幸せを心よりお祈りしています・後編
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日が落ちるのが、早くなったなと感じるようになった 今日この頃
10月27日のデート
大事な日で誕生日で…。
私は津軽さんに 特別な女の子 にしてもらった
それを話してくれたことは、私に対して向き合う 一つの誠実さだった
その気持ちが伝わったから、津軽さんを大切にしようって気持ちは もっと大きくなったし、今まで不安に思ってたことが全部吹き飛んでいったのだ
" 恋人 " という肩書きはない
キスもしないし、身体の関係なんてもってのほか
それでも、セフレ同然だった あの頃より、私たちの心は ずっと近かかった
ただただ、この人の幸せを祈り、出来れば私が幸せにしたい
あの日から動物園デートやショッピングモール、レストランでのデートをし、恋人のようで恋人でない…不思議だけど 私たちらしい関係に幸せを感じていた
「コタツで食べるアイスって最高だよね」
「バニラアイスに醤油ってみたらし味ですか?」
「一口あげる、あーん」
「いえっ 私は塩分過多になるので…」
「美味しいのに…」
三邑会の捜査が本格的になってきて捜査は忙しいけど、班で年末年始は順番に休みを取っていた
今日は私と津軽さんの番。百瀬さんにはガルガルと噛みつかれそうだったけど、代わりに得たのは津軽さんとのデート。
昼間は神社でお参りや屋台を見て回ったり
(好きな人と、新年早々に二人きりで過ごせるんだからラッキーだよね)
屋台を見て回った後は 私の部屋のコタツに入りたいという津軽さんの要望で、おうちデートとなった
「今度は鍋したいよね~」
「いいですね。その時は材料用意します。今日は何も無くてデリバリーになっちゃったので…」
「約束しよ」
「はい」
ピンっと私の前に出された小指に、小指を絡める
やっぱり女の扱いが うまいなーってドキドキしてしまう。前の私なら過去にも女の子にしたんでしょって妬いてたけど今は思わなかった
この約束は叶うことは無くなった
だって私は、この人に……
ーーーーーー ー ー
わたしを庇った津軽さんが死にそうになった
それだけでも、ズタズタなのに水族館デートの後、私は──
「好きになってごめん。俺は優衣を選べない」
夕焼けの冬の海で津軽さんにフラれた。
あれから数日。
仕事に集中していれば、まだ頑張れる
けれども…
仕事が終わると 我慢のタガが外れてしまい、胸に空いた穴がスカスカして気分はズシンと重くなる
こうして一人で歩く帰り道、彼に手を繋がれながら帰った事を思い出しては、またセンチメンタルな弱い自分が顔を出す
「ふう…」
夜空をチラッと見上げても月は見えなかった
いつか津軽さんが言ってくれた天体望遠鏡で月を見るお誘いは叶うこと無く終わったんだな
「………。」
ブルッ
LINEの通知を見れば、
(津軽さん…)
業務連絡が書かれていて、他にも
『寒いからマフラーや手袋して通勤するんだよ。おやすみ』
優しさは時に毒だ。
足に根が生えたように動けなくなり
(さみしいよ…)
どこか遠くにいる、今でも好きでたまらない彼を思いスマホを胸に抱きしめた。
最悪な出会い、抱かれた夜、津軽さんを知りたいって思った日々、加速していった恋心、一緒に食べた夕飯、お喋りしながら笑いあった日、何気なく家で過ごした日々も幸せだった
(ねえ、津軽さん…私の好きな津軽さんの屈託無い笑顔に "本当" はありましたよね?)
もう、いい加減 諦めなくてはいけないのに、また顔を見合わせて笑い合いたいのに叶わない
胸にぽかんと空いた穴に、冷たい冬の風が通り抜けて行き、熱い涙が頬を伝った
ーーーーーー ー ー
side津軽
あの夕焼けの冬の海から数日が経った
仕事を頑張る優衣は、俺からしたら健気に頑張って見える
普通に振る舞っているが、少し笑顔が減っていて、胸が苦しかったが…
昼間、一柳昴に食事に誘われOKしていたのを見ると案外、前に進もうとしているのかもな
誠二くんも優衣を気にしてるし!
一番の要注意人物は…
(ドリトル·ハジメ!あいつ まだ優衣にちょっかい出してないだろうな!)
何度も優衣に連絡してきてた事を思い出して心の中で文句を垂らす
(優衣はっ、優衣はなぁ 俺の……。俺の物じゃないんだった…)
前に進めないのは…一生優衣を好きでいる俺だけなのか
(あっ…)
あとを付けるつもりはなかったが、同じ電車だったらしく、帰り道で彼女の小さな背中が見えた
今朝は寒そうに始業ギリギリに出勤してきていた
ほんとなら、寒そうに歩くその手を握って暖めてあげたい
(って…そんなことできる間柄じゃなくなったんだし…)
気を持たせるなんて、彼女には余計に辛いだろう
それでも、何もせずにはいられなかった
急ぎじゃない業務連絡を優衣に送り、ついでにメッセージも送る
(これくないなら、いいよな)
十数メートル前を歩く優衣が立ち止まり、スマホを確認しているのが分かる
(………あれ?)
その小さな背中を猫背に丸めてスマホを抱きしめていた
(………。)
その姿はあまりにも華奢で儚くて
10秒…15秒…20秒…やっと一歩二歩と、歩きだしたと思ったら、また止まる
LINEでメッセージが届いたのは数秒後
『了解しました。連絡ありがとうございます マフラー明日はしていきます。おやすみなさい』
小さなウサギのマークを最後に添えていた
優衣の右手が目の辺りを擦る
すれ違ったカップルが優衣をチラッと見ていた
(やっぱ…前言撤回だな、前になんか進めなくて苦しんでる)
ここで、また考えてしまった
(このまま俺のこと ずっと好きでいてよ…)
こうして涙を拭い、苦しんでる彼女の後ろ姿を見ても、そんなことを思うのだから俺ってほんと性悪だわ
(…泣かせてごめん)
ーーーーーー ー ー
「おじいちゃーん お見舞いにきたよ」
翌日、ノアと銀さんのお見舞いに行き、銀さんとのことを少し違う見方で感じることができた
一緒に作ったおにぎりは優衣への土産
元気が出るように酢をたっぷり混ぜて海苔で巻こうとすれば
「…高臣、ちょっと待ちなさい」
銀さんからアドバイスをもらった
砂糖と少しの塩、おかか も入れるようにと。
こそばゆかった。
家族みたいに、おにぎりの話なんてしてさ。
(ノアのおかげだな~)
ーーーーーー ー ー
無理だった。手放せなかった。
俺が初めて好きになった女を。
釈放した茶円が優衣を襲った
歩道橋から優衣を抱いて飛び降り、モモの運転する軽トラのホロの上に落ちた
(助けられた…何度だって君を守る)
「どーしよっか」
「そんなのっ…!私だって知りませんよ!」
怒りながらもぎゅっと抱きついてくる優衣
やっぱり、この子がいい温かくて安心するお布団みたいな子
あーだこーだ言い合った後も、抱きしめあった身体を離せない
こうして また俺を受け入れる優衣に、今度こそ、ちゃんと向き合うと決意したのだった
「…運転してるの百瀬さんですか?私、生きて帰れます?」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ、守ったげる」
「いやなんか、信用できない…」
「えーなんでよ」
守るよ。班長としても、一人の男としても。
どちらかなんて選べないけど、どうしようもなく君の好きが聞きたいから
誰にも渡したくないから
「君って、変人…じゃなかった奇特な人だよね」
「はあぁ!?ど、どーゆー意味ですか!?」
百瀬「うるせー!てめえ、振り落とすぞ!」
「ひぃっ…」
「ほらね、良い子にしてないから」
「守ってくれるんですよね!?」
「なんか、めんどくさくなった~」
「なんで!」
幸せを感じても ふと、過るのは罪悪感
でもさ、隣で優衣の笑顔を見てたいのは、紛れもなく本心だった
(ほら、今だって抱きしめた身体を離せない)
ーーーーーー ー ー
side優衣
津軽さんとの初めてのキスをした
さんざん振り回されて心をぐちゃぐちゃにされて
それでもこの人がいい
私がずっと好きでいる人は、こんなにも気持ちを高揚させてくれる
恋人になれた日は、私を欲張りにしてしまった
「な、なんて言ったら…帰らないでくれますか?」
今夜は一緒にいたい
行かせたくない気持ちが先立ち、津軽さんの服の裾をちょっとだけ掴んだ
ここでバイバイするのは、あまりにも名残惜しすぎる
(あわよくば…もう一度キスしたいっ)
恥ずかしさを堪えて、もう恋人同士っていうなら、恋人だからできるワガママだ
じゃあ、黙って抱きついてきたら良いんじゃない?と言われ、腰に抱きつく
余裕綽々だなーって恨めしい気持ちもあるけど、それよりなにより今日は離れたくない
「分かった、泊まるよ」
いつもの飄々とした声で承諾してくれる
腰に抱きついたまま、コクンと頷くのが精一杯だった
(恋人になったんだ…津軽さんが…か、彼氏…!)
シングルのベッドは狭いから…からこそ、こうして密着して横になれる
軽く身体に腕を回されて 手を握られた
顔も耳も熱くて真っ赤になってることは分かる
部屋が暗くて良かったけど
「くっ、くすぐったぁ」
なぜか、耳をこちょこちょされて耳まで熱くなってることがバレてしまった
「マッサージだよ、マッサージ」
「うぅ~…」
こんなじゃれ合いも、恋人同士のイチャつきで…
こんな時間は もう来ないって思ってたのにな
今は幸せすぎて、蕩けてしまいそう
(わ、話題を変えよう)
「…津軽さんいつも何時くらいに寝てるんですか?」
いつの間にか寝落ちしてるという津軽さんも、私と同じで どうしてるかな?って考えてくれてたと知る
嬉しくて限界突破しちゃいそうな心臓
繋いだ手を握り合いながら 沈黙が二人に落ちた
(………津軽さん…)
握り合ってる手が強まったり弱まったり…
もしかして、まだ銀さんのこと…とか…色々と心配してるのかな?
くるっと後ろを向き津軽さんに向かい合う
「何か小難しいこと考えてます?」
「別に?寝ようかなって思ってただけだけど?」
「ぜんぜん眠そうじゃありませんよ」
「俺は優秀な刑事だから、簡単に顔には出さないの」
「じゃあ、私の考えてること当ててみます?絶対に分からないと思いますよ」
(キスしたい!キスして欲しい!)
念じてみて、分かるわけない、と じっと津軽さんの目を見る
降参したのか ははっと笑ってはぐらかされた
「眠れないなら夜のお散歩に行きませんか?」
少し夜風にあたって、気分転換したほうが良い気がして…
お付き合いすることで不安にさせたいわけじゃない
外に出て津軽さんの手をまた握る
「俺こんなだから、離れたくなったら言うんだよ?」
「?」
変な津軽さん。
だって、私は こんなでも、あんなでも、どんなでも津軽さんって人が好き
こうして迷ったり不安になったり、気遣ったり
どんな津軽さんだって好き
(もう、この手を離さないですから)
手を引っ張って、ぐっと背伸びをする
一瞬触れるだけたのキスを、私からした
「私が考えてたのは、これです。もう一回キスしたいなって」
私たちが恋人になるまでの出来事。
未来は何が待ってるか分からないものだ
つい、この間は泣いてたのに、今は津軽さんにキスができる
「先の先まで考えなくても、なるようになります」
未来は明るいんです!
津軽さんの手を引き歩きだした。
振り向くと、月明かりの下で穏やかな顔をした私の大好きな人
足取りは軽い
(心配しないで。私が側にいますから)
「大丈夫ですよ」
「……うん」
過去は変えられなくても、未来はいくらでも、変えられるから
なんとなくコンビニの方向へ歩いてたけど、不意に津軽さんが立ち止まった
「どうしました?」
「帰ろっか」
「あ、すみません。疲れちゃいましたよね」
慌てて引き返そうとくるりと向きを変えるが、
「…好きだよね、俺のこと?」
「す、好き、ですけど…?」
「今日から、君だけの俺になったんだよ?」
「…と、言いますと?」
「だからさぁー、お散歩もいいけど、帰ろ。もっと欲張っちゃいなよ」
「!! …帰り、ます…帰りたいです」
「いいね、かわいいお返事」
「そ、外ですよ、からかわないでください…もうっ…」
「ねえ、優衣、もっとドキドキ感じさせてよ」
「!ちょっ、ギブです…」
「あははっ 可愛いな」
イチャつきながら帰ったあとは──
恋人として初めて抱かれた
経験したことないくらいの 幸せが そこにあった
ーーーーーーー ー ー
──あれから──
「優衣、カクテル呑む?」
「いえ、流石に粗相があったらいけないので」
「緊張してるからさ、少しくらい良いんじゃないかなって」
「緊張は…しますけど頑張ります」
あれから数年たち津軽さんと婚約した。
結婚式は家族だけで行うため、今日は職場の方を招いて小さなお食事会
…のはずだったんだけど
ホテルの最上階を貸し切り、立食形式のパーティーと化している
目の前には豪華なビュッフェの数々…
相手が銀室長の息子同然の津軽さんとなれば、警視庁、警察庁の警視正も代わる代わる現れて挨拶をして緊張の連続だ
「優衣、大丈夫?」
「…はい。 まさか警視長も来て頂けるなんて」
私には警察政治ってものは分からないけど、銀室長と津軽さんの中で、この関係者向けのお食事会が、ただの " 楽しいお食事 " じゃないことは分かっている
それでも、同僚やお世話になってる先輩や、警護課の皆さんにも祝福されて本当に有難い
銀室長もずっと色んな方と話をされてる
(銀室長派が集まってるって事?それとも?)
「口ん中、乾燥してない?やっぱカクテル呑む?」
「カクテルといえば…月の兎スペシャル…あれが、きっかけでしたね」
「ん……優衣が俺をセフレにしようとした時ね」
「いや。逆ですよね?私をっ─」
「シッ、お静かに。そろそろ秀樹くんの挨拶がはじまるよ」
「…よく石神さんOKしてくれましたね」
「なーに言ってんの、親友代表の挨拶は大分前から約束してたんだよ」
「親友…」
親友はさておき
石神さんのスピーチに聞き入り、その言葉に胸が熱くなる
横の津軽さんを盗み見ると真剣な顔で聞いていて、なんだかんだと、付き合いの長い二人には、二人にしか分からない世界があると改めて気付かされる
(良かった、あの頃…諦めかけた時もあったけど、手をしっかり握って)
「優衣…」
同じことを、考えていたのか指と指を絡める
石神・「おふたりの末永い幸せを心よりお祈りしています」
10月27日のデート
大事な日で誕生日で…。
私は津軽さんに 特別な女の子 にしてもらった
それを話してくれたことは、私に対して向き合う 一つの誠実さだった
その気持ちが伝わったから、津軽さんを大切にしようって気持ちは もっと大きくなったし、今まで不安に思ってたことが全部吹き飛んでいったのだ
" 恋人 " という肩書きはない
キスもしないし、身体の関係なんてもってのほか
それでも、セフレ同然だった あの頃より、私たちの心は ずっと近かかった
ただただ、この人の幸せを祈り、出来れば私が幸せにしたい
あの日から動物園デートやショッピングモール、レストランでのデートをし、恋人のようで恋人でない…不思議だけど 私たちらしい関係に幸せを感じていた
「コタツで食べるアイスって最高だよね」
「バニラアイスに醤油ってみたらし味ですか?」
「一口あげる、あーん」
「いえっ 私は塩分過多になるので…」
「美味しいのに…」
三邑会の捜査が本格的になってきて捜査は忙しいけど、班で年末年始は順番に休みを取っていた
今日は私と津軽さんの番。百瀬さんにはガルガルと噛みつかれそうだったけど、代わりに得たのは津軽さんとのデート。
昼間は神社でお参りや屋台を見て回ったり
(好きな人と、新年早々に二人きりで過ごせるんだからラッキーだよね)
屋台を見て回った後は 私の部屋のコタツに入りたいという津軽さんの要望で、おうちデートとなった
「今度は鍋したいよね~」
「いいですね。その時は材料用意します。今日は何も無くてデリバリーになっちゃったので…」
「約束しよ」
「はい」
ピンっと私の前に出された小指に、小指を絡める
やっぱり女の扱いが うまいなーってドキドキしてしまう。前の私なら過去にも女の子にしたんでしょって妬いてたけど今は思わなかった
この約束は叶うことは無くなった
だって私は、この人に……
ーーーーーー ー ー
わたしを庇った津軽さんが死にそうになった
それだけでも、ズタズタなのに水族館デートの後、私は──
「好きになってごめん。俺は優衣を選べない」
夕焼けの冬の海で津軽さんにフラれた。
あれから数日。
仕事に集中していれば、まだ頑張れる
けれども…
仕事が終わると 我慢のタガが外れてしまい、胸に空いた穴がスカスカして気分はズシンと重くなる
こうして一人で歩く帰り道、彼に手を繋がれながら帰った事を思い出しては、またセンチメンタルな弱い自分が顔を出す
「ふう…」
夜空をチラッと見上げても月は見えなかった
いつか津軽さんが言ってくれた天体望遠鏡で月を見るお誘いは叶うこと無く終わったんだな
「………。」
ブルッ
LINEの通知を見れば、
(津軽さん…)
業務連絡が書かれていて、他にも
『寒いからマフラーや手袋して通勤するんだよ。おやすみ』
優しさは時に毒だ。
足に根が生えたように動けなくなり
(さみしいよ…)
どこか遠くにいる、今でも好きでたまらない彼を思いスマホを胸に抱きしめた。
最悪な出会い、抱かれた夜、津軽さんを知りたいって思った日々、加速していった恋心、一緒に食べた夕飯、お喋りしながら笑いあった日、何気なく家で過ごした日々も幸せだった
(ねえ、津軽さん…私の好きな津軽さんの屈託無い笑顔に "本当" はありましたよね?)
もう、いい加減 諦めなくてはいけないのに、また顔を見合わせて笑い合いたいのに叶わない
胸にぽかんと空いた穴に、冷たい冬の風が通り抜けて行き、熱い涙が頬を伝った
ーーーーーー ー ー
side津軽
あの夕焼けの冬の海から数日が経った
仕事を頑張る優衣は、俺からしたら健気に頑張って見える
普通に振る舞っているが、少し笑顔が減っていて、胸が苦しかったが…
昼間、一柳昴に食事に誘われOKしていたのを見ると案外、前に進もうとしているのかもな
誠二くんも優衣を気にしてるし!
一番の要注意人物は…
(ドリトル·ハジメ!あいつ まだ優衣にちょっかい出してないだろうな!)
何度も優衣に連絡してきてた事を思い出して心の中で文句を垂らす
(優衣はっ、優衣はなぁ 俺の……。俺の物じゃないんだった…)
前に進めないのは…一生優衣を好きでいる俺だけなのか
(あっ…)
あとを付けるつもりはなかったが、同じ電車だったらしく、帰り道で彼女の小さな背中が見えた
今朝は寒そうに始業ギリギリに出勤してきていた
ほんとなら、寒そうに歩くその手を握って暖めてあげたい
(って…そんなことできる間柄じゃなくなったんだし…)
気を持たせるなんて、彼女には余計に辛いだろう
それでも、何もせずにはいられなかった
急ぎじゃない業務連絡を優衣に送り、ついでにメッセージも送る
(これくないなら、いいよな)
十数メートル前を歩く優衣が立ち止まり、スマホを確認しているのが分かる
(………あれ?)
その小さな背中を猫背に丸めてスマホを抱きしめていた
(………。)
その姿はあまりにも華奢で儚くて
10秒…15秒…20秒…やっと一歩二歩と、歩きだしたと思ったら、また止まる
LINEでメッセージが届いたのは数秒後
『了解しました。連絡ありがとうございます マフラー明日はしていきます。おやすみなさい』
小さなウサギのマークを最後に添えていた
優衣の右手が目の辺りを擦る
すれ違ったカップルが優衣をチラッと見ていた
(やっぱ…前言撤回だな、前になんか進めなくて苦しんでる)
ここで、また考えてしまった
(このまま俺のこと ずっと好きでいてよ…)
こうして涙を拭い、苦しんでる彼女の後ろ姿を見ても、そんなことを思うのだから俺ってほんと性悪だわ
(…泣かせてごめん)
ーーーーーー ー ー
「おじいちゃーん お見舞いにきたよ」
翌日、ノアと銀さんのお見舞いに行き、銀さんとのことを少し違う見方で感じることができた
一緒に作ったおにぎりは優衣への土産
元気が出るように酢をたっぷり混ぜて海苔で巻こうとすれば
「…高臣、ちょっと待ちなさい」
銀さんからアドバイスをもらった
砂糖と少しの塩、おかか も入れるようにと。
こそばゆかった。
家族みたいに、おにぎりの話なんてしてさ。
(ノアのおかげだな~)
ーーーーーー ー ー
無理だった。手放せなかった。
俺が初めて好きになった女を。
釈放した茶円が優衣を襲った
歩道橋から優衣を抱いて飛び降り、モモの運転する軽トラのホロの上に落ちた
(助けられた…何度だって君を守る)
「どーしよっか」
「そんなのっ…!私だって知りませんよ!」
怒りながらもぎゅっと抱きついてくる優衣
やっぱり、この子がいい温かくて安心するお布団みたいな子
あーだこーだ言い合った後も、抱きしめあった身体を離せない
こうして また俺を受け入れる優衣に、今度こそ、ちゃんと向き合うと決意したのだった
「…運転してるの百瀬さんですか?私、生きて帰れます?」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ、守ったげる」
「いやなんか、信用できない…」
「えーなんでよ」
守るよ。班長としても、一人の男としても。
どちらかなんて選べないけど、どうしようもなく君の好きが聞きたいから
誰にも渡したくないから
「君って、変人…じゃなかった奇特な人だよね」
「はあぁ!?ど、どーゆー意味ですか!?」
百瀬「うるせー!てめえ、振り落とすぞ!」
「ひぃっ…」
「ほらね、良い子にしてないから」
「守ってくれるんですよね!?」
「なんか、めんどくさくなった~」
「なんで!」
幸せを感じても ふと、過るのは罪悪感
でもさ、隣で優衣の笑顔を見てたいのは、紛れもなく本心だった
(ほら、今だって抱きしめた身体を離せない)
ーーーーーー ー ー
side優衣
津軽さんとの初めてのキスをした
さんざん振り回されて心をぐちゃぐちゃにされて
それでもこの人がいい
私がずっと好きでいる人は、こんなにも気持ちを高揚させてくれる
恋人になれた日は、私を欲張りにしてしまった
「な、なんて言ったら…帰らないでくれますか?」
今夜は一緒にいたい
行かせたくない気持ちが先立ち、津軽さんの服の裾をちょっとだけ掴んだ
ここでバイバイするのは、あまりにも名残惜しすぎる
(あわよくば…もう一度キスしたいっ)
恥ずかしさを堪えて、もう恋人同士っていうなら、恋人だからできるワガママだ
じゃあ、黙って抱きついてきたら良いんじゃない?と言われ、腰に抱きつく
余裕綽々だなーって恨めしい気持ちもあるけど、それよりなにより今日は離れたくない
「分かった、泊まるよ」
いつもの飄々とした声で承諾してくれる
腰に抱きついたまま、コクンと頷くのが精一杯だった
(恋人になったんだ…津軽さんが…か、彼氏…!)
シングルのベッドは狭いから…からこそ、こうして密着して横になれる
軽く身体に腕を回されて 手を握られた
顔も耳も熱くて真っ赤になってることは分かる
部屋が暗くて良かったけど
「くっ、くすぐったぁ」
なぜか、耳をこちょこちょされて耳まで熱くなってることがバレてしまった
「マッサージだよ、マッサージ」
「うぅ~…」
こんなじゃれ合いも、恋人同士のイチャつきで…
こんな時間は もう来ないって思ってたのにな
今は幸せすぎて、蕩けてしまいそう
(わ、話題を変えよう)
「…津軽さんいつも何時くらいに寝てるんですか?」
いつの間にか寝落ちしてるという津軽さんも、私と同じで どうしてるかな?って考えてくれてたと知る
嬉しくて限界突破しちゃいそうな心臓
繋いだ手を握り合いながら 沈黙が二人に落ちた
(………津軽さん…)
握り合ってる手が強まったり弱まったり…
もしかして、まだ銀さんのこと…とか…色々と心配してるのかな?
くるっと後ろを向き津軽さんに向かい合う
「何か小難しいこと考えてます?」
「別に?寝ようかなって思ってただけだけど?」
「ぜんぜん眠そうじゃありませんよ」
「俺は優秀な刑事だから、簡単に顔には出さないの」
「じゃあ、私の考えてること当ててみます?絶対に分からないと思いますよ」
(キスしたい!キスして欲しい!)
念じてみて、分かるわけない、と じっと津軽さんの目を見る
降参したのか ははっと笑ってはぐらかされた
「眠れないなら夜のお散歩に行きませんか?」
少し夜風にあたって、気分転換したほうが良い気がして…
お付き合いすることで不安にさせたいわけじゃない
外に出て津軽さんの手をまた握る
「俺こんなだから、離れたくなったら言うんだよ?」
「?」
変な津軽さん。
だって、私は こんなでも、あんなでも、どんなでも津軽さんって人が好き
こうして迷ったり不安になったり、気遣ったり
どんな津軽さんだって好き
(もう、この手を離さないですから)
手を引っ張って、ぐっと背伸びをする
一瞬触れるだけたのキスを、私からした
「私が考えてたのは、これです。もう一回キスしたいなって」
私たちが恋人になるまでの出来事。
未来は何が待ってるか分からないものだ
つい、この間は泣いてたのに、今は津軽さんにキスができる
「先の先まで考えなくても、なるようになります」
未来は明るいんです!
津軽さんの手を引き歩きだした。
振り向くと、月明かりの下で穏やかな顔をした私の大好きな人
足取りは軽い
(心配しないで。私が側にいますから)
「大丈夫ですよ」
「……うん」
過去は変えられなくても、未来はいくらでも、変えられるから
なんとなくコンビニの方向へ歩いてたけど、不意に津軽さんが立ち止まった
「どうしました?」
「帰ろっか」
「あ、すみません。疲れちゃいましたよね」
慌てて引き返そうとくるりと向きを変えるが、
「…好きだよね、俺のこと?」
「す、好き、ですけど…?」
「今日から、君だけの俺になったんだよ?」
「…と、言いますと?」
「だからさぁー、お散歩もいいけど、帰ろ。もっと欲張っちゃいなよ」
「!! …帰り、ます…帰りたいです」
「いいね、かわいいお返事」
「そ、外ですよ、からかわないでください…もうっ…」
「ねえ、優衣、もっとドキドキ感じさせてよ」
「!ちょっ、ギブです…」
「あははっ 可愛いな」
イチャつきながら帰ったあとは──
恋人として初めて抱かれた
経験したことないくらいの 幸せが そこにあった
ーーーーーーー ー ー
──あれから──
「優衣、カクテル呑む?」
「いえ、流石に粗相があったらいけないので」
「緊張してるからさ、少しくらい良いんじゃないかなって」
「緊張は…しますけど頑張ります」
あれから数年たち津軽さんと婚約した。
結婚式は家族だけで行うため、今日は職場の方を招いて小さなお食事会
…のはずだったんだけど
ホテルの最上階を貸し切り、立食形式のパーティーと化している
目の前には豪華なビュッフェの数々…
相手が銀室長の息子同然の津軽さんとなれば、警視庁、警察庁の警視正も代わる代わる現れて挨拶をして緊張の連続だ
「優衣、大丈夫?」
「…はい。 まさか警視長も来て頂けるなんて」
私には警察政治ってものは分からないけど、銀室長と津軽さんの中で、この関係者向けのお食事会が、ただの " 楽しいお食事 " じゃないことは分かっている
それでも、同僚やお世話になってる先輩や、警護課の皆さんにも祝福されて本当に有難い
銀室長もずっと色んな方と話をされてる
(銀室長派が集まってるって事?それとも?)
「口ん中、乾燥してない?やっぱカクテル呑む?」
「カクテルといえば…月の兎スペシャル…あれが、きっかけでしたね」
「ん……優衣が俺をセフレにしようとした時ね」
「いや。逆ですよね?私をっ─」
「シッ、お静かに。そろそろ秀樹くんの挨拶がはじまるよ」
「…よく石神さんOKしてくれましたね」
「なーに言ってんの、親友代表の挨拶は大分前から約束してたんだよ」
「親友…」
親友はさておき
石神さんのスピーチに聞き入り、その言葉に胸が熱くなる
横の津軽さんを盗み見ると真剣な顔で聞いていて、なんだかんだと、付き合いの長い二人には、二人にしか分からない世界があると改めて気付かされる
(良かった、あの頃…諦めかけた時もあったけど、手をしっかり握って)
「優衣…」
同じことを、考えていたのか指と指を絡める
石神・「おふたりの末永い幸せを心よりお祈りしています」
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