ白な猫が一度も自分の指や手を噛まない事に驚きを隠せない。それどころか自らすり寄って、大人しく撫でられ続けている。
(飼い猫だから……じゃないよな。不思議な子だなあ)
ふと、聞き慣れない音がした。
それは耳鳴りにも似た嫌な音。頭の中にキーンとした音が響き、スザクは思わず頭を抑える。
(?!なんだ?)
それまで大人しかった猫は、ふいとスザクとは真逆の方向を向き、一度尻尾を揺らしたかと思うとテクテクと歩き出した。そして、一度スザクを振り返ると瞳を合わせ『にゃあ』と鳴いた。それは「またね」と言っているようにも見え、スザクは遠くなる猫を目で追い続けていた。
いつの間にか耳鳴りは止んでいた。
かわりにスザクの心臓は煩いほど鼓動を感じていた。
この感覚は覚えがある。覚えはあるが、まさかとも思う。しかし、透き通る海のような瞳とふわふわな毛並みを思い出すだけで、胸が苦しい。今すぐにでも会いたいと思ってしまう。
それは、いわゆる一目惚れだった。
(……猫相手に?……あり得ないだろ…)
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