恋心とプライド
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付き合始めてから、数回身体を重ねたある夜
「…っ、優衣っ…大丈夫、ありがとう」
頭をそっと押さえられて動きを止めた
「…ダメでした…?」
(まだ、そんなにしてないのに下手だったかな)
もともと口で愛撫するのは自信がない
でも気持ち良くなって欲しいし、私ばかりはイヤだから...恋人同士の愛の形の一つだと思っている
反応としては大きくて硬くなってくれたし、気持ち良さそうな声を出してくれたけど…
えっ、…演技?
不安になり、とっさに聞いてしまったわけだけど
「そうじゃなくて。もう交代だよ、はい、横になりな」
「あっ、だめっ…」
形勢逆転、あっという間にベッドに沈んだ
ーーーーーー ー ー
翌日
それは津軽班の捜査会議中だった
「あぁ、それだったら接触してる。もうちょいで聞き出せるかな」
………。うん、さすが津軽さん仕事が早い
真面目に会議に参加しなきゃいけないが、邪念が頭の中を回る
津軽さんが言った "それだったら" とは会員制の高級ヘルス、…風俗に勤務する女性のことだ。まだ大学生なのに学費の支払いが大変らしい
それより気になったのは
接触ってどうやって会ってるんだろう?
…接触??
津軽さんが嬢にハニトラを仕掛けてるってことは理解できた
ハニトラで、基本キスはしない と言ってたけど。
しない。 とは言ってない。
キスはしないにしても、性的な、マッサージ的な…
ものって、受けるかな??
ええっ…?
「吉川の進捗は?」
「はい、協力体制には問題ありません。情報の共有に関しては───」
(大丈夫。ちゃんと落ち着いて話せてる。公私混同だめ!絶対…)
会議が終わり階段を降りていると、前を降りていた瀬戸内くんが大石くんに話しかける
「なぁ、班長の言ってた風俗嬢に接触してるってさ、店に通ってるのかな」
「…そうとも限らないだろ」
「でも、客として会うのが手っ取り早いじゃん。俺もいつか、そういう所に潜入するのかな」
「お前はないだろ」
「なんでだよ」
(うぅ、気になる!私も気になる…!)
お昼休み
警察庁の食堂で、きつねうどんをすすりながら考えるのは、
(はぁぁ…、やっぱり気になるよ)
仕事中は何とか集中出来るけど、悶々と考えるのは アノこと。
最近、夜に津軽さんと会えなかったのは つまりそういう事?
プロの女性と比べられたら、私なんて…。
いや、それ以前に他の女性と性的な...。
(あー…仕事だしなぁ、恋人は公安刑事…情報を聞き出すためだもんね)
大好物のお揚げを食べるが もはや味がしない
(接触…接触…か…)
公安…時には必要で公に記録に残さないが、そういう身体を使った方法で相手に付け入るとは聞いたことがある
津軽さんがね…するかな?考えにくいんだよね…。あの顔と声だけで落とせる人だし
ハニトラ…。実際のところ、津軽さんが どんなことをしてるのか、ほとんど把握なんてしていない。それでも仕事の邪魔をしないと決めている
決めてるんだって自分に言い聞かせても
昨日は久しぶりにお泊まりだった訳だけど…今思うと
なんだか空しい…かも
つるんっと 最後の1本になったうどんをすすった。
空想はいつまで考えても空想に過ぎず…
捜査は色々あったが概ね順調に進み、無事に終了したのだった。
一つ、私の中で大きな疑問を残したまま…
ーーーーー ー ー
「お疲れー!たいして活躍しなかったけど、よく頑張りました」
「はいはい…すみません…活躍してませんが、お疲れ様です!」
カチンと缶ビールを合わせて津軽さんの部屋で二人だけの打ち上げをしていた
津軽さんとは会話が尽きなくて、今日あった面白い話、最近 話題のドラマの話、次のデートはどこ行こうかって話。
津軽さんから俺と君は違う、なんて言われたりしたけど、フィーリングが合うってこういう事だと実感する
私も津軽さんも二本目の缶ビールが、カラになったころ…
「さて、明日もお仕事だし帰りますね、片付けします」
立ち上がろうとすると
「だめ」
アルコールのせいだけじゃない
熱い…。
私の腕を握る津軽さんの手も、長い睫の瞳も。
「そ、そんな事言って~泊まっちゃいますよ?」
「最初からそのつもりだけど?優衣もだと思ってたんだけどなー」
抱き寄せられ腕の中に閉じ込められる
こうされる事、どこかで期待して発言した私がいて…
「じゃあ…泊まってもあげても、いいですよ」
「ツンデレウサだ。じゃ、片付けとくからシャワー浴びておいで?」
ちゅっ、と一瞬の隙に唇を奪われる
さっきまでふざけ合いながらお喋りしていたのに急に雰囲気を作ってくるから
本当にこの人はズルイ
温かい腕の中で胸が高鳴る…
恋人の甘ったるい雰囲気に慣れない自分がいて、どんな対応が正解かは分からないけど、好きって気持ちが、ただただ大きくて、コクリと頷いた
「…じゃあ、シャワーお借りします」
「それとも一緒に入る?」
「ふふっ、それはまた別の話ですよ」
「ちっ 焦らしてくるね」
「い、今はまだ…いつかは…」
「 …約束してよ?絶対ね?」
「はい、いつか」
「ズッルイ子だなー、いつかっていつよ?そういう子はどんな目に遭うか知ってる?」
「いやいや、心の準備ができたらって話です、イジメないでください…」
「…好きなくせに…」
「お、お風呂お借りします!」
ボソッと呟かれた言葉は聞こえなかった事にして、そそくさと逃げたのだった
ーーーーー ー ー
─寝室─
ゾクゾクした快楽に突き落とされる
もうダメ、ムリですっ と言う私の言葉は無視されていた
自分が自分じゃなくなりそうな怖さもあり、女として こんなに激しく求められる嬉しさもあり…
(はぁぁ…気持ちよくてっ…ほんとムリっ…!)
私の太ももの間に顔を入れていた津軽さんから逃げるように上半身を起こした
「あ、逃げられた」
「あの…わたしも、シていいですか?」
「ん?したいっていうのなら?」
まだ、慣れなくて少し緊張する
(…見られてる…)
カァーっと熱いカラダが更に熱くなる
隠すものなど何もないカラダを意識して、ドキドキは 恥ずかしさや、これから行う行為への焦りや…
スッと伸びてきた腕が よしよしと頭をなでてくれる
(…うん、津軽さんが大好き…この気持ちをたくさん伝えたい)
抱きついて、触れるだけのキスをして、キスをする唇を首筋にずらしていき、上半身から下半身に…まずは、そこに ちゅっとキスを落とすと
ビクっと震えた彼に愛おしさが溢れた
(……あっ…)
一瞬だけ。
誰かにも、こんな顔を見せたんだろうか──
そんな考えが頭をよぎって、胸の奥がちくりと痛む。
仕事だって分かってるのに
それでも…せめて今この瞬間だけは
私だけを見ていてほしい
こういう、行為も、あなたが好きだから
そんな願いを込めて、一生懸命 口を動かす
(……なんで、こんな私、余裕ないの)
頭のどこかで冷静に思うのに、止められない。
少しでも、離したくなくて。
少しでも、“ちゃんと恋人だ”って思ってほしくて。
「……優衣」
名前を呼ばれて、はっとする。
次の瞬間、やんわりと制されて、動きが止まった。
「急に頑張るじゃん」
低く落ちた声が、やけに近い。
「うっ……」
図星すぎてなんて返したらいいか分からない
(恥ずかしい…妬いてるなんて言えないよ)
すると津軽さんは、まるで困った子を見るみたいに目を細めた
「……そんな顔、させた覚えないんだけど」
逃がさないと言わんばかりに抱きしめられると、素肌と素肌が隙間なく密着する
「…お風呂は恥ずかしがるくせにさ、急に目、血走って怖いよ?」
「えっ、えっと血走って…ました?」
「優衣、思ってること言わないなんて君らしくないじゃん。腹にため込まないで言っちゃいな?ねっ?」
(……。やめてよ)
ただの優しさだけの、温かさのある声
この声が
他の人にも向けられているなんて
(そんなの、嫌)
ふざけられた方がずっとマシだって、思ってしまう
身体の関係を持ったゆえか、欲張りが増してしまってるのかも。
「分からないから思ってること ちゃんと口に出して教えてよ?」
「…だって…迷惑じゃないですか?ワガママとか」
「迷惑…?じゃないよ。ワガママ聞くのも彼氏の特権でしょ」
どこまでも包み込んでくれるの?
どこまで許される?境界線は?
嫌われたり…しない?
本心は隠さなきゃいけない時がある
仕事に関わることだから
「なんでもありません」
話をしていたら、なんだか抱きしめられた素肌同士の身体が気恥ずかしくて、
顔を見られないように、大きな身体に顔を埋める
「あぁーもう、手がかかる子だな」
頬を包まれ視線を合わせられる
「ちゃんと こっち見て」
「んぅっ…」
少し強引にされたキスは
センチメンタルな私には、優しい毒のように身体にまわり、力が抜けていく
分かっている、仕事は仕事。
情報を得るために きっと必要だった
堂々巡りにあれこれ考えながらも、思考は真っ白に染められ、熱くも甘やかされるように抱かれるのだった
数日後
公安課
百瀬さん、津軽さん、私でミーティング中、報告書の不備を指摘されている時、本当に突然だった
私の疑問は解決したのである
「ここおかしいでしょ、記憶飛んでる?寝てた?」
「あ、えー…、ちょ、ちょっとお時間を!直してきますので」
「あーもーいいよ モモ、あれ見せてあげて」
「お前、ほんと使えないな、ほら」
津軽さん言われたから しぶしぶPCのフォルダーから捜査ファイルを見せられた
そこには私が関与してなかった捜査内容もあり
(あ、ここの部分勘違いしてた。うん、なるほど、なるほど...ん?)
一つの文言に目が釘付けになった
(大学にて臨床心理士助手として潜入中に…)
そこには津軽さんが嬢に大学で接触し情報を抜き取った経緯が簡単に書いてあった
(じゃあ…風俗で会ってない)
「おい」
「……。」
「おい、さっさと報告書作り直せ」
「ウサ…?」
「は、はい!すみません、急ぎます、…ふふっ」
「……お前、なにニヤケてんだよ 」
「うわ、ウサが壊れた?」
「いやいや、あははっ、なんでもありません!」
「…まあ、いいけど」
「さっさと動け、吊るすぞ」
「すみませんっ…」
(なんだ…!そうなんだ…、そっか、そっか)
安心しすぎて、 …ちょっと泣けてくる
(…良かった…)
ソワソワ浮き足立つ気持ちに、報告書のやり直しも、俄然やる気が出るのだった
ーーーーーーー ー ー
残業も そこそこに津軽さんと歩く帰り道
「明日は休みだしウチ来る?」
「良いんですか?行きたいですけど…疲れてません?」
「そろそろ寂しくなってきた頃かなって」
「ま、まあ、恋人の時間は欲しいですよ。ずっとデートもしてないし」
「だね。ところでなんか勘違いしてた?」
(!!…きた…)
「唐突に…なんのことですか?」
昼間のことを聞かれてるのは すぐに察したけど、この話はしたくなくて…
だって…恋人の存在が津軽さんにとって、足を引っ張るようじゃ、私たちの関係が良いものと言えないから
「隠すの下手過ぎ。俺が風俗に行くと思ったんだ?」
少し笑った声に肩がぴくっと震える
「……ち、ちが…」
「気になるなら聞けばいいのに。そういうとこ、らしくないじゃん」
「…仕事ですから…口出すのは違うなって…弁えたくて」
視線を落とすと隣で小さく息を吐く気配
「上司だけど、恋人なんじゃない?いいじゃん」
いい…のかな?
意外と優しい声色に横を見れば、その横顔は穏やかだった
「……ごめんなさい。 面倒くさい女ですよね」
「モヤモヤされたってこと、俺は嬉しいし」
「でも…、頑張って割りきります」
「いいよ。君は君のままで」
「津軽さん…」
どこまでも、私を受け入れてくれる
私はこの人が、どうしようもなく
好き。
「優衣はもっと重たい女ムーヴしていいんだよ?ほらほら、ヤキモチ妬きなよ」
「……。遠慮しておきます」
「えー、つまんない」
繋がれた手は、今夜はなんだか温かい
「もう簡単に妬いたりしません」
「俺は、されたい派だからね」
「はいはい…」
「優衣のイジワル」
「………」
「………」
ふと落ちた沈黙に、悪戯心が湧き出てきて
「……思ってますよ。津軽さんを独占したいって」
「なっ……!」
珍しく言葉を詰まらせた津軽さんに、しまった、言い過ぎたかも…と急に恥ずかしくなる。
「……っ、わ、忘れてください」
「無理」
即答だった。
その声が思ったより低くて、心臓が跳ねる。
「今の、反則。なにそれ」
「え……?」
「可愛すぎ。無理。絶対に帰したくなくなった」
ぎゅうっと繋いだ手を引かれて、そのまま壁際へ追い込まれる。
「独占したいとか、簡単に言わないでよ」
「っ、津軽さんが言わせたんじゃないですか…!」
「うん。言わせた」
悪びれもなく笑ったあと、不意に額へ唇が落ちる。
「でも嬉しい。安心した」
「……安心?」
「優衣って我慢するから。ひとりで飲み込んで、平気なフリするでしょ」
図星すぎて何も言えない。
「もっと困らせてよ。嫉妬して、独占して、振り回して」
耳元で囁かれて、熱が一気に上がる。
「俺、君にはそうされたい。」
もう、完敗です…
「…っ、優衣っ…大丈夫、ありがとう」
頭をそっと押さえられて動きを止めた
「…ダメでした…?」
(まだ、そんなにしてないのに下手だったかな)
もともと口で愛撫するのは自信がない
でも気持ち良くなって欲しいし、私ばかりはイヤだから...恋人同士の愛の形の一つだと思っている
反応としては大きくて硬くなってくれたし、気持ち良さそうな声を出してくれたけど…
えっ、…演技?
不安になり、とっさに聞いてしまったわけだけど
「そうじゃなくて。もう交代だよ、はい、横になりな」
「あっ、だめっ…」
形勢逆転、あっという間にベッドに沈んだ
ーーーーーー ー ー
翌日
それは津軽班の捜査会議中だった
「あぁ、それだったら接触してる。もうちょいで聞き出せるかな」
………。うん、さすが津軽さん仕事が早い
真面目に会議に参加しなきゃいけないが、邪念が頭の中を回る
津軽さんが言った "それだったら" とは会員制の高級ヘルス、…風俗に勤務する女性のことだ。まだ大学生なのに学費の支払いが大変らしい
それより気になったのは
接触ってどうやって会ってるんだろう?
…接触??
津軽さんが嬢にハニトラを仕掛けてるってことは理解できた
ハニトラで、基本キスはしない と言ってたけど。
しない。 とは言ってない。
キスはしないにしても、性的な、マッサージ的な…
ものって、受けるかな??
ええっ…?
「吉川の進捗は?」
「はい、協力体制には問題ありません。情報の共有に関しては───」
(大丈夫。ちゃんと落ち着いて話せてる。公私混同だめ!絶対…)
会議が終わり階段を降りていると、前を降りていた瀬戸内くんが大石くんに話しかける
「なぁ、班長の言ってた風俗嬢に接触してるってさ、店に通ってるのかな」
「…そうとも限らないだろ」
「でも、客として会うのが手っ取り早いじゃん。俺もいつか、そういう所に潜入するのかな」
「お前はないだろ」
「なんでだよ」
(うぅ、気になる!私も気になる…!)
お昼休み
警察庁の食堂で、きつねうどんをすすりながら考えるのは、
(はぁぁ…、やっぱり気になるよ)
仕事中は何とか集中出来るけど、悶々と考えるのは アノこと。
最近、夜に津軽さんと会えなかったのは つまりそういう事?
プロの女性と比べられたら、私なんて…。
いや、それ以前に他の女性と性的な...。
(あー…仕事だしなぁ、恋人は公安刑事…情報を聞き出すためだもんね)
大好物のお揚げを食べるが もはや味がしない
(接触…接触…か…)
公安…時には必要で公に記録に残さないが、そういう身体を使った方法で相手に付け入るとは聞いたことがある
津軽さんがね…するかな?考えにくいんだよね…。あの顔と声だけで落とせる人だし
ハニトラ…。実際のところ、津軽さんが どんなことをしてるのか、ほとんど把握なんてしていない。それでも仕事の邪魔をしないと決めている
決めてるんだって自分に言い聞かせても
昨日は久しぶりにお泊まりだった訳だけど…今思うと
なんだか空しい…かも
つるんっと 最後の1本になったうどんをすすった。
空想はいつまで考えても空想に過ぎず…
捜査は色々あったが概ね順調に進み、無事に終了したのだった。
一つ、私の中で大きな疑問を残したまま…
ーーーーー ー ー
「お疲れー!たいして活躍しなかったけど、よく頑張りました」
「はいはい…すみません…活躍してませんが、お疲れ様です!」
カチンと缶ビールを合わせて津軽さんの部屋で二人だけの打ち上げをしていた
津軽さんとは会話が尽きなくて、今日あった面白い話、最近 話題のドラマの話、次のデートはどこ行こうかって話。
津軽さんから俺と君は違う、なんて言われたりしたけど、フィーリングが合うってこういう事だと実感する
私も津軽さんも二本目の缶ビールが、カラになったころ…
「さて、明日もお仕事だし帰りますね、片付けします」
立ち上がろうとすると
「だめ」
アルコールのせいだけじゃない
熱い…。
私の腕を握る津軽さんの手も、長い睫の瞳も。
「そ、そんな事言って~泊まっちゃいますよ?」
「最初からそのつもりだけど?優衣もだと思ってたんだけどなー」
抱き寄せられ腕の中に閉じ込められる
こうされる事、どこかで期待して発言した私がいて…
「じゃあ…泊まってもあげても、いいですよ」
「ツンデレウサだ。じゃ、片付けとくからシャワー浴びておいで?」
ちゅっ、と一瞬の隙に唇を奪われる
さっきまでふざけ合いながらお喋りしていたのに急に雰囲気を作ってくるから
本当にこの人はズルイ
温かい腕の中で胸が高鳴る…
恋人の甘ったるい雰囲気に慣れない自分がいて、どんな対応が正解かは分からないけど、好きって気持ちが、ただただ大きくて、コクリと頷いた
「…じゃあ、シャワーお借りします」
「それとも一緒に入る?」
「ふふっ、それはまた別の話ですよ」
「ちっ 焦らしてくるね」
「い、今はまだ…いつかは…」
「 …約束してよ?絶対ね?」
「はい、いつか」
「ズッルイ子だなー、いつかっていつよ?そういう子はどんな目に遭うか知ってる?」
「いやいや、心の準備ができたらって話です、イジメないでください…」
「…好きなくせに…」
「お、お風呂お借りします!」
ボソッと呟かれた言葉は聞こえなかった事にして、そそくさと逃げたのだった
ーーーーー ー ー
─寝室─
ゾクゾクした快楽に突き落とされる
もうダメ、ムリですっ と言う私の言葉は無視されていた
自分が自分じゃなくなりそうな怖さもあり、女として こんなに激しく求められる嬉しさもあり…
(はぁぁ…気持ちよくてっ…ほんとムリっ…!)
私の太ももの間に顔を入れていた津軽さんから逃げるように上半身を起こした
「あ、逃げられた」
「あの…わたしも、シていいですか?」
「ん?したいっていうのなら?」
まだ、慣れなくて少し緊張する
(…見られてる…)
カァーっと熱いカラダが更に熱くなる
隠すものなど何もないカラダを意識して、ドキドキは 恥ずかしさや、これから行う行為への焦りや…
スッと伸びてきた腕が よしよしと頭をなでてくれる
(…うん、津軽さんが大好き…この気持ちをたくさん伝えたい)
抱きついて、触れるだけのキスをして、キスをする唇を首筋にずらしていき、上半身から下半身に…まずは、そこに ちゅっとキスを落とすと
ビクっと震えた彼に愛おしさが溢れた
(……あっ…)
一瞬だけ。
誰かにも、こんな顔を見せたんだろうか──
そんな考えが頭をよぎって、胸の奥がちくりと痛む。
仕事だって分かってるのに
それでも…せめて今この瞬間だけは
私だけを見ていてほしい
こういう、行為も、あなたが好きだから
そんな願いを込めて、一生懸命 口を動かす
(……なんで、こんな私、余裕ないの)
頭のどこかで冷静に思うのに、止められない。
少しでも、離したくなくて。
少しでも、“ちゃんと恋人だ”って思ってほしくて。
「……優衣」
名前を呼ばれて、はっとする。
次の瞬間、やんわりと制されて、動きが止まった。
「急に頑張るじゃん」
低く落ちた声が、やけに近い。
「うっ……」
図星すぎてなんて返したらいいか分からない
(恥ずかしい…妬いてるなんて言えないよ)
すると津軽さんは、まるで困った子を見るみたいに目を細めた
「……そんな顔、させた覚えないんだけど」
逃がさないと言わんばかりに抱きしめられると、素肌と素肌が隙間なく密着する
「…お風呂は恥ずかしがるくせにさ、急に目、血走って怖いよ?」
「えっ、えっと血走って…ました?」
「優衣、思ってること言わないなんて君らしくないじゃん。腹にため込まないで言っちゃいな?ねっ?」
(……。やめてよ)
ただの優しさだけの、温かさのある声
この声が
他の人にも向けられているなんて
(そんなの、嫌)
ふざけられた方がずっとマシだって、思ってしまう
身体の関係を持ったゆえか、欲張りが増してしまってるのかも。
「分からないから思ってること ちゃんと口に出して教えてよ?」
「…だって…迷惑じゃないですか?ワガママとか」
「迷惑…?じゃないよ。ワガママ聞くのも彼氏の特権でしょ」
どこまでも包み込んでくれるの?
どこまで許される?境界線は?
嫌われたり…しない?
本心は隠さなきゃいけない時がある
仕事に関わることだから
「なんでもありません」
話をしていたら、なんだか抱きしめられた素肌同士の身体が気恥ずかしくて、
顔を見られないように、大きな身体に顔を埋める
「あぁーもう、手がかかる子だな」
頬を包まれ視線を合わせられる
「ちゃんと こっち見て」
「んぅっ…」
少し強引にされたキスは
センチメンタルな私には、優しい毒のように身体にまわり、力が抜けていく
分かっている、仕事は仕事。
情報を得るために きっと必要だった
堂々巡りにあれこれ考えながらも、思考は真っ白に染められ、熱くも甘やかされるように抱かれるのだった
数日後
公安課
百瀬さん、津軽さん、私でミーティング中、報告書の不備を指摘されている時、本当に突然だった
私の疑問は解決したのである
「ここおかしいでしょ、記憶飛んでる?寝てた?」
「あ、えー…、ちょ、ちょっとお時間を!直してきますので」
「あーもーいいよ モモ、あれ見せてあげて」
「お前、ほんと使えないな、ほら」
津軽さん言われたから しぶしぶPCのフォルダーから捜査ファイルを見せられた
そこには私が関与してなかった捜査内容もあり
(あ、ここの部分勘違いしてた。うん、なるほど、なるほど...ん?)
一つの文言に目が釘付けになった
(大学にて臨床心理士助手として潜入中に…)
そこには津軽さんが嬢に大学で接触し情報を抜き取った経緯が簡単に書いてあった
(じゃあ…風俗で会ってない)
「おい」
「……。」
「おい、さっさと報告書作り直せ」
「ウサ…?」
「は、はい!すみません、急ぎます、…ふふっ」
「……お前、なにニヤケてんだよ 」
「うわ、ウサが壊れた?」
「いやいや、あははっ、なんでもありません!」
「…まあ、いいけど」
「さっさと動け、吊るすぞ」
「すみませんっ…」
(なんだ…!そうなんだ…、そっか、そっか)
安心しすぎて、 …ちょっと泣けてくる
(…良かった…)
ソワソワ浮き足立つ気持ちに、報告書のやり直しも、俄然やる気が出るのだった
ーーーーーーー ー ー
残業も そこそこに津軽さんと歩く帰り道
「明日は休みだしウチ来る?」
「良いんですか?行きたいですけど…疲れてません?」
「そろそろ寂しくなってきた頃かなって」
「ま、まあ、恋人の時間は欲しいですよ。ずっとデートもしてないし」
「だね。ところでなんか勘違いしてた?」
(!!…きた…)
「唐突に…なんのことですか?」
昼間のことを聞かれてるのは すぐに察したけど、この話はしたくなくて…
だって…恋人の存在が津軽さんにとって、足を引っ張るようじゃ、私たちの関係が良いものと言えないから
「隠すの下手過ぎ。俺が風俗に行くと思ったんだ?」
少し笑った声に肩がぴくっと震える
「……ち、ちが…」
「気になるなら聞けばいいのに。そういうとこ、らしくないじゃん」
「…仕事ですから…口出すのは違うなって…弁えたくて」
視線を落とすと隣で小さく息を吐く気配
「上司だけど、恋人なんじゃない?いいじゃん」
いい…のかな?
意外と優しい声色に横を見れば、その横顔は穏やかだった
「……ごめんなさい。 面倒くさい女ですよね」
「モヤモヤされたってこと、俺は嬉しいし」
「でも…、頑張って割りきります」
「いいよ。君は君のままで」
「津軽さん…」
どこまでも、私を受け入れてくれる
私はこの人が、どうしようもなく
好き。
「優衣はもっと重たい女ムーヴしていいんだよ?ほらほら、ヤキモチ妬きなよ」
「……。遠慮しておきます」
「えー、つまんない」
繋がれた手は、今夜はなんだか温かい
「もう簡単に妬いたりしません」
「俺は、されたい派だからね」
「はいはい…」
「優衣のイジワル」
「………」
「………」
ふと落ちた沈黙に、悪戯心が湧き出てきて
「……思ってますよ。津軽さんを独占したいって」
「なっ……!」
珍しく言葉を詰まらせた津軽さんに、しまった、言い過ぎたかも…と急に恥ずかしくなる。
「……っ、わ、忘れてください」
「無理」
即答だった。
その声が思ったより低くて、心臓が跳ねる。
「今の、反則。なにそれ」
「え……?」
「可愛すぎ。無理。絶対に帰したくなくなった」
ぎゅうっと繋いだ手を引かれて、そのまま壁際へ追い込まれる。
「独占したいとか、簡単に言わないでよ」
「っ、津軽さんが言わせたんじゃないですか…!」
「うん。言わせた」
悪びれもなく笑ったあと、不意に額へ唇が落ちる。
「でも嬉しい。安心した」
「……安心?」
「優衣って我慢するから。ひとりで飲み込んで、平気なフリするでしょ」
図星すぎて何も言えない。
「もっと困らせてよ。嫉妬して、独占して、振り回して」
耳元で囁かれて、熱が一気に上がる。
「俺、君にはそうされたい。」
もう、完敗です…
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